








チョイ投げ釣りとは
この釣りに明確な定義はなく、本格的な投げ釣りに対して、手軽に行える投げ釣りということくらいだ。だから専用のタックルはなく、サビキ釣りの竿やリールとも併用が可能だ。
その割に釣果はよく、河口のハゼ釣りはもちろん、漁港に隣接する砂浜では大型のキスも狙える。
特に夏場はキスがかなり浅場へと接岸するから、わずか20mも投げることができれば、ゴンゴンとキスの強い引きが楽しめるのだ。
なによりも魅力なのが軽装備。釣れなければどんどんと場所を替えながら狙えるということ。短い竿を使っていれば、すぐに車に積み込み、漁港のはしごをすることも可能だ。
ハゼやキスは数釣れるが、サイズが大きくないから小型のクーラーでも大丈夫なのもありがたい。
チョイ投げポイント


■堤防の際
足元に落とすだけで入れ食いになることもある。念のために探ってみよう。
■堤防の先端
堤防の先端はどんな釣りでも人気のポイント。広い方角を自由に狙えるのが魅力だ。
■船道
船道は大物が潜むが、船の往来が激しいため、仕掛けを持っていかれないに注意しよう。
■堤防の曲がり角
堤防の曲がり角は内側も外側も好ポイント。潮の流れに変化が生まれエサが溜まりやすい。
基本の釣り方

上半身を竿ごとゆっくり回転させて仕掛けを引っ張る。
1m引くのに3秒程度かけるのが目安。活性が高いときは少し早めに、低いときは遅めにするとよい。

群れを散らさないためにヒットゾーンよりも先のポイントに投げて引いてくる。
キスは小さな群れで行動しているので、釣れたポイントにはまだ他にもいることが多い。同じ場所を狙えば釣れる確率は高い。

ハリ掛かりしたキスが暴れてハリを外そうとすると砂が舞い上がって煙幕になる。それにつられて他のキスが集まってくる。
キスのチョイ投げ釣り
オモリを軽くして根掛かり回避
完全な砂浜なら根掛かりはほぼないが、岩が点在する場所では頻繁に根掛かりしてしまうし、多すぎると釣り自体に嫌気がさしてしまう。これを回避する策は、オモリの重量と形状。
古くから根掛かりしにくく愛用されているのは、ジェットテンビン。仕掛けを引くと浮かせる機能がついているから、比較的根掛かりしても外れやすい。また、軽いオモリほどオモリ自体の根掛かりが少なくなるから、根掛かりが多い場所では、遠くに飛ばすことよりもオモリを軽くして対応するといいだろう。
ハリは2本
短い距離を探るのがチョイ投げ釣りの魅力で、その間を手返し良く狙うのが数釣るコツだ。だから、ハリは少ないほどエサ付けの時間が短縮でき、手返しが良くなる。かといって1本バリでは釣果が少なくなる。根掛かりした際に切れても、もう1本残っていることと、二つのエサで誘うほうが集魚効果が高くなるからだ。ときには、2本とも食っていることもある。
仕掛け


