タイラバやメタルジグ、シンカーなど通常はコストが安い鉛製がほとんどですが、価格が圧倒的に高くなっても人気の高い素材があります。それがTGと記されているタングステンです。
タングステンとは金属の一種で、その特徴は鉄や鉛など一般的によく釣り具に使われている金属と比べて比重が大きく硬度が高いということです。
比重は19.3となっており、これは水を1とした数値となります。

たとえば10㎝四方の容器に水をいっぱいに注げば1000㎤=1ℓとなります。水の場合、その重量は1㎏となりますが、おなじ形状のタングステンの塊なら19.3㎏になるということです。
この比重はほぼ金と同等で、金属の中でも最も比重が大きい=重いということになります。
ちなみに鉄は7.85、鉛は11.4となっています。この比重の大きさに着眼してダーツのバレルなどにも好んで使われています。
硬度に関しては金属の中で最も硬いとされており、それゆえ金属切削用工具などに使用されています。
釣り具としてのメリット

タイラバやメタルジグにタングステンが使われるメリットとして、一番大きなところでは、やはり比重が大きいということが挙げられます。
一般的な素材として使用されている鉛と同じ大きさで作れば、より重いものとなり、同じ重量で作ればより小さなものが作れるということです。
タイラバヘッドの場合、この恩恵はフォールスピードに現れます。同じ重量であれば小さい方が、同じ体積であれば重い方が海中でのフォールスピードが速いのです。
フォールスピードが速けれ速いほど船上のアングラーが一斉にタイラバを落としたとき、人よりも先にボトムに到達できます。
この手のルアーゲームでは最初に魚にルアーを見せたアングラーが釣果を得る確率が高いのです。
また、潮流の影響を受けづらくなるため、潮の速いときやドテラ流しなどでは底取りがしやすくなるというメリットもあります。

メタルジグの場合は、なんと言ってもシルエットを小さくできるということが最大のメリットとなります。
ターゲットが小さなベイトを捕食している場合、マッチ・ザ・ベイトでメタルジグは小さめのものを使用したい。
しかし水深を考えるとそこまで軽量なものは使えないという、もどかしい状況下でタングステンモデルが活躍するのです。
特に近年人気沸騰中のSLJ(スーパーライトジギング)ではイサキやマダイ、ロックフィッシュなど、もともと小型のベイトを捕食している魚がターゲットとなることも多いため、シルエットの小さいタングステン製のメタルジグは必須アイテムとなっているようです。

また、硬度が高い、つまり硬いということによってもメリットは生まれます。それは感度が高くなるということで、特にこれはボトムタッチで顕著に現れます。
軟らかいものが何かにぶつかるときは、ある程度衝撃を吸収します。しかし硬いものであれば衝撃を吸収しきれずに振動が発生します。
硬いタングステン製のタイラバヘッドやメタルジグであれば、ボトムタッチしたときの衝撃が吸収されずに、ラインを通して手元に伝わりやすいのです。
その差は鉛製のものと比べると歴然としています。タングステン製であれば海底の地質が砂地なのか岩盤なのか判断できるほどです。
タイラバにしろ、ジギングにしろ、ボトムタッチを見極めるということは釣果を左右する重要な事項です。
ビギナーが最初につまづくところであり、上級者であっても海の状況によっては見極めるのが困難な場合もあります。それが改善されるというメリットは非常に大きなものとなります。
この感度を重視して、ボトムを探るような釣りで多様されるテキサスリグのバレットシンカーなどにもタングステン製のものが出回っています。

価格は高いけれど……
良いことづくめのタングステンですが、一つだけ難点があるとすると、それは価格が高いということでしょう。鉛製の製品に比べて、その価格は1.5〜3倍程度に膨れ上がります。
タングステンはレアメタルと呼ばれる希少金属の一つに数えられます。そしてただ単に採掘量が少ないというだけでなく、加工が非常に難しいのです。
まず融点が金属の中で一番高く3380℃となっています。溶かして製品となる型に流し込むためには、これ以上の温度が必要となるということです。ちなみに鉄の融点は1500℃で鉛は327.5℃となっています。通常のバーナーの炎は1800℃程度あるので、鉛はかなり簡単に溶かせるということになります。

メリットとなっている硬さも、そのまま加工のしづらさに繋がります。
もともと金属切削用に使われているようなものを切削や研磨しようとするならば、それ相応の設備が必要になりますし、当然時間も掛かってしまうのです。
つまり、それはそのままコストアップに繋がってしまうということになります。
性能と一緒に価格もアップしてしまうタングステン製のルアー。釣行時に持ち込む、サイズやカラー違いなど複数のルアーを全てタングステン製で揃えられるアングラーなどほとんどいません。
それどころか、購入に踏み切れずに一度も使ったことがないという人の方が多いのではないでしょうか。しかし一方で、一度使えばその結果にもう手放せなくなっている人も多いようです。
釣果が上向かないときの切り札として、一つくらいタックルボックスの中に忍ばせておけばライバルに差を付けることができるかもしれません。