
タチウオは痛みやすい魚なので、一般的にスーパーなどで売られているものはほとんどが、塩焼きなどの火を通す用のものとなっている。しかし、釣りで確保した新鮮なものは刺身で食べることもできる。脂の乗ったタチウオの刺身は格別だ。この食味の良さもタチウオ人気の理由の一つとなっている。

船釣り
もともと深海魚なので、100〜200m程度、場所によっては300m以上の深場を狙っていくのが一般的となっている。
エサで狙う場合、仕掛けはエリアによってさまざまだが、近年はテンヤ釣りの人気が高い。ルアーの場合はメタルジグを使用したジギングとなる。
使用するラインはエサ・ルアーどちらも同じで指5〜6本程度をアベレージとするならPE1号で十分だ。沖縄などで指10本クラスのドラゴンが普通に釣れるような場所では2号程度をチョイスすることが多いようだ。瞬発的な引きは強いが根に突っ込むような魚ではないのであまり太いラインは必要としない。しかし、長さが必要だ。タチウオは歯が鋭いために、ラインブレイクの可能性は高くなる。高切れで釣りができなくなる、などという事態は避けたいものだ。最低でも300mは必要で、できれば500m程度ラインを巻いておけば安心できる。また、それだけのラインキャパを持ったスプールを搭載したリールが必要となる。
ラインの放出量が多い釣りなのでリールは電動を使用するのが一般的だ。ルアーの場合も回収時に差がでるため電動リールを使った方が無難だろう。また、オマツリを防ぐために船内でラインの号数やテンヤ・メタルジグの重量を統一する必要がある。船長に確認してから選んだ方がよいだろう。
タチウオは神出鬼没な魚として知られており、通称「ゴースト」と呼ばれている。群れで行動しており、突然パッと現れては、サッといなくなる。釣れるタナもコロコロと変わる。船内で一人がヒットすると周りもパタパタと釣れ出し、アタリが遠のくと沈黙が続くことも珍しくない。そのため船内での情報共有は必須だ。だれかにヒットした場合、アタったタナなどの情報を船内で共有することができれば釣果に大きな差が生まれるだろう。
おかっぱり

エサ・ルアー共に近場の波止からも狙えるため、全国的におかっぱりでの人気のターゲットとなっている。夏の終わりころから指2本サイズくらいの小型がポツポツと釣れるようになり、11月ころにベストシーズンを迎える。
この時期には指3本以上が釣れるようになり、ときに4本以上の大物が交じることもある。おかっぱりでは指3本というのがサイズの一つの基準となっている。
毎年、ほぼ同じ場所に回遊してくるため、タチウオポイントとなっている場所は釣果情報が発信されると大勢の釣り人が押し寄せる。シーズンは短いが、釣れるときは数が釣れるというのが特徴となっているため、お祭り騒ぎ的な賑わいを見せる。
タチウオは日中は深場にいるため、おかっぱりで釣れる岸際に寄ってくるのは夕まづめ以降となる。そのためおかっぱりタチウオはエサ・ルアー問わずナイトゲームが主流となる。
ナイトゲームではベイトが集まりやすい常夜灯周辺というのがポイントとなる。港内に群れで入ってきて一時留まるため、そのときがチャンスタイムとなる。港の外側でも釣れるが、内側がポイントとなる場所も多い。一人が釣れ出すと周りにもアタリが出るようになってくるので、周囲の状況をよく観察することも大切だ。
船テンヤ釣り

エサとルアーのハイブリッド
ルアーで使用するいわゆるジグヘッドのようなものにエサを巻き付けて狙っていくのがタチウオテンヤ釣りだ。仕掛けがシンプルだということと、エサの集魚効果にルアーの楽しさが融合しているということで、近年圧倒的な人気を獲得している。
一般的なジグヘッドと比べて、タチウオテンヤはフックが下を向いている。これはラインを引く(アワセを入れる)ときにヘッド側が上を向くことでタチウオがエサを咥えている場所を支点にテコの原理でフッキングさせるためのものだ。
テンヤの号数は釣りをする海域の水深によって変わってくるが、100〜200m程度の場所で30〜50号というのが標準的だ。
ロッドは一般的な船用を使えばよいが、ルアーロッドでも代用可能だ。しかしタイラバロッドのようにあまりに軟らかいものはテンヤをアクションさせるのに不向きとなる。
使用するエサは、鶏のササミ、キビナゴ、イワシ、サバの切り身などさまざまなものがある。そのときどきでどのエサに反応が良いか変わってくるので、これも船長に一度確認した方がよいだろう。これらのエサを針金でテンヤ本体に巻き付けるだけでセットは完了だ。
基本の狙い方
誘い方の基本はシャクったり、シェイクしたりしてタチウオにアピールした後に動きを止めてアタリを待つ。
テンヤを着底させたら、1〜2m底を切ってからロッドをアオってターゲットにアピール。その後ロッドを止めてしばらく様子を見る。2〜3回やっても反応が得られなければ2mほどタナを上げる、これを繰り返していく。リールによって多少違いはあるが、ハンドル1回転につきおおかた80㎝くらいラインを巻き上げるので、3回転くらいさせればよいという計算になる。
もちろん、船長からの指示ダナがあれば、その少し下から攻めていくとよい。
アタリはさまざまなパターンがある。一般的なのがコツコツという小さい前アタリがあるパターンだ。まだ、この段階ではタチウオがエサの端っこの方を咥えているだけなので、ここでアワセを入れてもフッキングはしない。ロッドが揺れたり、ティップがちょっと曲がったりする場合も同様だ。エサの本体を咥えた場合にはロッドにしっかりと重さが伝わるので、そのタイミングでアワセを入れるとよい。
急にフッとラインのテンションが途絶えたときは食い上げのアタリである可能性が高い。迷わずアワセを入れよう。空振りした場合でも誘いとなるので問題ない。
前述したようにテンヤはアワセを入れることでフッキングするようになっているため、大きく、しっかりとアワせたい。
タチウオはしっかりと食い込ませてからアワせる、というのがかつてのスタンダードだったが、近年は即アワセが主流となりつつある。積極的に掛けに行く方がゲーム性が高く、おもしろみがあるということだろう。

