秋はエギング入門のに最適なシーズンだ。
海水温の上昇や技術・道具の進歩により、アオリイカの釣果は年間を通じて聞かれるようになってきた。しかし、初心者にとって最適な季節は、やはり秋だ。
秋は、今年生まれたイカが積極的にベイトを追う時期で、エギにも果敢にアタックしてくるからだ。初心者でも比較的簡単に釣果を上げることができる。
アオリイカの生態

アオリイカの寿命は1年。
春に沿岸の藻場で生まれ、ある程度成長してから沖の深場へ移動、厳寒期を水温の安定した深場で過ごした後、春に岸近くの藻場で産卵しその一生を終えるのが行動の大まかなパターンとなっている。
生まれたときの大きさが、ほんの数しかないことを考えると、その成長速度は驚異的で、産卵のために接岸する成体は2を超えるものも珍しくない。
体が小さいうちは外敵のエサとなるアオリイカも、成長するにつれ外敵が徐々に少なくなり、2kgほどになると沿岸部では食物連鎖のピラミットの頂点近くに位置することになる。
成長の速さは身を守ることに直結するため、それを支える捕食活動は活発。ときには自分と変わらない大きさの相手に襲いかかり、エサが少なければ共食いすることもある獰猛な性質を持っている。
視力

特徴のひとつである目の大きさから想像できるように、アオリイカの視力はかなり発達していると考えられている。
視力や色の見え方など、単純に人と比べるわけにいかないが、獲物を探す際に目の果たす役割は大きく、夜でも月明かりほどの光量があれば狩りをするには充分なようだ。
捕食スタイル

獲物を見つけたアオリイカは、相手が警戒しないぐらいの距離でホバリングし、タイミングを計って目にも止まらぬ速さで触腕を伸ばして捕まえる。
触腕で捕らえた獲物は残りの足でガッチリ押さえてから鋭いクチバシで急所にかじりついて絶命させ、安全な場所まで運んで食べるのがアオリイカの捕食スタイルだ。
忍者にも例えられるアオリイカの慎重な捕食スタイルは、狩りの成功率を上げるだけでなく、場合によっては自らがエサとなってしまう危険性も踏まえての行動のようだ。
とくに、体が大きい相手には警戒するようで、エギがイカよりも大きい場合、一気に抱きつかずに何度も触腕で触って確認することも多い。
アオリイカが好む場所


エサが豊富で身を隠すことができる岩礁帯や藻場が生息圏になっており、単独または数杯の小さな群れで行動している。
体が小さいときは安全な内海で、大きくなると効率よくエサを獲るために外海を回遊するようになる。
水温とエギングでの釣果
春先は、水温が16度を超える頃から釣果が聞かれだすが、活性が上がりエギへの反応が良くなるのは20度を超えてから。
秋は25度を切り始める頃から18度くらいまでがハイシーズンの目安となる。
海水温の下降は気温よりも少し遅れるため、場所にもよるが12月中頃までが秋イカのシーズンといってもいいだろう。
タックル選び
ロッド

シャクリなどの特殊な操作を1日中続けるエギングでは、専用のロッドを選ぶのが望ましい。
秋イカなら2〜3.5号のエギを使うことが多いため、ライトからミディアムライトくらいのアクションのロッドが適している。
適度な柔らかさは、イカの小さなバイトを弾くことなくフッキングに持ち込めるので初心者にもおすすめだ。
長さは8ft(2.4m)を基準に身長や体力に合わせ、長く使って疲れないものを選ぶようにしよう。
リール選びとドラグ設定
使用するラインが100〜150m巻けるものが基準。2500番もしくは2000番が重量バランス的にも扱いやすい。
ドラグの調整は、強くシャクッたときにラインやロッドに負担がかかり過ぎないようにすればOK。アワせたときのイカの身切れはドラグの調整よりも、しっかり抱かせることで防ぐほうが望ましい。
とくに初心者はフッキングが甘いことが多いので、エギをしっかり抱いたイカを確実にフッキングさせるには、ドラグの設定を強くして確実に力を伝えたほうがいいだろう。
ラインシステムと結び方

初心者が扱いやすいことを前提にすれば、ラインはPEの0.8号、2号のリーダー。リーダーの長さは1.5mほどが目安となる。
この太さのラインなら飛距離、フォール速度などエギングに要求されるライン性能を満たしているうえ、PEとリーダーの接続のためのノットを簡単な電車結びにしてもある程度の強度が保てるからだ。
無論、FGノットができるならそれに越したことはない。
またユニノットはリーダーの接続だけでなくエギやルアーをセットするときにも使う基本の結び方として覚えておきたい。
これさえ覚えておけばエギングに必要な結びをまかなえるので、まずは電車結びとユニノットをマスターすることから始めよう。
エギのチョイス

秋のイカはサイズが小さいため警戒心を与えない小型のものを選ぶのがセオリー。シーズン序盤では2号などの小型エギの出番も多い。
カラーについては、エギの操作になれるまでは、オレンジやピンクなどアングラーから見えやすいものを選んで、まずはエギの動きを目で確認しながら操作のイメージをつかむことを優先しよう。
ポイントの選び方
イカのサイズが小さいシーズンの序盤は、漁港の内側など小さなベイトが豊富で、大型の外敵がいない場所、かつイカが身を隠せるストラクチャーが多いところを選ぶ。
イカが成長するにつれ、外敵が少なくなり、大きなエサを獲る必要が出てくるので、シーズン後半は、同じ漁港でも外海に面した潮通しのいいエリアが狙い目となる。
絞り込み

