釣って食べて楽しい。娯楽だらけの釣りという趣味にはいくつかの危険があります。釣りに対しての危険性は何度か解説してきましたので、今回は食に関して注目していきましょう。
食に関しての危険性でまず思い当たるのが食中毒。特に有名なものはアニサキスと呼ばれる寄生虫の一種です。
アニサキスをよく知らなければ、釣って生で食べる行為にはどうしても危険がつきまとってしまいます。おいしく魚を食べるためにもアニサキスについて学んでおきましょう。
アニサキスとは

食中毒被害を起こすアニサキスは主に幼虫。長さ2〜3㎝、幅0.5〜1㎜程度の白色の糸のような虫です。
アニサキスの成虫は主にクジラやイルカなどの胃に寄生しており、排出物と一緒に卵が海に排出され、その卵を魚が食べることで繁殖します。
渦状、あるいはミミズのような動きをしていることが多く、主に内臓表面に寄生しています。魚が死んで鮮度が落ち始めると内蔵から筋肉へと移動していきます。
この筋肉へ移動した生きた状態のアニサキスを人間が食べてしまうと食中毒になってしまうわけです。
アニサキスを殺菌、予防するには
刺し身の場合
まずは釣った後、できるだけ早く内蔵処理をすること。これはアニサキス予防というだけでなく、鮮度維持の観点からも有効です。
アニサキスの場合、6℃以下の低温なら動かなくなるので内臓から筋肉へ移動しづらくなります。そういう意味でも釣った後に冷やすのは大事です。


次に目視でアニサキスを確認してみましょう。前述したとおり、渦巻き状、あるいはミミズ状に白い糸のようなものがあれば、ピンセットなどで取り除きましょう。
このときブラックライトを持っているなら当てながら見ると分かりやすいです。アニサキスをさらに確認しやすいように専用のライトもありますので、活用しましょう。

左が一般的なブラックライト。右がアニサキス用に開発されたハピソンのアニサキスライト。
アニサキスはブラックライトでも365nmの波長に反応して光るため、専用に作られたライトのほうがよりはっきりと分かります。釣り魚を生で食べたい人は持っておくとよいでしょう。
また刺し身はできる限り薄く、細く切ることでも対策することができます。
アニサキスは傷が付くと死滅するため、少しでも寄生される可能性を和らげることができるのです。
刺し身をお店で頼むと、芸術的な薄切りや飾り切り、イカならそうめん状に切られています。見た目の美しさやおいしく食べる意味もありますが、食中毒を防ぐ意味もあるのです。
二次汚染に注意!

内臓に潜んでいたアニサキスやその他雑菌が手や包丁、まな板についてしまい調理時に刺し身に移ってしまう二次汚染を防ぐことも大切です。
なるべく内臓をまな板におかず、すぐに捨てましょう。さらに使う包丁やまな板は魚をおろす用、刺し身用に分けておくとよいでしょう。
アニサキスは意外と短時間で移動できます。鮮度を保つ意味でも作業は迅速かつ丁寧に行いましょう。
アニサキスは加熱にも冷凍にも弱い

それでもまだ怖いという人。アニサキスは加熱や冷凍で簡単に対処できます。
60℃程度の低温でも1分ほど、70℃にもなると一瞬で死滅します。どうしても生食が怖いという人は加熱調理すればOKです。
刺し身で食べたい人は冷凍保存しておくと良いでしょう。アニサキスの場合は-20℃以下で24時間以上冷凍すれば死滅するといわれています。
ただし、家庭用の冷凍庫の場合おおよそ-18℃前後。機種によっては強モードで-20℃以下に下がるものもありますが、もし不安なら丸2日間冷凍していれば、ほとんど死滅させることができます。
万が一アニサキスを食べてしまったら

アニサキスはおおよそ摂取後8時間以内に激しい痛みと発熱、嘔吐などが症状として現れます。腸壁に入り込んだ場合は数日後、下腹部痛や下痢などの症状を発症します。
アニサキスアレルギーという症状もあり、じんましんが出てかゆみが伴う場合があります。なお、アニサキスが体内に入っても症状が出ないケースもあるようです。
とにかく症状が出たらすぐに病院に行くこと。内視鏡で摘出してもらえばすぐに痛みが治まることもあるので、早めの処置が大切です。