シーバスの種類と概要
シーバス(スズキ)

一般的にシーバスと呼ばれるものはこのスズキ(マルスズキ)のことを指します。日本での最大記録は2006年に釣り上げられた、126㎝13.14kg(大分県堅田川)。
ルアー釣りでは、内水面のブラックバス釣り(バス釣り)に対して、シーバス釣りと呼んでいます。
マルスズキとは、ヒラスズキに対しての俗称。学名のjaponicusでもわかるように、スズキとヒラスズキは日本近海に生息する固有種です。
スズキは沖縄県と一部を除く日本近海、および朝鮮半島から南シナ海まで確認されています。
シーズンにより、磯から港湾部、河川域と幅広く分布します。特に春から秋はエサを求めて汽水域に集まりやすく、淡水域となる上流まで遡ってきます。釣りの豪快さに比べて繊細な性質をしています。
タイリクスズキ

本来は日本には生息していなかった種で、スズキよりも大きく成長します。日本での最大記録は134㎝ 19.15㎏(大分県番匠川)。
養殖のために中国から輸入されたもので、渤海・黄海・東シナ海・南シナ海の中国大陸沿岸部と朝鮮半島西岸に分布しています。
現在日本に生息しているタイリクスズキは、養殖場から逃げ出した個体が野生化したもの。生命力が強く生態系を壊す存在として「要注意外来生物」に指定されています。
黒色斑が特徴でスズキと見分けられるが、幼魚時にはスズキにも斑点が出ている個体が多いです。
大きな違いは黒色斑の大きさと位置ですが、タイリクスズキは成長と共に黒色斑が消える個体もあるので、ひと目では見分けがつきにくいです。
スズキよりも淡水志向が強く、汽水域から河川がメインの生息エリアとなります。

ヒラスズキ

主に岩礁帯を好んで生息するため、地磯や沖磯でのターゲットになります。他のスズキに比べて体高があり、食味は一番良いとされます。日本記録は100.5㎝10.9㎏(千葉県勝浦)。
釣趣もバツグンで、引きの強さでアングラーを魅了する。スズキの中では一番テクニックが要求されるターゲットです。
その他のスズキ
この3種の他に、スズキとタイリクスズキの中間的な存在といわれる有明海に生息するスズキや、交雑種のハイブリッドスズキなど話題になりましたが、研究がそれほど進んでおらず、学術的に解明されていないことが多いです。

漁獲量(例)

スズキといえば、一昔前までは高級魚として取り扱われていましたが、現在では大衆魚となっています。しかし、ヒラスズキの流通量は少なく、今でも料亭などで重宝されています。
近年は養殖も進みスーパーなどでも見かけるようになりました。年によって漁獲量は異なりますが、上位県の参考はグラフの通り。
3種を区別した資料はないですが、ほとんどがスズキと考えて良いでしょう。
併せてスズキが好んで食べるベイトの漁獲量も参考として見てみましょう。遠洋漁業も含まれるのでイワシ類は参考にならないですが、ベイトとの関係が伺えます。
また、資料にないものでは、特にアユが多く遡上・産卵する河川がある地域では、シーバスの生息数が多いことも伺えるようです。
各地域に生息するベイトにより、各地域での釣り方が存在している所以です。
食性

魚はもちろん、環虫類やカニ・エビなどの甲殻類も好む動物食性。釣りでは「フィッシュイーター」と呼ばれ、ゲーム性が高い釣魚として好まれています。
季節やその場所の特徴により、魚を好んだりムシ類のみを食べていたりするため、その時にシーバスが主に食べているエサ(ルアー)を使わないと釣れないことも多く、グルメ志向が強い魚だと認識されています。
これを基にルアー釣りでは、アユパターンなど「○○パターン」と称して、季節ごとのシーバスを攻略するため、ベイトに似せたルアーが販売されています。
しかし、当のシーバスは捕食が下手な魚といわれており、狙った魚を食べ損ねることも多いようです。このことを証明するかのように、ルアー釣りでもアタリはあるが釣れないことがよくあります。

