マダコは世界各地の温帯・熱帯地域に広く分布しており、日本近海では常磐と能登半島以南の各地に生息しているが、日本海には少ないとされている。
外洋に面した海域の浅瀬から水深約40mくらいの岩礁やサンゴ礁に生息しており、真水を嫌うため汽水域には生息していない。
日中は海底の岩穴などに潜んでいるが、夜間に活発に活動して甲殻類や貝類を捕食している。
体長は約60〜80㎝、1.5㎏くらいのものが多いが、大きなものは3㎏にまで成長する。腕は胴体の約3倍の長さがあり、寿命は約1〜3年。
無脊椎動物の中では特に知能が高い種だとされており、周囲の環境に合わせて体色を黄褐色から黒褐色の間で自由に変色させることができる。
日本人の食文化とマダコ

日本では一般的に「タコ」といえばマダコのことを指しており、重要な漁業資源の一つだ。
タコを食べる文化のない欧米諸国では「悪魔の魚」として忌み嫌われているが、日本人のタコ好きは世界でも群を抜いており、消費量は世界1位で世界の約6割を消費するという高いシェアを誇っている。
無類のタコ好きである日本人は、古くは弥生時代からタコ壷を使った漁を行っていたと考えられている。
また、古文書からはタコの干物に関する記述も見つかっており、古くから食用とされていたことが伺える。
しかし、近年はマダコの漁獲量が減少しており、高価なものとなりつつある。それをより大型の種であるミズダコなどで補っているが、タコは常に需要が供給を上まっており、アフリカからの輸入もある。

現在ではマダコは通年出回っているため、明確な旬というのが存在しないが、九州から関西あたりだと夏が旬と言われている。
地域によっては冬が旬とされている〜が、漁獲量が多いのは夏で味が良くなるのは冬だという説もある。
一般的に国内産のマダコは高価なため、その多くが高級料理店などで扱われているようだ。
必要な道具

タコ釣りの道具や仕掛けはエサ釣りでも、ルアーでもほぼ同じだ。タコテンヤを使った釣り方がポピュラーだが、これにエサを付けるか擬似エサを付けるかの違いくらいとなる。
ルアーの場合、この他にもタコエギやタコジグなど種類が豊富になってくる。
陸っぱりでタコを狙う場合は基本足元狙いとなるため、極端な話、ロッドはなくても構わない。手釣りでも十分に狙えるのだ。
手釣りで狙う場合はラインはナイロンなら10号前後、PEなら3〜5号くらいを選ぶとよい。
もちろん、ロッドでキャストして広い範囲を探ることも有効。このような釣り方で使用するタコ用のルアーはエギとほぼ同等の重さなのでエギングロッドでも釣りをすることは可能となる。
しかし底を探るような釣り方をするため、根掛かりも多い。エギングロッドを使用する場合でもPEラインはなるべく太めのものを使用したい。
市販されている一般的なタコ用ロッドは短めで先調子の硬めのものが主流となっている。これはタコを掛けた場合、底に張り付かれないように一気に底から引き離すためだ。
タコは浮かせさえしてしまえば、ライトなタックルでも獲ることができる。しかし、底や壁に張り付かれると、まず引き剥がすことは不可能だ。

より獲る確率を上げるためにはかなり強靭なタックル、もPEラインは4〜6号が必要となってくる。長さは100mあれば事足りるが、それを巻けるのは結構な大型リールとなる。
リールは底取りがしやすいベイトリールが断然使いやすい。それも頑丈なメタルボディのものがよいだろう。そして、そのような太いラインを使える強いロッドが必要となる。
こうなると、ほとんどヒラマサやカンパチなどの大型青物を狙うジギングタックルと変わらない。気合を入れて揃える必要があるので、まずは手持ちのライトなタックルで試してみるのが無難だろう。
こんなところを狙う

タコ壷漁からなども分かるようにマダコは狭くて暗い場所を好む。そのため、釣りで狙う場合はタコが身を潜めやすいストラクチャー周辺や地形に変化がある場所を探るのが基本となる。
最初に探っていきたいのが足元だ。岸壁と海底が交わる場所は大きな地形変化となるでタコがつきやすい。その中でも岸壁が折れ曲がっているような場所は期待が持てる。
また、海底に石や岩が沈んでいるようなところや海藻が生えているような場所もタコが身を潜めやすい。このようなポイントは必ず探っていきたい。
テトラは多くの魚たちにとって格好の隠れ家となるが、タコは釣り上げようとすると、壁や海底に張り付く習性を持っている。テトラに張り付かれた場合は並のタックルでは引き上げることはできない。
それなりの腕と道具がなければ避けたほうがよいだろう。
仕掛けと狙い方

タコが普段捕食しているメインのエサは甲殻類だ。そのためタコテンヤを使用する場合のエサとしてはカニがポピュラー。擬似エサもカニを模しているものが多い。
色もカニをイメージさせる赤に反応が良いといわれている。その他に実績が高いエサはアジや豚の脂身、鳥の手羽先となっているが、どれもスーパーなどで売られているので入手は簡単。
また、タコはさまざまなものに興味を示す好奇心旺盛な生き物といわれており、時期や場所によって捕食しているものが変わってくるのでいろいろなエサを試してもらいたい。
エサは取られない限り比較的長時間使えるのでテンヤに針金でしっかりと巻きつけるのがコツだ。
まづめ時など活性の高い時間帯は、エサの20㎝程度上にスナック菓子の袋を短冊状に切ったものやアルミテープなど、キラキラとしたものを付けるとアピールアップに繋がる。

タコは中層で泳いでエサを追うことはなく海底や岸壁などの「面」に潜んで捕食活動をしている。
そのため仕掛けを沈めたら確実に底を取って、後は底ベッタリを探るように誘いを掛けていくのが基本となる。
底が砂地の場合はズル引きが一番効果が高い。海底で砂煙が上がるので視覚的なアピール力も高くなる。
海底が岩場であったり、障害物が多くて根掛かりする場合は軽く竿を煽って、仕掛けを跳ねさせながら誘うとよい。
しかし、この場合も底を離れ過ぎないように軽く跳ね上げては底を取って、を繰り返しながら丁寧に探っていく。
また、ずっと動かし続けるのではなく、ときどきストップを入れながら食わせの間を作ってやることも重要だ。

キャストしてラインを巻き上げながら仕掛けを引いてくると広範囲を探ることができるが、波止などから足元に落として海沿いをゆっくり歩きなら探っていくのも効果的だ。
この場合もズル引けるならズル引いて、引っ掛かるようであれば軽く跳ねさせるようにするとよい。
アタリは「のそっと」重みが乗ったように出る。魚のように竿先に生命反応が伝わってくるような感じではない。違和感を感じたときはとにかくアワせるようにしたい。
このときに小さく鋭いアワセを入れるのではなくて、竿を持ち上げるように大きくアワせることがポイントとなる。フッキングと同時に底から引き離すことが重要となるのだ。
底から離してしまえば焦ることなく、一定速度で寄せていけばよいが、タコ用のテンヤやルアーのフックにはカエシが付いていないので、ラインのテンションを緩めないように心掛けることが重要となる。
取り込みの瞬間が一番注意が必要だ。岸壁に寄せ過ぎて張り付かれてしまうとバラす可能性が非常に高くなる。岸際まで寄せたら、強いタックルを使用していれば一気に抜き上げる。
抜き上げれないサイズと判断したら、早めにタモやギャフを投入しよう。
海底や岸壁に張り付かれたときは無理に剥がそうとせずに、少しの間ラインのテンションを緩めてタコが再び泳ぎ出すのを待つようにしたい。