ポイント+変化を意識すれば、さらにイカの居場所を絞り込むことができる。
変化には目で見てわかりやすい、小魚の姿、流れ、日陰などのほか、見えない場所にもカケアガリなどの水深の変化、沈み瀬、藻場、水温などたくさんの要素がある。
この変化が多く重なるほどイカがいる確率も上がってくる。
見た目で変化が少ないところでも、スミ跡が付いているような場所には、何らかの変化の要素が隠されていることも多い。初めての場所など、ポイント探しに迷ったらスミ跡を探してみるのもいいだろう。
効率的なアプローチ
例えば堤防でエギングをする場合、いきなり先端の潮通しのいい場所に入るのではなく、まずは付け根の部分からチェックしてみてはどうだろう。
根元の部分はテトラや地磯など変化に富んだ場所が多いわりには、プレッシャーが少ない穴場であることが多い。
さらに付け根から先端に移動した帰りにもう一度付け根の部分をチェックできるので効率もいい。
闇雲にポイントをランガンするのではなく、時間を有効に使って効率よくポイントを回るのも釣果を伸ばす秘訣なのだ。
釣り方
キャスト

注意すべきは、安全、コントロール、飛距離の3点。
まずは、周りを見て人や障害物がないことを確認してからキャストの動作に入ること。
オーバーヘッドキャストなら、構えたときにロッドのグリップエンドを投げたい方向に向けておくとコントロールがつけやすい。
飛距離を伸ばすためには、力任せにロッドを振るのではなく、ロッドの反発力を利用する。
スイングのとき、右利きなら右手を押し出しながら、グリップエンドを持つ左手を胸の前に引きつけるようにすれば、スイングスピードも上がりロッドのパワーを生かしたキャストができる。
飛距離を出すためのエギの弾道は45度前後が目安。上手くいかないときはスイングのとき右手が見えた位置をリリースポイントの目印にしてみよう。
着水から着底まで

エギが着水したら、ラインが風に煽られないように竿先を下げて水面にラインを置く。同時に、エギとアングラーの間でラインが直線になるように余分な糸フケも回収しておこう。
ラインがまっすぐになったらベールを起こしてオープンにし、ラインを送り込みながらフリーフォールでエギを海底まで落としこむ。
フリーフォールは、早く海底までエギを沈められるだけでなく、誘いを掛ける距離も長くすることができるので確実にマスターしておこう。
フォール中のラインテンションがフッと抜けたら着底の合図になる。
アクション

着底したらエギにアクションを加えてアオリイカを誘う。誘いの基本はシャクリで、強くハッキリとエギがここにあることをアピールすることが重要だ。
シャクリは1度でも構わないが、覚えておきたいのは2段シャクリ。
シャクリの操作を時計でいうところの9〜10時、10〜11時の位置の2段階に分けると、1段目で頭を上げて、2段目で跳ね上げるというようにより楽に大きなアクションを与えることができるからだ。
また、左手をグリップエンドに添え、キャストのときと逆の要領で右手を引きながら左手を押せば、さらに切れのある動きを与えることができる。
フォールとアクションの静と動のメリハリを際立たせることは、誘いを掛けるうえでの重要なポイントになるのだ。
フォール

アクション後のフォールはイカを誘い、さらに抱かせてそのアタリを取るためのもの。そのために覚えておきたいのがカーブフォールだ。
カーブフォールの操作は至って簡単。シャクリ上げたロッドを11時の位置で固定し、糸フケを巻き取ったらそのまま止めてフォールさせるだけでいい。
ラインが張られているので、感度がよく、フォール速度もスローになるためイカにじっくりエギを見せて誘うことができるのが利点だ。
シャクリでのアピールの後、突然動きを止めて静かに沈んでいくエギの動きは、イカにとっては大変魅力的なようで、バイトはこのタイミングに集中する。
また、フォール中にエギが不自然な動きをすると、イカが警戒してエギを抱くのを止めてしまうので、フォールを始めたら自然な姿勢をキープしたままで沈めることが大切だ。
そのため、フォール中にロッドを不用意に動かすのはよくない。ただし、風などの影響でラインが引っ張られ、エギが不自然な動きをしてしまう場合はこの限りではない。
こんなときは単純にロッドを動かさないようにするのではなく、ロッドティップを下げて風の影響を最小限に抑えるような操作も必要になる。
フォール中はなにもしないのではなく、自然にエギがフォールするような状態をアングラーが積極的に作り出すことが重要なのだ。
アタリ

竿先に直接伝わるアタリも多いが、ラインでアタリが取れるようになると釣果が飛躍的に伸ばせる。
パターンとして最も多いのは、カーブフォール中のラインテンションが一瞬抜けた後、ラインが引っ張られるもの。
フォール中はラインの動きに集中し違和感があればロッドを立ててイカが抱いていないか確認してみるといいだろう。
サイトフィッシング

日中は、エギやイカの動きを確認できるのでエギングのイメージをつかむために役立つ要素が満載だ。
どんなアクションでイカがエギに寄ってきて、どんなときに襲いかかったり離れたりするのかを知っておけば、操作ひとつひとつが意味を持ち、夜間や深場といった見えない場所でのゲームでも集中力を切らさず楽しめるのだ。
サイトフィッシングに限らず、エギが見える位置まできたら、イカが追ってきていないかを確認しよう。
さらに、ピックアップの直前、2、3mのところでもエギを止めて確認してみるといい。
ついてきたイカが、エギを止めた途端に抱きつくことは珍しくなく、警戒して距離をおいてホバリングしている場合でもフォールなどのアクションで誘ってバイトに持ち込めることも多いのだ。