夏が近づくと毎年恒例の梅雨がやってくる。およそ1カ月半にわたり雨が降りやすい状態が続くのだ。
梅雨といえば世間一般では、ジメジメ、憂鬱などネガティブなイメージが強く、この季節が好きだと言う人はそう多くない。
しかし、釣り人の中には、梅雨になると活性が上がる、まるでカエルのような人もいる。釣りでは雨がメリットとなることがあるからだ。
雨のメリットは多い

人的プレッシャーの低下
普段は釣り人でごった返すような人気釣り場でも雨が降るとさすがに人は少なくなる。
いつもより釣り人が与える魚に対するプレッシャーが減るので、魚の警戒心は下がりエサやルアーに食いつきやすくなる。また単純に競争相手が少ないため、釣り場を独占できるというのも強みだ。
雨が魚の警戒心を解く
雨が水面に落ちる音によって、仕掛けの着水音がかき消され、また水面に発生する波紋が水中の魚の視界を遮って釣り人を見えにくくさせる。
雨によってもたらされる濁りもエサやルアーの存在をカモフラージュしてくれるので安心して食いつく。

気圧の低下で魚が浮く
気圧が下がることにより、水面を抑えていた圧力も弱まり魚が動きやすくなることと、同時に小魚やプランクトンも動きやすくなり、さらにそれを追って活性が高まることが考えられる。
このように、雨による釣りへのメリットは多い。雨に濡れるのがイヤだからと敬遠してばかりでは、恩恵を受けることはないので、雨天を楽しむために快適に過ごす方法を考えてみよう。
レインウエアの選び方

一口にレインウエアと言っても、釣り具メーカーのものだけではなく、登山・トレッキング用のアウトドアメーカーのもの、屋外作業・通勤・通学用としてホームセンターやコンビニで販売されているものなど、さまざまな種類の商品がある。
価格も安いものでは数百円から、最上級モデルでは10万円を超すものもあり、どれを選べばいいのか迷う人もいるだろう。
レインウエアの性能の高さと価格は比例する。高価なものを買えばそれなりの性能が見込めるが、年に一、二度しか着用しない人に10万円のウエアはもったいない。
逆に磯に何日も瀬泊まりするような猛者にコンビニのビニール製レインコートはすすめられない。
釣行頻度や釣り場に合わせて最適な性能のレインウエアを選ぶことで、コストパフォーマンスを最大限に高められるはずだ。
レインウエアのタイプ

大きく分けるとセパレートタイプ、コートタイプ、ポンチョタイプの3種類。
セパレートタイプは上下に分かれた一般的なもので「レインウエア」または「レインスーツ」と記載されていることが多い。
防寒性能を併せ持つものもあり、上着だけをウインドブレーカー代わりに使ったりと状況に合わせて使い分けられる。
コートタイプはいわゆるカッパで、読んで字のごとくコートのように羽織るレインウエア。ポンチョタイプはマントのように上からすっぽりとかぶるタイプだ。
このうち、コートタイプとポンチョタイプは簡易的なものなので、長時間釣りに使うならセパレートタイプ一択だろう。
レインウエアの性能
性能と価格は比例すると書いたが、レインウエアの「性能」とは一体何だろうか。自分に合ったウエアを選ぶために確認しておきたい性能と数値を覚えておこう。
まずは、レインウエアの性能を左右する数値が「耐水圧」と「透湿度」だ。
耐水圧

「耐水圧」とは、水が生地に染み込むのをどれだけ防げるかというのを数値にしたもので、レインウエアの防水性能を表す。
この数値が高ければ高いほど防水性能が高いわけだが、具体例を挙げると、生地の上に1㎝四方の長い筒を置いてその中に水を入れたとき、生地の裏側に染みるまでどれぐらいの量を入れられるかが耐水圧の数値になる。
つまり耐水圧5000㎜であれば、5000㎜(=5m)までの高さの水に耐えられることになる。
一般的な耐水圧の目安は次のようになっている。
20000㎜:嵐
10000㎜: 大雨
2000㎜: 中雨
300㎜: 小雨
耐水圧5000㎜のウエアを着用していた場合、中雨(2000㎜)であればしのげるが、大雨(10000㎜)になると内側に水が染み込んでくる計算だ。
ちなみに傘の耐水圧は250〜500㎜程度、コンビニやホームセンターなどで販売されている一般的なレインコートの耐水圧は500〜1000㎜だが、釣り用や登山用、作業用のウエアはその何倍、何十倍もの数値が設定されている。
通勤・通学用レインコートは、雨が降る場所に座ったりひざまずくことは想定されていないが、釣りや登山ではどうしても地面と接する機会が発生しやすいからだ。
たとえば体重75㎏の人が座ると、尻の接地面に約0.2㎏/㎝²の圧力が掛かる。同様にひざまずくと、膝の接地面に約1.1㎏/㎝²の圧力が掛かる。
それぞれを耐水圧に換算すると2000㎜、11000㎜になるので、耐水圧10000㎜のウエアを着用していたとすると座っても水が染みることはないが、跪いて作業していると徐々に染みてくることになる。
したがって、岩をよじ登って移動を繰り返すような釣りには力不足といえる。
透湿度

