全長2mほどにまで成長するシイラはオフショアキャスティングの好ターゲットだ。夏から秋にかけて暖流に乗って北上し、各地の堤防や磯で狙えるようになる。
60〜70㎝クラスまでは「ペンペン」と呼ばれ、ショアジギングの対象となる。それなりのタックルで臨めば2m近い大物も夢ではない。
シイラゲームの魅力

シイラゲーム最大の魅力は何と言ってもその引きの強さにある。
「万力」の異名をとり、ひとたびヒットすれば猛スピードで力強く走り回る。海面に姿を現したかと思えば2度、3度と豪快にジャンプを繰り返し、ヘビークラスのロッドを極限まで絞り込むビッグターゲットを相手に興奮を覚えない釣り人は少ないはずだ。
それが船からではなく陸っぱりから楽しめるとあれば挑戦してみない手はないだろう。
シイラが狙えるシーズン

地域によって若干のズレはあるが、基本的に夏から秋にかけてショアで釣れるようになる。水温が上がる春頃から黒潮に乗り太平洋側沿岸各地へ、一部は対馬海流に乗って日本海側へと北上する。
そのため南方ほど早く釣れ出し、九州や四国南部では早いところで5月ごろから釣れ出す場所もある。
ベイトの動きも重要。イワシ、アジ、キビナゴといったベイトの回遊が活発になれば期待は大きい。
陸っぱりシイラゲームのメッカとして有名な長崎県の平戸ではトビウオに着くことが知られている。
情報収集が大事
シイラが回遊してくる釣り場は限られているように思われがちだが、実際には身近な地磯などでけっこう釣れている。問題は接岸状態。
ベイトとともに岸に寄るタイミングを見計らうのが重要。そこで事前の情報収集が大事になってくる。
釣具店や雑誌、新聞、ネットから、ベイトの接岸具合、どこでどれくらいのサイズが釣れているかなどを探ろう。
釣れる時間帯
シイラは夜間に釣れることはほとんどない。夜は沖に移動し、明るくなり水温の上昇とともにベイトの動きが活発になってくると徐々に海面付近へと上昇して捕食を始めるのである。
朝まづめはさまざまな釣りにおいていわゆるゴールデンタイムとされているが、シイラの場合ほかの魚よりワンテンポ遅く、朝まづめだからといって接岸するわけではない。
キーワードはベイトと潮。それによってタイミングが左右されると考えてよい。
ポイント選び

堤防でも沖磯でも、シイラのポイントの第一条件は「潮がよく通すこと」である。そのため堤防の先端や磯場の突端がポイントになる。
堤防から狙う場合は、港外側の潮目を目印にするとよい。潮の色の違いや海面の泡の動きで潮の流れる方向を確認しよう。
磯ではできるだけ沖へ突き出た地形の水深がある釣り場を選択すること。潮目はもちろん、サラシから出る泡溜まりも狙いめのポイントだ。
タックルセレクト
シイラゲームにおいて飛距離は重要な要素である。ロッドは10〜12ftの遠投対応タイプ。リールは3号のPEラインが300m以上巻けるキャパシティが必要だ。
シマノなら5000〜8000番、ダイワなら4000〜5000番のスピニングリールを選択する。メインラインはPEの3号が標準でメーターオーバーが出る状況なら4号の使用も視野に入れる。
リーダーはメインラインの太さに合わせて50〜80lbのナイロンラインをFGノットやPRノットで結束する。
ルアーセレクト

シイラはトップでよく反応するため、通常はペンシルやポッパーの使用頻度の方が高い。
ただ、シイラの歯は硬く、噛む力が強いためプラグは破損する場合がある。メタルジグを使用するのは、耐久性や飛距離を求めてのこと。
また、レンジを広く探れるためローテーションの一環として使うことが多い。
回遊しているシイラのサイズがペンペンクラスならばジグのウエイトは40〜60g。メーター級が交じるようなら60〜100gを選択する。
他の魚種に比べると、あまりカラーにこだわる必要はないだろう。乱暴な言い方だが、シイラはそこにいれば何でも食いつく。
とはいえ、同じカラーをいくつも持つよりもローテーションできるように多彩に取り揃えた方がよい。
ジグのバランスに関してもシイラに対するアピールとして考えるのではなく、遠投のしやすさからリア重心タイプを選択する方法もある。
ジグミノーの使用も効果的である。メタルジグの遠投性を持ちながらも、ミノーライクなスイムとフォールアクションがスレたシイラに効果的である。奥の手としてラインアップに加えておきたい。
狙い方とアクション

潮目などにポイントを定めたら、そこをルアーが通るように少し先を目掛けてフルキャスト。
シイラは着水と同時にフッキングすることもあるので、着水時に糸フケが少なくなるように必ずサミングで調整しながらキャストする。
これをしないと掛かったときにバラす確率が大きい。またたとえバラしてもシイラは何度もアタックしてくるので、しっかり張っていれば対処しやすい。

基本は着水と同時にフォールさせずに速巻き。活性の高いときにはこれで食ってくる。コツはとにかくルアーを止めず最後まで巻き続けることだ。
シイラの遊泳能力は高く、時速60㎞ほどの速度で泳ぐと言われている。これは一般道の車の最高制限速度と同じスピードだ。
いくら全速でリールを巻いたとしても車のスピードを超えることはできないだろう。つまり、全速力で巻いてもシイラは捕食できるということである。
速すぎてピンピンとジグが海面を跳ねるような速度で巻いても食ってくるほどだ。
朝まづめの活性が低い時間帯は少し沈めて深場を探ろう。このときも早巻きのタダ引きが基本だが、フォールを加えてリアクションバイトで食わせるのも有効だ。
ファイト&ランディング

フッキング後のシイラは猛スピードで走りだす。このとき無理に止めるとフックアウトしやすいので止めずに走らせよう。
しばらく走らせれば失速するので、ここで念のため追いアワセを入れて一定の速度で寄せてくる。なるべく走らせて体力を奪うのがランディングを成功させる秘訣である。
ただし、人が大勢いる堤防などで長時間走らせると迷惑になるので、その場合は多少強引にでも素早く取り込むことを心掛けよう。
ファイト中はフックを外そうとジャンプを繰り返すこともある。慌てずにロッドを寝かせてテンションを保ちながらフックアウトを抑えよう。
足元まで寄せたらいよいよランディングである。
60㎝程度までなら抜き上げでも大丈夫。それ以上はタモ入れが無難だが、メーターオーバーともなると、その専用の落としダモやギャフが必要になる。そのような場合、周囲でサポートする。
釣り上げたシイラはルアーを口にしたまま大暴れする。これがとても危険。だから、シイラ釣りではバーブレスフックにする。トレブルフックよりシングルフックの方が事故率が低い。
グローブは必須

重量のあるメタルジグのキャストを何度も繰り返すとロッドを持つ手やPEラインを押さえる指に大きな負担がかかる。
シイラを取り込んだあともメーターオーバーともなると他の魚と比べ物にならないほど大暴れする。フックを外そうとして怪我をしたりしないよう必ずグローブを着用しよう。