アタリを伝え、ルアーを操作し、大物とのファイトを助け、ときには釣り人が何もしなくても魚にハリが掛かっているなど、釣りにおいて釣果に直結してくるロッド。
数千円程度の安いものから、数十万円する高級ロッドまで幅広く存在しています。それだけに釣りをあまり知らない人は「高いロッドほど釣れるのでは!?」と考えてしまいます。
この問題、釣りを知れば知るほど、「間違いともいえないのですが、正しいと言い切ることもできない」ということがわかってきます。
なんとももどかしい「ロッドの値段の差」について解説します。
グラスロッドとカーボンロッド

値段の差を解説する前に、まずはグラスファイバーとカーボンという2つの素材について解説します。
現環境において釣り竿は、カーボンロッドがメインとなっています。例外として一部の釣種ではグラスファイバーの良さが光ることもありますが、大抵はカーボンロッドに利点が多くあります。
ただし、カーボン素材だけではなく、グラス素材と合わせて作られたロッドも多く売られています。
硬く丈夫で、カーボン量を調整することでいろいろな味付けができ、さまざまな釣りに合わせることもできるのが利点。感度も非常に高いです。

ではグラスファイバーはどうなのかといえば、まずはカーボンに比べて安価な点が挙げられます。
釣具店の激安ロッド、100円ショップが販売しているロッド、ネットで販売されている数千円程度の入門者ロッド。その大半はグラスファイバーが主体です。
感覚では「廉価=壊れやすい」というイメージがありますが、一概にそうともいえません。なぜなら、素材の能力だけでいえばグラスファイバーのほうが破損率は低いのです。
ただ、感度が求められるシーンが多く、アクションが付けやすいため多くの釣り方に有利となるため、必然的にカーボンロッドが主力となるのです。
なので以降は主にカーボンロッドにクローズアップしていきます。
エントリーモデル、入門モデルは釣れるのか?

結論からいえば、誰も聞いたこともないようなメーカーでなければ、全く問題なく釣れます。
釣りを全く知らない人が、ハイエンドとエントリーモデルを交互に使ったとしても、「ハイエンドのほうが使いやすい!」と思うことがあっても、肝心の釣果はそれほど変わらないでしょう。
釣果に差が出るとすれば、その釣りに合っていないロッドを使った場合です。極端な話をすれば5mクラスの高級磯竿で1gアンダーのジグ単を使うアジングをしようとしても釣りになりません。
なので、アジングならアジングロッド。シーバスならシーバスロッドを使うこと。そしてシマノやダイワ、オリムピック、がまかつ、テイルウォークなど信頼のおけるメーカーのものを購入することです。
この前提で1番安いロッドを買ったとしても、まず間違いなく釣れますし、最初のうちは劇的な違いがあるわけではありません。
だからといって玄人が高いロッドを使えば、全く違う釣果になるかといえば、それも若干違います。ベテランでも1万円台のロッドを愛用することは珍しいことではありません。

「じゃあぼったくりじゃないか!!」と思われた人もいるかもしれませんが、そうでもありません。値段が高い理由はちゃんとあるのです。
では、わかりやすく解説するために、人気が高く、上位機種の変化も分かりやすい、ダイワのアジングロッドにクローズアップしてみましょう。
他の釣種、他のメーカーでも似たような部分が違いとして挙げられるので、あくまで参考程度にみていただければと思います。
さて、ダイワの場合、アジングロッドはパックロッドを除くと以下のモデルがリリースされています。
アジングX:11,500〜12,500円
月下美人AJING:15,500〜18,000円
月下美人MX アジング:26,900〜33,400円
月下美人AIR AGS AJING:42,000〜46,500円
この上位機種に「月下美人EX」があるのですが、ロッドのコンセプトがアジング、メバリングの複合となり、趣旨から若干ズレるので今回は除外します。

カーボンの素材の違い

まず挙げられる違いがカーボン素材の違いです。
例えばアジングXは「ブレーディングX」というカーボンテープをX字状で締め上げる方法を採用しています。低コストのままネジレを抑えてくれます。
それに対して月下美人シリーズになると「HVF」というレジン量を減らした素材に変わり、粘りや強度がさらにアップ。
MXでは「HVF」が「HVFナノプラス」に進化し、東レ(株)のナノアロイ®テクノロジーを組み合わせ、さらに高強度、軽量化を果たします。
そしてハイエンドのAIR AGSになると「X45」というカーボン素材を45°斜行したブランクスに成長。さらにパワーや操作性、感度が上がります。
ジョイント部もVジョイントによって、従来の継ぎ竿では成し得なかった合わせ部のひずみ・突っ張り・パワーロスを極限まで追放してくれます。
以上のように、多くの場合は価格が上がるごとに、上質でその釣りに合った最新素材が使われています。これは他のロッドメーカーにもいえることで、ロッドの価格差の大半はこの理由です。
ロッド重量の違い

上記のカーボン素材の違いに付随する項目ですが、ロッド重量の違いもまた変わってきます。大抵の場合はランクが上がるごとにロッドは軽量になっていきます。
ロッドが軽量になると、感度が上がったり、ロッド操作がしやすく疲れにくくなると良いことづくしなのですが、一つ注意点があります。
ロッド重量が変わるとリールとの重量差によるタックルバランスの崩壊する可能性があります。
分かりやすいように少し極端な例をいうと、ロッドをエントリークラスにし、リールをハイエンドの軽量モデルにするとします。
その場合、ロッドには最先端技術が使われておらず、ある程度の重量があるのに対して、リールは軽量化がされていることになり、先重りしてしまう可能性が出てきます。

これはアジングに関わらず、他の釣りでも操作に重たさが生じてきます。もちろん、先重りがさほど気にならないアングラーはそこまで神経質にならなくても良いでしょう。
メーカーがロッドのテストをする場合、同じクラスつまり同じ価格帯のリールを使用するケースが多いです。
なので、ロッドを選ぶ際に、同じ価格帯のリールを組み合わせると、タックルバランスが合うことが多いです。
その他のこだわりポイントの違い

ロッドには他にもメーカーがこだわれるポイントが多いです。
例に挙げた月下美人シリーズでいうと「エアガイドシステム」というカーボン素材を使用したガイド。
「エアセンサーシート」というリールシートを変更することによって軽量化と高強度、高感度を実現する方法などがあります。
この他にも細かな違いが多々あり、釣種に合わせた味付けが各メーカーで行われています。
まとめ

今この瞬間も、釣具メーカーは、より良いロッドを作るために最新技術を研究しています。
その最新技術にかかる研究費用は決して馬鹿にはできないですし、よりよい技術を使えば素材自体の代金も上がります。それがロッドの価格の差として現れるわけです。
しかし安いロッドも決して捨てたものではなく、数世代前に高性能と呼ばれた技術が、エントリーモデルに採用されることもあります。
自分の財布と相談しながら、最適なロッドをチョイスしましょう。