「透湿度」とは、24時間でウエアの生地1平方mあたり何gの水分を透過できるかを表す数値である。
たとえば透湿度10000g/㎡/24hの性能であれば、24時間で1平方mあたり10000g(10㎏)の水分を外に放出できるということ。
数値が高ければ高いほど水蒸気を外に放出し、ウエア内部のムレやベタツキを防ぐことができる。
数字を見てもあまりピンとこないが、ムレにくいのは最低でも透湿度5000g/㎡/24h以上、さらにベタツキを防ぐには10000g/㎡/24h以上は必要だ。
レインウエアの素材
防水性能や透湿度の差は素材による違いが大きい。いわゆるカッパ・レインコートはPVC(ポリ塩化ビニール)製のため防水性は高いものの透湿性はほとんどない。
透湿性を求めるなら防水透湿性素材を使用したものを選ばなくてはならない。最も有名なのはゴアテックスだろう。ハイエンドのウエアにはほぼ採用されていると言っても過言ではない。
他にもディアプレックス、エントラント、ドライテックなど多くの種類がある。
同じ素材でも構造によって性能は異なるため、どの素材がベストと一概には言えない。実際に数値を確かめて比較する必要がある。
ゴアテックスとは?

アメリカのW.L.ゴア&アソシエイツ社が生み出した防水透湿性素材の一種で、非常に高い防水性と透湿性を持つ。
機能の要となるゴアテックス・メンブレンという生地は1㎝2に14億個以上もの孔(あな)があり、その孔が外部の水をシャットアウトしながらも水蒸気を外に逃がす性質を持っている。
なお、このゴアテックス生地を他の素材と組み合わせて2層や3層にすることで性能を高めているため、同じゴアテックスの名前が付いていても性能が異なる場合がある。
レインウエアの機能
レインウエアにはさまざまな機能がある。主要なチェックポイントを挙げてみたので、自分の釣行にどの機能が必要か把握しよう。
快適に釣りをするため、止水ファスナーやベンチレーションの有無は必ずチェックしよう。
フード

襟の中に収納できるものとボタンやジッパーで取り外しできるタイプがある。使用感にはさほど影響しないので好みで選んで構わない。
水の浸入を防ぐためにほとんどの製品にサイズ調節ができるドローコードが付いている。できれば実際に触って調節のしやすさを確かめてほしい。
収納・ポケット
登山用やバイク用のレインウエアの中には、防水性を高めるためにポケットの数が少ない製品もある。雨が降る中でタックルケースの空け閉めはなるべく避けたいので、最低限の消耗品やカッターなどを入れられるポケットがあると便利だ。
動きやすさ
ずっと同じ位置で釣り続けるようなら問題ないが、地磯を歩いたりランガンするような場合は、ある程度の動きやすさが要求される。ストレッチ性に優れたものを選択しよう。
ベンチレーション

脇やポケットにベンチレーション(通気口)を確保して、ウエア内部の蒸れを防ぐ機能である。素材の透湿性は重要だが、性能が高いほど価格も跳ね上がる。
ベンチレーションがあれば手っ取り早く内部の熱を放出できるのですぐにその効果が体感できる。
ファスナー

水が浸入しにくい仕組みになっている止水ファスナーを採用していることが重要。通常のファスナーでは隙間から雨が染み込んでくるし、ラインが引っ掛かりやすいのでおすすめできない。
袖口

ゴムが入っているものとマジックテープで調節できるタイプがある。キャスト時に腕を上げることも多いので、防水性の高い二重袖構造のものがおすすめだ。
裾
ボタンやファスナー、マジックテープなどで裾を足首で止めてしっかりフィットでき、磯靴なども上からカバーできる。必須機能なので、ほとんどのレインウエアには付いている。
裏地

いくら透湿性のある素材でも長時間素肌に直接触れているとベタつきやすくなる。裏地がメッシュになっていればサラリとした感触が続くので不快感も少ない。
自分の釣りに合わせて選ぶ
防水性と透湿性、機能を確認し、もちろんデザインやカラーにもこだわりたいところだ。サイズに関しては、動きにくくなるのは致命的なので、小さすぎるよりは多少大きめのものが良い。
できれば実際に釣具店の店頭で着用して着心地を確かめてから購入しよう。