ルアー釣りの進化を支えているのがPEライン。メインラインとして不動の地位にあることは誰しもが認めるところです。それだけ多くの釣り人が愛用するようになってきたこともあり、格安のPEラインも発売されていますが、安ければよいというものではありません。各社が釣りやすさを追求したラインの中から、自分の釣りに合った商品を選ぶことが大切です。
ゲル紡糸(ゲル延伸)とは
高分子量のポリエチレンなどを高温で溶媒中に溶かし、その溶液から紡糸や急冷などによって固まったゲル状物質をつくった後、高倍率に延伸して材料を得る加工法です。1980年代オランダで発明。この画期的な技術発明の恩恵を受けスーパー繊維(高分子量のポリエチレン)ができました。
東洋紡の原糸
東洋紡は1984年にオランダのDSM社(Royal DSM N.V)と高機能ポリエチレン繊維の共同研究を開始し、1991年に製造合弁会社である日本ダイニーマ㈱を設立。同社では高機能ポリエチレン繊維の生産を手掛け、国内ではダイニーマ®(現イザナス®)の商標で東洋紡が販売。その後、釣り糸、船舶係留ロープ、安全手袋、ネット、特殊産業資材等に用途は広がっています。
PEラインの太さ標準規格
- PE糸の太さ標準規格は、表の数値を標準値とします。
- この規格は、PE100%糸のものであり、コーティング・顔料を含むトータルデニールです。
- PE糸の太さ標準規格は、単位のデニール(d)表示を使用し、1号=200dとします。
- PE糸の許容範囲は、上限・下限のデニールが、前後の号柄の標準値を追い越さないものとします。
- d(denier)とは、長さ9000m当たりの質量をグラム単位をもって表したものです。(200d=200g)
号数(号) | 標準値(d) |
---|---|
0.1 | 20 |
0.15 | 30 |
0.2 | 40 |
0.25 | 50 |
0.3 | 60 |
0.35 | 70 |
0.4 | 80 |
0.5 | 100 |
0.6 | 120 |
0.7 | 140 |
0.8 | 160 |
1 | 200 |
1.2 | 240 |
1.5 | 300 |
号数(号) | 標準値(d) |
---|---|
1.7 | 340 |
2 | 400 |
2.5 | 500 |
3 | 600 |
4 | 800 |
5 | 1000 |
6 | 1200 |
8 | 1600 |
10 | 2000 |
12 | 2400 |
15 | 3000 |
20 | 4000 |
25 | 5000 |
30 | 6000 |
PEラインにはどうしてリーダーが必須なのか?
PEラインは耐摩耗性が低く結束強度が弱いという点から、海底の根や魚のヒレや歯などに擦れて切れたり、強い力が加わると結び目が解けたりという弱点から、それらに強いフロロカーボンラインをPEラインの先端にセットして補っています。
逆に、メインラインをフロロカーボンラインにすればいいということになりますが、強度、感度において、釣り用ラインの中でPEラインが優れているから、メインラインはPEラインが適しているため使用しているということになります。
PEラインの進化

今回のメインテーマである「PEライン」ですが、技術の進歩により、「コーティング技術」と「芯加工技術」という2点が大きな躍進でしょう。このことにより、扱いには慣れが必要だったPEラインは、初めてでもトラブルが少ないラインへと成長しました。
リールスプールに巻かれるラインは、巻きグセが付かないように適度にソフトなものが向いています。しかし、コシがなく柔らか過ぎるとガイド絡みなどのトラブルが多くなります。また、ラインが柔らか過ぎるとラインを巻き取る際のテンションが緩く、キャスト時に一気に放出されるバックラッシュが起きやすくなります。
しかし、リールがPEライン使用を考えて作られるようになってからは、トラブルが激減していることはいうまでもないでしょう。つまりリールやロッドガイドの性能向上があるからこそ、PEラインも同時にさまざまな加工品が作れるようになったといっても過言ではないでしょう。
PEラインの原糸
どの素材のラインでも、原糸というものがあり、PEラインの原糸(ゲルスパンポリエチレン・超高分子量ポリエチレン・Ultra High Molecular Weight Polyethylene)を提供している企業も多くありません。日本国内での原糸提供企業は東洋紡とDSM社のみです。ちなみにアメリカではハネウェル社のスペクトラファイバーがシマノ/パワープロシリーズに使用されています。

原糸の作り方は、超高分子量ポリエチレンから直径12マイクロメートルの繊維(フィラメント)を作る。この細い繊維を何十本も束ねて作ると「原糸」ができあがる。原糸の太さについては、繊維を束ねる量で調整している。だから、どのPEラインも元はどれも同じ繊維からできているのです。
PEラインの種類大別
マルチフィラメント
真っ先に思い浮かぶのが、4本撚り、8本撚り、12本撚りなどマルチフィラメントだろう。ほとんどの商品はこれで、染色やコーティングなどの付加価値を加えて釣り方別により使いやすいように開発されています。また、撚り方の密度などでもライン自体のコシを変えることもできるようです。
撚らないライン
次に撚っていないライン。バークレイのスーパーファイヤーラインや、デュエルのアーマードプロがそれにあたります。
スーパーファイヤーラインは、ダイニーマ素材をマイクロフューズド製法により熱をかけて延伸しバークレイ独自の特殊コーティングが施されたもの。

アーマードプロは、原糸を特殊ポリエチレン樹脂の中に綴じ込め、さらにFMF加工により中心部に至るまで特殊ポリエチレン樹脂を浸透させたもの。表面だけをコーティングしたラインとは異なるものです。

