うまい魚料理の源、なぜ「絞め」が必要なのか

せっかく釣ってお刺身にするならおいしく食べたい。そのために「絞め」は必要不可欠。

キャッチ&イートという言葉があるように、釣り人の中でも刺身が好きな人は多い。アラカブ、カワハギ、青物とおいしい魚に事欠かないのが釣りのよいところ。ところがあえておいしくない刺身を食べてしまうような、もったいない釣り人も少なくはありません。

寿司屋とまではいかなくても、素人でもできる範囲で、おいしく生魚を食べたいですよね。そのために必要なのが魚を即殺する「絞め」という処理です。おいしく食べるために必要な理由があります。

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刺身が一番おいしいタイミングは?

そもそもなぜ「魚は鮮度が大切」と呼ばれるのでしょうか? 牛肉や豚肉ではあまり聞きませんよね。その解説には、まず魚を絞めてからその後を説明しなければなりません。

魚が一番おいしいタイミングを知っているから、寿司屋や市場の生魚はおいしいのです。

魚種にもよりますが、基本的に魚は絞めた後、ある程度の時間ののち死後硬直が始まります。この死後硬直スタートが一番おいしいタイミング。そこから完全硬直すると、食材本来の味が徐々に落ち、コリコリ感だけはあるという状態になります。なお、この完全硬直までのタイミングを“活き”と呼び、市場では高値で取り引きされます。だから魚は鮮度が大事といわれるのです。

硬直が解除されはじめると”鮮魚”と呼ばれます。この状態がスーパーによく並んでいる魚です。もちろん刺身として出されている魚は、そのままでも食べられるのですが、基本的に鮮魚は過熱して調理しなければなりません。

「魚は鮮度」といっても、魚を絞めた後すぐに食べるのはかえってもったいないのです。死んですぐの魚はまだタンパク質が旨味成分であるアミノ酸に変化しておらず、あまりおいしくありません。これは牛肉、豚肉にもいえることで、この熟成期間のことをエイジングと呼びます。

絞めてからの硬直スタートまでの時間

魚種や大きさによってかなり幅があるのですが、一つの目安としては4時間です。最初のうちは「4時間すぎると死後硬直が始まる」とだけ覚えておきましょう。

4時間といっても釣り場と自宅の距離が長い可能性もあるし、そうそうタイミングよく帰られるとも限りません。

「じゃあクーラーボックスに適当に入れて、しばらく生かしておいた方がいいのでは?」と冒頭の疑問に戻るわけですが、そういうわけにもいかないのです。

釣り始めに釣れてしまい、帰るまでに時間がかかるとき役に立つのがスカリ。ただスカリに閉じ込めている間も魚へのストレスは溜まり、味が落ちていく。

絞めの必要性

釣った魚を持ち帰る際の魚の運命は、一部例外を除いて、大半は「苦悶死」か「即死」に分かれます。このうち「即死」が絞められた魚で、「苦悶死」が放置している魚です。

「苦悶死」がなぜいけないのかというと、苦悶死した魚はすぐに硬直が始まります。つまり鮮度が落ちるスピードが早くなってしまうのです。対して「絞め」の処理を正しく行った魚は硬直のスタートが遅くなります。そのため帰宅中でも鮮度が保たれ、家でおいしく食べられるわけです。

「殺しちゃうなんてかわいそう」なんていっている時間が一番かわいそう! おいしく食べるためではなく、魚のためにも早く処理しよう。

絞めていないということは、当然血を抜いていないわけですが、この血も大問題です。生物が生きるために欠かせない血ですが、死んだあとは細菌が繁殖し、それが身体に周り、味を落としてしまいます。しかも、腐食を早めてしまいます。

釣りを楽しませてくれた魚を苦しませてしまうのも、やはりかわいそう。魚を持ち帰るときは必ず「絞め」と「血抜き」をセットで行いましょう。

ちなみに死後硬直が早まる原因は他にも下記の理由があります。これまでの解説とともに覚えておくとよりよいでしょう。

・魚が小さい
・水温が適温ではない(魚の体温と同じくらいがちょうどいい。冷やし過ぎもぬる過ぎもよくないので、できる範囲で管理しよう)。
・頭や内臓をそのままにしている(だからといって頭や内臓を釣り場で捨てるのは御法度! 海に捨てるのもなし! 必ず家で処理しよう)。

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