メカ音痴の人にとってはつらい話になるかもしれないが、ギヤ比はリールの購入時はもちろん、メンテナンスにも関わる話なのでぜひとも理解してほしい。簡潔に話を進めていこう。
歯車の仕組みの基本

リールの説明をする前に、まずはギヤ(歯車)の仕組みを簡単に説明しよう。
上の図①は、基本となるギヤのイラスト。歯車Aにはハンドルが付いているので、ハンドルを1回転させると歯車も1回転する。一般的な巻き取り装置などに使われており、ギヤ比でいうなら1:1となる。
真ん中と下のイラストは、ハンドルの付いた歯車Aに、それよりも大きな歯車を付けたもの。図のように直径が大きくなるほど歯車Bの回転は少なくなる。
これは変速機付き自転車をイメージすれば分かりやすいだろう。歯車Bが大きくなるほどハンドルを小さな力で回すことができる。
リールでいうところの、パワーギヤになり、大物を釣り上げるのに適している。
自転車を例にさらに詳しく解説

変速機付き自転車を運転したことはあるだろうか? 傾斜のきつい上り坂を登る場合や、スピードを出して運転したい場合などではギヤチェンジを行っていたはずだ。
最初の漕ぎ出しでは、平均的な3速を使う。ペダル側ギヤと後輪側ギヤの比率がほぼ同じなので1:1となり、スムーズに自転車を始動することができる。
そしてスピードが出るに従ってペダルの回転を少なくて済むように、ギヤを2速→1速と重くして、ペダルはゆっくりと、後輪は速く回すように操作する。これがハイギヤ設定。
次に、上り坂に差し掛かると、3速だったギヤを4速→5速→6速の順に変速する。すると、スピードは落ちるがペダルを踏み込む力は少なくて済むようになる。これがローギヤ設定。
リールにはこの変速機がついていないから、ギヤチェンジをすることはできないため、ハイギヤ・普通ギヤ・ローギヤ(パワーギヤ)設定に分かれている。
ハイギヤの仕組み

次に図②。図①とは逆にハンドルが付いた歯車の方が大きくなっている。いわゆるハイギヤタイプの原理。
大きな歯車で小さな歯車を回すのだから、当然ハンドルが1回転する間に小さな歯車はより多く回るようになる。
イラストは大小二つの歯車であるが、これだとハンドルを回す力が多く必要になるため、歯車をいくつか組み合わせて実際に必要な力を小さく保つ構造が使用されることが多い。
またハンドル長にも注目してほしい。ハンドルが短い場合は小さな円を回すのだから腕の動きは小さくてよいが、その分力が必要になる(平たく言うと小径ハンドルほど回しにくい)。
ハンドルが長い場合は、小径に比べて回しやすく細かな操作も行いやすい。ジギングのパワーハンドルなどに採用されている仕組みだ。
ハンドル長については回しやすいかどうかの問題で、ギヤ比に影響はない。
リールのギヤ比の表示の意味は、1:5と表記されている場合、ハンドル1回転につきリールスプールが5回転するという意味となる。
リールのギヤ

前述したとおり、ここまで分かりやすいように歯車のイラストを簡素化して説明したが、実際のリールの構造はもっと複雑で、スピニングリールと両軸(ベイト)リールの作りも違っている。
上の図はリールの展開図を簡素化したものであるが、全てのリールが同じギヤの種類かというと、そうではない。メーカーにより、また機種により違うものが使われていることもある。
最近のリールはメンテナンスフリーのため気軽に分解できない仕組みになっているし、分解メンテする必要はなくなっているので、ギヤを目にする機会はほとんどないだろう。
またリールのギヤが壊れたなどということもあまり聞かないほど剛性も高い。とはいうものの、精密さは上がっているので、間違った使い方をするとあっけなく破損させてしまうこともあるようだ。
特に根掛かりした場合など、スプールを手で押さえずに力任せにリールを引っ張ると壊れる原因となりやすいから注意。
スピニングリールのギヤ



主要なギヤは二つ。リールフットから見て縦にハンドルを回した力を、ウォームギヤを使って横回転(スプール)に変換する。スプールは回転せず、ローターを回してラインを巻き取る仕組み。
一番左の写真はスプールを上下に動かすためのギヤ。
ベイトキャスティングリールのギヤ



同様に主要なギヤは二つ。ハンドルと一緒に回る大きなギヤとスプールを回す小さなギヤ。写真のリールのギヤ比は7.1。歯車のイラストで説明したものと同様の構造で力が伝わりやすい。
一番左の写真はレベルワインダーを動かすための別のギヤ。