日本には外来種を含めて3種類のスズキが確認されているが、一般的にシーバスと言えばマルスズキのことを指す。貪欲にエサを追う反面、繊細で潮汐の変化や音に敏感だ。
小魚や甲殻類、ムシ類を捕食する動物食性で1m以上に成長する。沖縄県と一部を除く沿岸部に分布し、磯場からサーフ、河川や河口部、港湾など広い生息域を持つ。
中でも汽水域に集まりやすく、淡水にも強いので河口付近からベイトフィッシュを狙って川に入り込み中流の淡水域まで遡ることがある。
多くの成魚は春から秋にかけて条件のよいフィーディングエリアを求めて内湾を移動し、冬には産卵のため湾外へ出るという行動パターンを持つと言われるが、冬季でも河口部や港湾に留まる個体もいるようなので全てがあてはまる訳ではない。
また、これとは別に1日のうちでも回遊し群れでエサを追いながら規則的に移動する。
シーバスは回遊ルートの中に複数のフィーディングスポットを持ち、そこにステイして獲物を待ち伏せる場合と、移動中遭遇したイワシの群れなどのベイトフィッシュにつく場合があり、季節的に大量発生・群遊する動物を選択的に捕食する状態を「パターン」と呼ぶ。
狙うべきピンスポット

河川や河口部なら潮流の影響を受け、流れがあり深い場所を探す。
流心や蛇行して深くなっている場所、護岸沿いの深み、水深がありテトラなどのストラクチャーが沈んでいる場所、橋の下にできるシェード部、他の河川との合流部や水門などだ。
港湾部であれば、潮通しの良い堤防の先端部、波消しのテトラ帯、船溜まりの船の下、流れ込み、シーバースなどのマンメイドストラクチャー(人工の障害物)などを狙う。
ナイトゲームの場合は光と影を意識し、橋の下のシェード部や橋脚の際、堤防のシェード部や外灯の光が当たる場所、流れ込み、タンカーの陰などとなる。
サーフであれば流れ込みの両端やカケアガリ、離岸流や海底の起伏で潮流が変化する場所を狙う。
タックルセレクト

軽量なルアーでも飛距離を出せるように振り抜きの良い8〜11ftでミディアムアクションのシーバスロッド。シーバスの口は部位により非常に柔らかく薄いので、掛かりどころによってはバラす確率が高い。
張りがあり、軟らかめでバットにパワーのあるロッドの方がバラシは少ない。リールはスピニングリールで2500〜4000番のドラグ性能が良いもの。
メインラインはPE1〜2号でリーダーラインはフロロカーボンラインの4〜5号を選ぶ。
コノシロパターン(1〜3月)

コノシロはベイエリアなどで見かけられるポピュラーな魚で、冬から春にかけて大きな群れをつくる。これをシーバスが選択的に捕食することをコノシロパターンと呼ぶ。
コノシロが群れるベイエリアや河口付近、運河などがポイントとなりシーバスがアタックするレンジが比較的浅いので、警戒心の薄れるナイトから早朝のゲームがメインとなる。
コノシロの群れをシーバスが狙っている場合、水面をコノシロが逃げ回る音で騒がしいことが多い。また、コノシロにシーバスがアタックする音は意外に大きく「バシッ」や「ドボッ」といった感じだ。
使用するのは大きめのフローティングミノーが主体で、サイズはコノシロのサイズより一回り小さめの12〜17㎝が標準。高活性時や逆に超低活性時はペンシルベイトやシンキングペンシルが効果的だ。

コノシロの群れが大きい場合、群れの中心にルアーを通してもバイトはほとんどない。シーバスは効率的に捕食できるように群れの中で弱ったものを捕食する。
元気の良いコノシロは群れの中心に向かい、弱い個体は群れの端に残るのでシーバスは群れの端にポジションする。
トップレンジでは、ルアーが水面に作る引き波を利用し、弱ったコノシロがゆっくりと泳ぐイメージを演出する。
水面直下ではルアーのアクションをロッドティップで感じられる最もスローなスピードでリトリーブする。
また、コノシロの群れの直下や左右をノーアクションでスローに通し、ルアーを弱った個体と判断させアタックさせる。
バイトは「コツン」や「ガツン」といった激しく手元にくることが多いが、フッキングは必要。段々深く刺さるように「グッ、グッ」とトルクをかけるとバレにくい。
バチパターン(2〜6月)

春はシーバスのハイシーズンで、代表的なのがバチパターンだ。
バチとは環状生物であるイソメ類等の総称で、シーズン中は夜になると数種類のムシ類が入れ代わりながらバチ抜けと呼ばれる産卵行動をとる。
地域や種類で時期が大きくズレるのも特徴のひとつだが、1月後半から初夏の間にシーズンがくる。
ちょうどバチ抜けの始まる頃、産卵を終えたシーバスが体力を回復させるタイミングと重なりバチを荒食いする。それがバチパターンだ。
バチ抜けは大潮の夜に始まることが多く、本来、活発に泳ぎまわる生物ではないのでシーバスの恰好の標的となる。