根掛かりが多いポイントではジェットテンビンが活躍する。巻き上げ時に浮き上がるため仕掛けを海底から離すことができるのだ。取り付け位置を間違えやすいので注意しよう。オモリが付いている方が道糸側だ。
ツケエのサイズ
エサの付け方にも工夫がある。通常はゴカイの1匹掛けでいいが、食いが活発なほどエサは小さく付けたほうが掛かりやすくなる。また、フグなどのエサ盗りが多い場合も同様に小さくすると良い。
しかし、キスに限っては群れの大きさにも左右されやすいから、あまり釣れないときは逆に目立つように工夫する。ゴカイを3、4匹房掛けにすると大型が食うことも多いのだ。
用途に合わせたハリ形状
投げ釣り用のハリには、引き釣り用と置き竿用の2種類がある。
引き釣り用の袖型のハリは主に競技用などで使われ、仕掛けを引きながら探って魚を掛けるタイプ。ハリのフトコロが狭いから、キスが吸い込みやすいため掛かりが良くなるが、反面外れやすい。
流線型と呼ばれるハリ形状は、引き釣り、置き竿でも使えるタイプだ。掛かったあとに外れにくい形状で、軸にもカエシが付いているものはムシエサが外れにくい。一般的なチョイ投げなら、こちらの流線型がおすすめだ。
投げるポイントは数箇所
初めての場所では扇状になるよう、広範囲を探りながら狙うのが一般的。その中でアタリがあった場所を重点的に攻める。しかし、ハゼもキスも群れで移動するから、同じ場所で1日釣れ続くことはまれだ。
それでも、釣れるポイントというのはある程度決まっており、釣れなくなっても時間が経てば違う群れが入ってくるから、一度釣れた場所は覚えておくと良い。
細いタックルほど面白い
使用するオモリの重量に対して使用する竿を決めなければいけないが、細くて軽いタックルほど魚のアタリを感じやすい。だから、使用するオモリは6号(22・5g)くらいまでがおすすめだ。コツコツという魚がエサを食うときのアタリはもちろん、ハリに掛かってからの引きを味わうのにも、よりライトなタックルのほうが楽しめる。
穂先は硬いほうが良い
ライトタックルを使ってチョイ投げをする場合、穂先が軟らか過ぎると具合が悪い。理由は、オモリの重さを穂先の曲がりで吸収してしまい、魚が食ったときにアワせてもハリ掛かりしないことが多くなるからだ。穂先の軟らかな竿を使う場合は、オモリは小さくを心掛けよう。
根掛かりエリアは避ける
投げる場所、仕掛けを引いてくるエリアにより、何度も根掛かりする場所がある。障害物があるということは、そこに魚も付きやすいことなのだが、根掛かりしてハリが無くなってしまうのなら、釣っていないのと同じことだ。
そういうエリアには仕掛けを投げないか、早々に仕掛けを回収しよう。釣りは手返し勝負なのだ。
ムシエサは熱に弱い
ムシエサを購入すると、砂のようなバーミキュライト(苦土蛭石)を一緒に入れてくれるお店が多い。これは、主に園芸や建設資材として使われる材料だ。しかし、これを入れたからといっていつまでも長生きしてくれる訳ではない。できれば海水を少し加えておきたい。釣り場では、熱を防ぐためにムシエサはクーラーボックスに入れておき、10〜20匹ほど別のツケエケースに入れて石粉をまぶしておくと良い。石粉を使うとムシエサのヌメリがなくなるばかりか暴れなくなるので、ハリに刺しやすくおすすめだ。
ハゼを狙ったチョイ投げ釣り
ハゼは初心者でも簡単に釣れることから釣り入門に最適な魚である。淡水と海水が混じった汽水域を好むため、河口や川が近くにある漁港の港内などが主な釣り場となる。
ハゼの寿命は約一年。大体夏ごろから小型が釣れはじめ、冬に深場へ落ちるまで釣れ続ける。釣れる場所では大体毎年釣れるので釣具店などで聞いてみよう。
釣り方はゴカイエサの投げ釣りが主流だが、あまり遠投する必要はないため、いわゆる「チョイ投げ」で十分。コンパクトロッドやルアーロッドにナイロンラインを巻いた小型スピニングリール。道糸の先にオモリ付きテンビンを結び、市販の仕掛けをセットすれば準備完了。エサはイシゴカイやアオイソメが一般的だ。
仕掛けを軽く投入し、着底したら道糸を軽く張った状態でアタリを待つ。活性が高いときはすぐにブルブルとアタリが出るので、軽く竿を立てて巻き上げよう。
アタリがないときはエサを動かして誘う。そのまま巻くだけでもよいが、根掛かりが多い場所ではエサをジャンプさせるように動かそう。
ハゼ釣りシーズンの終盤になると、ハゼは深場を好むようになる。ウキ釣りでは狙いにくいような遠くの深場を狙うには、軽量なオモリを使用した投げ釣りがやりやすい。大遠投は必要ないためと、重いほど根掛かりしやすいので大きなオモリは使用しない。
狙いどころは、川がカーブした場所で潮が引いても水が最後まで残る場所や、大きな漁港で水深がある港内などだ。ただし、ただ待っているだけの釣りではあまり成果を得られないため、引き釣りが好ましい。やり方はゆっくりと仕掛けを引きながら釣るだけだ。引き方は竿を横向きにして竿を引いたり、リールをゆっくり巻くとよい。根掛かりが多い場所では向いていないが、竿を立て気味にやると根掛かりを軽減できる。
仕掛け

エサの付け方

狙い方

根掛かりが多いときは、竿を軽くあおりながらリールを巻き、仕掛けを跳ね上げるようにする。仕掛けが着底したらしばらく止めてアタリを待つ。

小規模な河川などでは正面に投げるよりも斜めに横切るように投げた方が広範囲を探ることができる。アタリがあったら同じポイントを攻めよう。
カレイのチョイ投げ釣り
真冬の堤防の人気者
キスと人気を二分する堤防のチョイ投げ釣りのターゲットがカレイである。平たい身体に目が片側に寄ったユーモラスな見た目と、どんな料理にでも合う上品な食味が人気の理由だ。
ひと口にカレイと言っても種類は多く、日本近海だけでも40種類以上の生息が確認されている。堤防からの釣りのターゲットとして代表的なのはマコガレイとイシガレイである。
カレイ釣りの仕掛け