芯入りライン
ライン自体の重量やコシ、比重を調整するため、ラインの真ん中に別素材のラインなどを入れてブレイドしたライン。
ルアー釣りではあまり聞き慣れないかもしれませんが、エギングやウキフカセ釣り用のラインアップがあります。特にナイロンラインが主体だったウキフカセ釣りでは、ウキが沈む前にラインでアタリが取れることもあり、徐々に愛用者が増えています。


PEラインの太さ
モノフィラメントラインの太さについては、日本釣用品工業会で定められています。しかしPEラインは号数表示が多いものの、太さではなく重量で基準値が定められています。原糸が同じなので太さも同じように思われますが、実際には染色やコーティング、芯入りや他の素材を混ぜるなど加工されるため、太さでいうとモノフィラメントラインより各社の基準はまちまちです。だから号数表示は目安として捉えておいた方がよいでしょう。特に加工されているものについては太くなる傾向にあるので、200m巻けるスプールに190mしか巻けなかったなどあるから下巻きするときには要注意です。

ロープで例えると……
PEラインは一般的なロープと同じ撚り糸と呼ばれるものです。ロープの仕組みを見ると、PEラインの仕組みもより分かりやすくなります。


右は一般的な白いナイロンロープで「3つ打」と呼ばれる3本撚りのもの。左は直径5㎜のロープでポリエチレンだけだと固くてクセが付きやすいということからナイロンを織り交ぜたものです。こちらも「3つ打」。


こうやってロープの撚りを解くと、三つのロープからできていることがわかります。そのロープも細い糸からなっています。PEの編み本数はこの段階での本数ということになりますので四つ編みなら4本のということになります。


三つにわかれた糸も、さらに分解するともっと細い糸にバラけます。どんどん解いていくと更に細い糸が……。そして最終的に現れた極細糸が原糸ということになります。PEも同じ仕組みで作られています。

左からポリエチレンライン、それに巻かれていたナイロンライン、ナイロンロープのライン。ナイロンライン自体はどちらも原糸の太さは同程度です。元の太さが同じだから、束ねる量を調整して太さを変更し強度を上げるわけです。また、違う素材を混ぜることで、特性の違う糸を作ることもできます。
格安PEラインと粗悪品
値段が安い=品質が悪いというわけではありません。単純に企業努力でコストが下げられ、販売価格が抑えられているものも多くあります。しかしそれは日本の有名メーカー品での話です。
製造元がよく分からないような商品には、一部日本の基準には合わないものがあります。特に太さがそれで、日本製のものと比べると見た目にも太い商品がたまにあります。例えば、0.6号を購入したが1号ほどの太さの場合もあるということもある。太いラインならちょっと号数が太くてもそれほど問題ではないのですが、0.4号を使いたいのに実際は1号の太さとなると使いものにならないので購入する際は注意が必要です。ただし粗悪な原糸というのはあまり考えられないので、太さ分の強度はちゃんと保たれている商品が多いようです。
そして重要なのが粗悪品と呼ばれる類。商品そのものが悪いのではありませんが、製造技術が低い工場で作られたものです。そういった商品はどんな素材のラインでも均一さに欠けているものが多いです。太さだったり編み方だったりしますが、そんなラインは力を加えると細く(弱く)なっているところから切れてしまうから、いつどこで切れるか分からないため使っていても不安がつきまといます。
やはり、名のあるメーカーを買うほうが無難でしょう。
PEラインの交換時期
この手のメンテナンス記事はブログや釣りサイト、雑誌などでもたまに見かける内容です。
一般的にいわれているのが……。
- ラインがスプールの2/3くらいになったら替え時。
- PEラインが毛羽立ってきたときが替え時。
などで、ほぼこれが正解です。

その他「見た目に色が落ちたとき」としている人もいるのではないでしょうか。PEラインの色については、実は素材(吸水しない)の性質上着色が難しい。だからどんなPEラインでもそのうち染料が落ちてしまいます。とはいうものの、一昔前に比べると最近のPEラインは色落ちが気にならないほどです。スプールに巻いたライン同士が固着するなどということはほとんどなくなっています。
話が逸れましたが、ラインの色落ち具合で交換というのはあまりラインの交換目安としてはあまり正確ではないですが、マーカー機能など見た目を重視する人にとっては目安となるでしょう。
スプールに巻く量

スプールにラインを目一杯巻くとトラブルが多くなるため、スプールからラインがこぼれ落ちないようにしておくというのが一般的です。
ただし、オフショアでしかもベイトリールの場合、それはあまり当てはまりません。何故かというと、トラブル=キャスト時のバックラッシュがほとんどだからです。だからほとんどキャストすることがなく、適度に重い仕掛けを使ってテンションを張っている釣りなら、スプール目いっぱいにラインを巻いてもさほどトラブルは起きないということです。もちろん、スプールエッジまで満タンに巻くとあまりよくないから注意しましょう。
ラインのメンテナンス
吸水性はないから塩水を含むということはありませんが、塩水が付着してそのまま乾くと塩分が付着することになります。これがひどいと塩の結晶がラインを傷つけることもあるため、定期的に水洗いして塩分を取り除くのが理想です。
ライン自体に吸水性がなくても、ラインの隙間から奥まで海水が入り込むから、最低でも使用した長さ+αの洗浄は行いたいです。
もちろん、毎回ラインを引き出して洗うのは現実的ではないので、流水で流す程度でいいから、2、3回釣行したら洗うように心がけましょう。