船ジギング

タックル
オフショアのルアーでタチウオを狙う場合、メタルジグを使用したタチウオジギングの一択となる。200m級のディープを探っていく訳だから、おのずとそうなってしまう。
使用するメタルジグはセミロングタイプが一般的だ。これはタチウオがメタルジグを丸呑みできないようにするためだ。タチウオフィシングではあの鋭い歯によるラインブレイクというものが付き物となってくる。ルアーを丸呑みされるとリーダーを切断される確率が高くなってしまうため、なるべくリスクを減らすために口の中に収まりにくいサイズのメタルジグを選ぶというのが基本となっている。
使用するラインがPE1号くらいと比較的細いので、メタルジグの重量の基本は水深と同程度でよい。ただし、潮が速い場合や、ドテラ流しの場合はもう少し重いものが必要となってくる。
ロッドは専用品が多くラインアップされているので、それを使用すれば間違いないが、ライトジギング用でも代用は可能だ。タチウオは捕食がヘタなため、あまり速くメタルジグをアクションさせると食い損ねてラインにアタックされラインブレイクの原因となってしまう。キビキビとしたアクションは必要としないので、ロッドの許容値を超えた重量のメタルジグを使用してもあまり問題はないだろう。
PEラインと接続するリーダーは切られ対策として7号(20lb程度)とやや太めのものを使用するが、それでもあの歯に当たれば簡単に切断されてしまう。そこでリーダーの先にフロロカーボンの10〜20号(40〜80lb)を50㎝ほど接続するといのが主流となっている。ワイヤーを使えば切られる心配は無くなるが、食いが極端に悪くなるというデメリットがある。
フックはテールのみに装着するのがスタンダードだ。タチウオ専用のクワトロフックがあるので、それを使用するのがよいだろう。トレブルフックでも問題ないが、ハリ先の返しをプライヤーなどで潰してバーブレスにすることをおすすめする。釣り上げたタチウオをフックから外すときにあの鋭い歯で手を怪我してしまう可能性があるため、タチウオジギングではバーブレスフックを使用するというのが基本となっている。アシストフックを使用する場合はワイヤー芯入りのものを使った方がよい。テール2本仕様がよいだろう。