ハンターとしての腕がいまいちのシーバスは、ラクしてお腹いっぱいに食べられる状況を見つけようとします。その代表的なのが、沿岸に生息するカタクチイワシの群れを追うように移動する行動です。
しかし、一年中イワシを追っているわけではなく、季節によりアユ、コノシロ、アミ、イソメ類など、エサとなる動物類が集まる季節や場所には、高い確率でシーバスも集まってくるようです。
魚類がメインディッシュで、甲殻類やムシ類がおかずと考えればよいでしょう。
そして、このシーバスが集まる場所を効率よく狙うのが、ルアー釣りの鉄則です。季節ごとのベイトの動き、そしてシーバスの食性を考え、効率の良いポイント選びとルアー選択を心がけましょう。
捕食方法

シーバスは捕食がヘタだと前述しましたが、これは大型化するにつれて顕著に表れてきます。30くらいまでは河口域や港湾部など堤防の際でも確認でき、俊敏にエサを追っている姿が見られます。
動きも速く小さなエサでも効率的に捕食できているようです。
しかし成長して大きくなるにつれ、ゆったりとした泳ぎにかわり、体力を温存しながら優々と泳いでいる姿を見ることができます。
特に70㎝を超えるとその差がはっきりと現れるので、比較的60㎝クラスまでがルアーで多く釣れるのはこれが原因かもしれません。
成長速度

エサが豊富なエリアに生息する個体と少ないエリアでは大きく成長速度が異なり、その差は2〜3年で20ほども違ってきます。
もうひとつ大きく関係しているのが水温。水温変化が激しい場所では、捕食のための行動時間が限られてしまうため、成長速度も息継ぎ気味になってしまいます。
年間を通して安定した水温の場所では豊富な海洋生物が育ち、エサとなる小魚類も多いため安定して成長します。
アングラーにより対照魚別に目標とするサイズを設定しますが、シーバスの場合は一般的に80が目標ラインとなっており、これ以上の大きさをランカーサイズと呼んでいます。
このサイズになるまでには少なくとも8〜20年はかかり、危険察知能力も経験を積んで高くなっています。
産卵
シーバスの産卵は日本列島の各地で誤差があり、早い地域は10月ごろから、遅い地域でも1月ごろには始まり、2〜3か月の間に行われます。
これは水温に関係しており、夏からの高水温が下がりはじめ、14〜15度になると産卵行動を開始します。夕方ごろにピークを迎え、特に風が強い日に行われます。
産卵前の荒食い行動がウソのように止まると産卵が始まった合図です。ただし個体によってバラツキがあるため、荒食いのシーズンは1か月ほど続くことが多いです。
これが落ちアユやサヨリ、コノシロパターンと重なる時期です。

河川など沿岸で荒食いした後、シーバスは沿岸の深場へと移動して産卵をはじめます。
海藻などに産み付けるのではなく泳ぎながら行われ、メスが放卵した後、オスが追尾しながら放精し、その後卵は分離して浮遊します。
受精した卵は4〜5日で孵化しますが、2〜3か月は深場を浮遊して過ごします。
14前後になると接岸し、河川や藻場で動物プランクトンや甲殻類、ムシ類を食べながら成長し、その年の冬には20ほどにまで成長します。そのまま河川には入らず海水域で過ごす個体もいます。
そして40ほど(3歳魚)に成長すると、親となりさらに子孫を残せるようになります。ランカーサイズまでは遠い道のりです。
シーバスのサイズ


上の写真を見て分かるように、サイズによって少し風貌が変わってきます。
シーバスの幼魚を「マダカ」と呼ぶ地域がありますが、これは「スズキと呼べるサイズになるのはまだか」という意味があるらしいです。そのくらいランカーサイズまでには年数を要するということでしょう。
特徴として70㎝を超えると身体の割りに尾ビレが小さいのがわかります。70㎝クラスまでは活発にベイトを追いますが、それ以上になるとハンティングは知能的に行われていると思われます。
大型を狙う場合、スローリトリーブや明暗部が有効などと言われるのもこのためです。
それと釣趣で一番違ってくるのが重量。腹を空かせたシーバスよりも、ベイトをたくさん食べて丸まると太ったシーバスの方がはるかにパワーがあり、ヒットしてもワンサイズ間違えるほどです。
狙ってサイズを釣り分けることは不可能ですが、ランカーを釣り上げる法則は生態的にも存在します。