竿やリールはキス釣り用のチョイ投げセットと同じで問題ない。大物が掛かることもあるので道糸はキス用よりも少し太めのものを巻いておこう。
道糸の先に5〜10号の固定式テンビンを結び、カレイ用の仕掛けセットを取り付けたら完成だ。
カレイ狙いのエサ
カレイ狙いの本命エサはイワムシ(マムシ・ホンムシ)である。匂いが強く、カレイを誘い出す効果がある。ただし、非常に高価なため、比較的安価なアオイソメを併用したい。イワムシとアオイソメのミックス掛けは、イワムシの匂いで誘いアオイソメが視覚でカレイを刺激する。

写真左/イワムシとアオイソメのミックス掛けも有効。
写真右/イワムシは短く切って使う。ハリを出して、ハリの上までこきあげる。
カレイの釣り方
キス釣りが「動」の釣りとすれば、カレイ釣りは「静」の釣りである。頻繁に動かさず、アタリを待つ釣りになる。そのため、複数の竿を出して広い範囲を狙うことをおすすめする。
仕掛けをキャストし、仕掛けの着底を確認したらリールを巻いて目的のポイントまで引いてくる。ポイントはカケアガリやヨブ、障害物の周囲である。仕掛けを引いていると抵抗を感じる場所があるので、そこで仕掛けを止めてラインを張った状態でアタリを待つ。3〜5分に一度仕掛けを1〜2m動かして誘おう。
カレイ釣りの場合、2〜3本の竿を出して広い範囲を探るのが一般的である。その場合、三脚を使用すると便利だ。

2〜3本の竿を使い、それぞれ距離とポイントを変えてアタるポイントを探っていくのがカレイ釣りのセオリーだ。
投げ釣り
堤防からの投げ釣りは、チョイ投げ釣りよりも狙えるポイントは広範囲だ。使用するオモリを重くして、飛距離を稼ぐには、投入テクニックや遠投に向くタックルが必要となる。潮の流れの速い場所では40号のオモリを使うこともあり、それだけの負荷に耐えられる竿が必要になる。投げ釣り専用ロッドと専用リールがあれば万全といえよう。遠投するために道糸はPEラインを使用する。ラインとオモリの間に力糸を結ぶことでキャスト時の衝撃を和らげることができる。力糸を結ばずにキャストするとラインが切れて仕掛けだけが飛んでいくので大変危険でもある。遠投できると足元に障害物があっても、その先を狙えるので有利なのだ。しかも大型の魚は深い場所にいることが多いため、座布団カレイのような大型魚が釣れる確率も上がる。海底が砂地であればキスが釣れるので、仕掛けを投入した後は、少しずつラインを巻き丁寧に探る。海底が盛り上がってカケアガリになっているようなところで少し待つと食ってくる。カレイを狙う場合は、何本か釣り竿を並べ、遠・中・近距離を狙う。基本的には待ちの釣りだが、たまに仕掛けに誘いを入れてやるとよい。
アナゴを狙った投げ釣り
アナゴは夜行性で、。夏場が盛期となるため、夕涼みがてらの夜釣りとしての人気が高い。一方、難点もある。釣り上げられたアナゴは仕掛けに絡みつくので、1尾釣れるごとに仕掛けを替えなくてはいけないし、体のヌメリはタオルなどで掴んで対処する他ない。しかし、その煩わしさを大きく上回るほど食味は抜群だ。アナゴは群れで行動するので、数釣りのチャンスもあり、行動範囲も狭いからポイントはほとんど変わらない。堤防の際や、潮が流れ込んでくる場所が狙い目だ。
エサはイシゴカイ。足元を狙うならオモリが着底した後、軽く竿を上下に動かしエサを踊らせると反射的に食ってくる。竿を手に待ってアタリを待つ。チョイ投げポイントのアナゴには発光するものを付けてアピールし、置き竿にしてじっくりアタリを見る。アナゴのアタリは竿先に反応があるアタリと食い上げてオモリが軽くなる場合や居食いすることもある。何か変化があれば、余分なラインを巻き取りしっかり食い込ませるまで待つ。アワセはゆっくりと竿を上げて重量を感じたら巻き上げる。良型のアナゴなら引き抜かずに丁寧にタモ入れしよう。
カレイの投げ釣り
カレイ科の魚は世界に100種、日本近海に40種いると言われているが、堤防からの釣りの対象魚で一般的なのはマコガレイとイシガレイで、どちらも日本全国各地に分布している。マコガレイは内湾性で砂泥底に生息し、堤防からよく釣れるサイズは30㎝前後。イシガレイは外洋にも生息し、マコガレイより大型になる。
目の位置は体の右側に偏っていて、砂泥底に潜んで目だけを動かし、エサを見つけると素早く移動して吸い込むように捕食する。食性は肉食で底生動物を丸呑みにする。甲殻類やムシ類が主食だが大型は小魚も捕食することがある。ツケエは入手しやすいアオイソメやイワムシが定番で、エサ盗りに強く大型を狙えるユムシも人気がある。
ポイントは底が砂地であればほぼ全域で釣れるが、大型を狙うのならば、潮通しのいい堤防の先端部や海峡などの海底に変化のある場所は外せない。また、沈み根や養殖イケスの近くなど、エサの豊富な場所もポイントになる。砂浜からの投げ釣りでは満潮前後の潮が動く時間がゴールデンタイム。逆に潮の速い海峡などでは潮止まり前後を狙う。
キスの投げ釣り
キス(シロギス)は、堤防から簡単な仕掛けで狙うことができるため釣り入門に最適。引きも強く、淡白でクセのない白身は食材として一級品である。
ポイントは底に起伏や障害物がある場所、潮の合流点など、エサが溜まりやすい場所。堤防から狙う場合は、船道やカケアガリを中心に、砂地の根周りやヨブ(海底の起伏)を攻めよう。河口も一級ポイントの一つだが、雨が降り淡水が大量に流れ込むと食いが落ちるので覚えておこう。
キスが居そうな変化のある場所を確認して狙いを定め、そのポイントよりも少し先に仕掛けを投入する。
仕掛けが着底したら糸フケを取り、竿を動かして仕掛けを引く。竿先を後ろに引いて仕掛けをある程度寄せたらリールを巻きながら竿先を元に戻し、再び竿を後ろに引いて手前に寄せる。
アタリは、小さな魚体のわりに力強く、ハッキリと手元に伝わる。ほとんど向こうアワセで掛かるので大きなアワセは必要ない。キスは群れで行動するので、1尾食ったらそこに群れが居る可能性がある。アタリがあってもすぐに取り込まず、巻くスピードを緩めて追い食いを狙おう。
投げ釣り・チョイ投げに使用するエサ