おかっぱりエサ釣り

エサ釣り
エサ釣りでは電気ウキを使ったウキ釣りと、船釣り同様のテンヤ釣りが人気が高い。エサはどちらの場合もキビナゴやイワシ、イカの切り身、鶏のササミなどさまざまなものが使用できる。タチウオはキラキラと光るものに反応するため、魚の切り身を使う場合はサバやサンマなど光を反射する魚皮をもつものがアピール力が高くなる。どれもスーパーなどで手軽に調達できるものばかりだ。また、アジやイワシなどタチウオが捕食しているであろう小魚を現地で調達するという手もある。
ウキ釣り
繊細なアタリを取るような釣りではないので、タックルは手持ちのものを利用すればよい。ウキは電気ウキ、発光体を装着するタイプのどちらでもよい。
仕掛けはハリが複数付いた市販のものが便利だが、シンプルな1本バリ仕掛けもトラブルが少なく使いやすい。
タチウオのいるタナに仕掛けをしっかりと入れることが釣りの要となるため、ウキ下の調整を素早くできるということが求められる。
波止から狙う場合、水深はせいぜいあって5m程度というところが多くなってくる。タチウオは立ち泳ぎしながら、自分より上層を見ていることが多いため、ウキ下は浅い状態から始めて、様子を見ながら徐々に深くしていくとよいだろう。
魚をエサにした場合、身切れによるエサ外れが多くなりがちだ。仕掛け投入の際には注意して優しく投げることを心掛けたい。
ウキ釣りの場合、エサの集魚力でターゲットを誘うため、ウキを流してアタリを待つというのが基本となってくる。しかし、タチウオの場合は前述したように繊細なアタリを取って即アワセというわけではないので、エサにアクションを与えることによってアピールすることも有効となってくる。単純にラインを巻き取るだけでも、エサは動くし、ロッドをゆっくりと大きく上下させたり、小刻みに揺らしたりとさまざまなものを試してみるとよいだろう。
ウキが揺れたり、上下するような前アタリが現れたら、そのまましばらく様子を見て、食い込むのを待つ。早アワセは厳禁だ。ウキがしっかりと沈み込んでロッドに重みが乗ったらしっかりとアワセを入れる。
取り込みは抜き上げが基本となる。よほどの大物でない限りタモ入れする必要はないし、また、大物であった場合、それをタモに収めることができない場合が多い。無理に入れようとしてハリ外れするくらいなら、ラインを持って引き上げた方がよいだろう。
テンヤ釣り
船釣りで使うものをそのまま小型化したようなおかっぱり用のタチウオテンヤを使用する。重量は7〜30g程度のものがラインアップされているので、使用するロッドに合ったものを選べばよい。磯竿や万能竿の他にルアーロッドも使用可能だ。
エサを固定したテンヤを投げ入れたら、ゆっくりとラインを巻き取りながら、アクションを加えて誘いをかける。着底はしなくてもよいが、一度底を取った方が、テンヤがどのタナにあるかが把握しやすい。ただし、根掛かりには注意したい。
誘いのアクションはさまざまなものを試すとよいが、ところどころでしっかりと食わせの間を取ってやることを忘れずにいたい。ラインにテンションが掛かったままストップさせると、ゆっくりとフォールしていくので、食わせの間を作ることができる。
船釣りと違ってラインが斜めに出ているので、アタリに対して即アワセしても問題ないが、なかなか乗らないときは少し送り込んでからアワせるとよいだろう。


おかっぱりルアー釣り


ルアー釣り
ショアからのタチウオは非常に釣りやすいターゲットだ。捕食に貪欲で動くものに積極的に襲いかかってくるため、いれば高い確率でルアーにアタックしてくる。
ルアーは、メタルジグ、ミノー、シンキングペンシル、バイブレーションなどさまざまなものが使用できる。水深がある場所であればメタルジグが広いレンジを広範囲に探ることができるため有利となってくるが、常夜灯周辺なら、ミノーやペンシルが扱いやすい。
夕まづめ時のまだ日が沈んでいない時間帯にはタチウオはまだ岸に寄り切っていないためメタルジグで沖の深場を広く探り、ナイトゲームではミノーやペンシルを多用する、というのがよいだろう。
タックルはシーバス用やエギング用が使い勝手がよい。
メタルジグで狙う場合、基本はオフショアと同じだ。あまり激しくアクションさせない、ということを念頭に置いて誘いをかけていこう。

常夜灯周辺を探る場合には光の明暗に対して
○暗→明
○明→暗
○明暗の境目をトレース
という3パターンを試してみるとよい。ルアーはまずはミノーをチョイスするとよいだろう。ミノーは他のルアーに比べてアクションが大きめなため、波動やフラッシングなどのアピール力が高い。まずは目立つルアーで活性の高い個体を狙っていこう。
常夜灯周辺でアタリがない、または小型ばかりがヒットするという場合は少し沖の暗がりを狙ってみるのもよいだろう。
積極的にエサを捕食していない=活性の高くない状況ではあまりアピール力の高いルアーは警戒されることも多い。シンキングペンシルなどのナチュラルな波動を出すルアーをチョイスしよう。シンキングペンシルはカウントダウンして沈めることによって、任意のレンジを探っていけるので、タチウオ狙いでも使い勝手は良い。
カウントダウンする場合はまず浅いレンジから攻めていくとよい。最初は1〜2m沈めるイメージでカウントして、そのレンジをキープするようにゆっくりとラインを巻き取る。ときどき軽いトゥイッチを入れてイレギュラーな動きを演出するのも効果的だ。
コツンコツンというルアーが何かにぶつかっているような小さな振動が手元に伝わる場合、アタリの可能性が高いが待っていてもなかなか乗らないことも多い。そういった場合は即アワセで積極的に「掛け」にいくとよいだろう。トレブルフックを装備したルアーであればアワせることでフッキングに至ることも多い。
ワインド
ショアからのタチウオ狙いの定番釣法として近年定着してきた釣り方だ。水切りの良い三角形をしたジグヘッドとワームを使用して、ルアーを左右にダートさせるように跳ねさせ誘っていく。
ロッドを軽くシャープに2回アオってリールのハンドルを1回転させるという動作を連続させてるとよい。
一度、ボトムタッチさせてから連続10回程度アクションを入れたら再びボトムタッチ、という具合に行えばよいだろう。海面を割らないように注意したい。テンポをいろいろと変えながら探っていくとよいだろう。
ロッドは7ftクラスくらいが使いやすい。専用品もあるが、エギングロッドで代用できる。