動きが鈍く消化の良いエサを効率よく捕食できるシーバスは、常食の小魚やエビなどを無視する傾向が強くなり攻略法を知らなければ全く結果がでないことになる。
バチ抜けが始まると高確率でボイルに遭遇するが、ボイルの全てがシーバスとは限らない。ボラやチヌ(クロダイ)など他の魚もバチに集まるからだ。そのためボイルがあってもルアーに無反応な場合もある。
また、目の前に捕食しやすいエサが大量にあるのに泳ぐルアーを追いかける行動には出ない。やはり、バチに極めて近いルアーでバチに極めて近い動きを演出するほかはない。
バチ抜け用に作られたルアーがあるので6〜12㎝を揃え、ベリーが赤系のものと他に数種あると良い。
シーズン中に海面でボイルがないときはバチのいるレンジが違う可能性がある。シーズンの初期や夕まづめなど時間帯が早いときに効果があるのがローリングアクション系のシンキングペンシルだ。
着底後のリトリーブは海底から産卵のため水面へ向かうバチの演出ができる。ルアーはアクションさせず、とにかくスローにリトリーブするだけで良い。
サヨリパターン(12〜2月)

「サヨリパターンは難しい」と言われる。サヨリの群れにつくシーバスは平均的に大型が多い。サヨリのほかにも色々なパターンがあるが、どのパターンも大型が入れ食いになることは稀だろう。
捕食されそうなサヨリは水面を走って逃げるが、それを大型のシーバスが飲み込もうとするため捕食音が大きく「ドボン!」となる。
この音を聞いたアングラーは、シーバスの活性は最高だと思ってしまうだろう。しかし、活性は普通で何かのタイミングで捕食スイッチが入っている程度なのでルアーに反応しない。
そして捕食音が闇にこだますると「サヨリパターンは難しい……」となるのだろう。

そんなサヨリパターンの攻略法は、まず9〜13㎝のスリムなフローティングミノーを選ぶ。海面にできる引き波が大きく、沈みにくいものが良い。
サヨリの群れの向こう側にルアーをキャストし、群れの中を通す。この場合、サヨリの群れのはるか下をトレースしても反応はないだろう。なぜならシーバスの意識は水面に集中しているからだ。
当然、ルアーも水面を引くが潜り過ぎるならロッドを立てて潜航を止める。
速くリトリーブするとサヨリがスレで掛かるので、それを避けるためにルアーをスローに引き、ゆっくりとしたアクションでサヨリを驚かせ避けさせる。こうすることでサヨリのスレ掛かりは減り、シーバスをまともに狙うことができるだろう。
サヨリについたシーバスはルアーへの反応が鈍いが、サヨリの群れの中で密度の低い所を狙えばアタックしてくる。なぜなら下にシーバスがいるのでサヨリが警戒して散るためだ。
群れの密度は月明かりや外灯の光を頼りに、水面にできるサヨリの波紋の少ない場所で判断できる。
落ちアユパターン(9〜12月)

アユが産卵している川というのが前提となり、地域差はあるが秋口から12月初旬にかけ落ちアユパターンの話題が飛び交うことになる。
シーバスが落ちアユを捕食するために川を遡る道になるのが流心で、干潮時に流れが速くなるためより深くなっている。
流心を通る理由はシーバスの生理面から考えられる。海水魚のシーバスが河川に遡る場合、身体を淡水に慣らす必要がある。海水と淡水では比重が違うので、重い海水は沈み、その上を淡水が流れる。
海抜にもよるが河川の深い部分に海水が残るのでそれを利用して調整しつつ上流に進むと考えられる。
アユパターンで最も有効なのは弱ったアユが水面を流されていく演出だ。理由は産卵で弱った落ちアユは、逃げるのが遅く捕食しやすいエサとなるからだ。
しかし、適当にルアーを流れに乗せる訳ではなくアタックポイントを予測し、そこに流すコースを見極める必要がある。

使用するルアーは11〜15㎝と大きめのフローティングミノーでリップレスタイプやスリムなペンシルベイトを使う。
アップストリームかクロスストリームでキャストし、流れに乗せたルアーへ時折小さくアクションを与えながら流す。
落ちアユの時期、シーバスの着き場は2つに分かれる。一つが流芯からのカケアガリにポジションし流されてくるアユを捕食する個体。
流れの中でエネルギーを消費するため活発な捕食活動を繰り返し、ルアーの回収中やピックアップ時にもバイトしてくる。
一方、比較的大きな個体に多いのが流れに削られてできた急な深場や川底に沈んだ岩などの際にポジションする個体。
このような場所は流れがぶつかり緩くなるのでエネルギーの消費が少なく、流下物の速度も落ちるのでフィーディングポイントとして選ぶのだろう。