ギボシイソメ
地方名:チロリ、東京スナメ、スナムシなど。
キス釣りで主に使用される。身が柔らかいため食い込みがよい。釣具店によっては置いていないところもある。
イソゴカイ
地方名:イシゴカイ・スナムシ・ジャリメなど。
キスやハゼを狙うときのエサとして最も一般的。アオイソメと比べると細く短いため小物釣りに向いている。
アオイソメ
地方名:アオムシ・アオゴカイ・アオケブなど。
イソゴカイより動きがよく安価で丈夫な堤防釣りの万能エサ。投げ釣りのみならず色々な釣りで活躍する。
ウチワゴカイ
地方名:コガネムシ・アオコガネ・アカコガネ。
主にカレイ狙いのエサとして使われている。体色は青と赤がいる。暗闇で光る性質を持つので夜釣りに最適。
イワムシ
地方名:マムシ、ホンムシ、ジャムシなど。
匂いが強いため魚を寄せる効果がある。値段は高いが堤防から狙う魚のほとんどに有効な万能エサである。
人工ムシエサ
ムシエサに模して作られた人工のエサ。生きたムシエサを触るのが苦手な女性や子供でもこれなら大丈夫!?
エサの付け方

- エサの頭の横からハリを刺す。頭は切り取ってもよい。エサを動かすのではなくハリを動かすようにするのがうまく刺すコツだ。
- エサがハリの形に合うように丸くしてハリを刺していく。
- ハリ先を出して、エサをハリの上までしごき上げる。
ワンポイント
キスの活性が高いときは短めに、活性が低いときは長めにタラシをとる。1匹丸ごとつけてもよい。
石粉を使う

活きのいいムシエサはヌルヌルすべってハリに刺しにくい。そんなときは釣具店で販売されている石粉を活用しよう。石粉をムシエサにまぶせばすべり止めになり刺しやすくなるはずだ。
一度にすべてのエサにまぶすと石粉が水分を吸収してエサが弱ってしまうので、小分けして使う分だけまぶすようにしよう。