タイラバは古くからある「タイカブラ」と呼ばれる漁具をアレンジして、ルアー釣り仕様にしたものが始まりとされている。
15年ほど前から認知され始めた比較的歴史の浅い釣りだが、入門の手軽さと確かな釣果から爆発的な人気を呼び、近年は人気ジャンルの一つとして定着した。
シンプルな道具立ても魅力の一つ。ロッド、リールなどの基本的なタックル以外では、極端に言うとタイラバ(ルアー)さえあればいい。セッティングも何ら難しいことはない。
メインターゲットはもちろんマダイだが、場所によっては根魚、青物、ヒラメ、シーバスなど実に多彩な魚が狙えるため飽きのこないバラエティ豊かな釣りが楽しめる。
あとはなんと言っても釣り方が簡単なことだ。基本的に「底に落として巻く」だけで釣果を得られるので、釣り自体が初めての初心者でも大物を手にする確率が高い。
タイラバで釣れるシーズン

近年は一年中案内する船も多いが、基本的に冬以外は狙えると考えてよいだろう。中でも春と秋はタイラバのハイシーズンだ。
冬場も釣れないことはないが、深場に落ちて活性が低くなるのに加えてシケる日が多く、出船機会が限られるのが実情。ただし、一発大物の可能性が高い時期でもある。
タイラバで狙う水深
水深20〜30mのシャローエリアから100m超えのディープエリアまで、さまざまな水深のエリアで楽しむことができる。海底の地形はマダイが好む岩礁帯や漁礁、瀬が絡んだ砂地が理想的。
あまり険しい場所は根掛かりが頻発するので初心者には厳しいだろう。いずれにしても遊漁船の場合は船長にお任せだ。
遊漁船は多い

人気ジャンルとなったため、以前と比べるとタイラバをする遊漁船は多く、雑誌や釣具店、ネットからの情報で近場の港から出船する船がすぐに見つかるはずだ。
遊漁船がホームページを開設していることも多く、ホームページ上で予約できるシステムを備えている船もある。
初めての場合、まずは電話して初めてであることを伝え、どんなタックルを用意すればいいのか、タイラバのサイズやその他の注意点を聞くとスムーズにいくだろう。
必要なタックル

ロッド、リール、メインライン(PE)、リーダーライン、そしてタイラバが必要。
ロッドとリールは、タイラバでは大きく分けて2種類のタックルが使用される。ベイトタックルとスピニングタックルだ。
釣り方や水深によってどちらを使った方が釣りやすいのか異なるため、状況に合わせて使い分けるというのが理想だが、いきなり複数のタックルを準備するのは難しいだろう。
それぞれの仕組みを理解して、自分に合ったタックルを揃えよう。
ロッドは6〜7ftで先端部分が軟らかく、胴がしっかりしたものが基本。リールはPE1号を最低200m巻けるものを選びたい。海域によっては300mあった方が安心できる場合もある。
メインラインは、タイラバでは感度が良く伸びの少ないPEラインが主流。太さは0.8〜1号くらいが標準だ。
リーダーはナイロンとフロロカーボンがあるが、タイラバでは根ズレに強いフロロカーボンが使われることが多い。太さは3〜5号(12〜20lb)が標準で青物が多いエリアや岩礁帯では太めを選択するとよい。
タイラバセレクト

タイラバの基本構成はヘッド、スカート、ネクタイ、フック。最近はフックにワームを刺したり、ネクタイの代わりにワームを装着するメソッドもある。
メーカー各社がヘッドやスカートの形状など趣向を凝らし、さまざまな波動やアクションでマダイを誘うように設計した商品を出しており、どれがいいと一概に言えるものではない。
最初は予算に合わせて好みの形状、好みのカラーのものを数点選べばよいだろう。遊漁船の船長におすすめを聞いてみるのも手だ。
種類の違うタイラバを使って経験を重ねるうちに、巻き上げ時やフォール時の手応えの違い、ハリ掛かりのしやすさなども分かってくるはずだ。
水深とヘッド重量の関係性

一般的な選び方として、水深が40mならヘッドは40g、水深が100mならヘッドは100gといった具合に水深と重量を同じにする方法がある。
これはあくまでも目安なので、たとえば50mのエリアだからといって50gを使わないといけないわけではなく、着底を分かりやすくするために80gのヘッドを使っても問題ない。
ただし、乗り合いの場合はなるべく重量を揃えておかないと隣の人とオマツリしやすくなるので、事前に船長に使うタイラバの重量を聞いておいて、あまり大きくかけ離れた重量のものを使わないことだ。
カラーセレクト

タイラバを構成するパーツにはフックを除いてほぼ全ての商品でカラーバリエーションが用意されている。
それらを組み合わせることで実質的に無限のバリエーションが生み出せることになり、むしろ選択肢の多さに戸惑ってしまうことだろう。
最初に選ぶなら、全体がオレンジまたはピンク系のオールラウンドタイプがよい。次に揃えるなら、グリーンやブラック系のナチュラルにアピールできるもの。
深場を狙う場合や曇天などのローライト時にはチャート系も活躍する。
重視したいのはヘッドよりもネクタイのカラーだ。
ベイトに合わせて、たとえばベイトが小魚や甲殻類のときはレッド系、ムシエサのときはグリーン系、イカのときはホワイト系といった感じで合わせるとよい。
ベイトの種類は船長に聞けば教えてくれるはずだ。食わないときはネクタイのカラーや種類を替えて当たりを見つけよう。
タイラバの基本的な釣り方

タイラバの船の流し方には2通りある。一つは船を風に立てて流す方法と、もう一つは船を風または潮の流れに任せて流す「ドテラ流し」と呼ばれる方法である。
以降、ドテラ流しを中心に解説していく。
ポイントに着くと、船はエンジンを切って横向きに流れていく。左右どちらかで竿を出すのか指示があるので、その指示を守る。
ルアーを落とすときはただラインをフリーにして落とすのではなく、リールのスプールに指を当ててやや糸の出方を調節しタイラバとラインが張り気味になるように落とす。
自分の前方向に斜めに落ちていき、ラインのテンションがフッと緩んだらタイラバが底に着いた証拠。根掛かりしないようにすかさず巻き上げて、船長の指示があるタナまでゆっくりと巻いてくる。
指示がない場合や、タナが分からない場合はリールのハンドルを巻く回数を10回や15回と決めるといいだろう。
指定のタナまで巻き上げたらもう一度落として着底と巻き上げを繰り返す。
何度かそれを繰り返していると底が取れなくなる(着底が分からなくなる)ので、一旦船上まで巻き上げて、スカートやネクタイとフックが絡んでいないか、リーダーに傷がないかなどを確認して再びルアーを落とす。
この一連の動きがタイラバの基本となる。
等速巻きを心掛ける

巻き上げ方にはいくつかの方法があるが、基本は「等速巻き」である。ラインを巻き始めたら途中でスピードを変えず一定の速度でハンドルを回し続けることだ。
回す速度は季節やそのときの状況によって異なるが、1秒間にハンドル1回転というのがおおよその目安になる。
また、ベイトの動きに合わせるという方法もある。1秒に1回転を基準として、ベイトが動きの遅い甲殻類やムシ類なら遅めに、小魚やイカ類なら速めに巻くというもの。
この場合も巻いている間は同じスピードになるように心掛ける。
一番簡単なのは釣れている人のヒットパターンに合わせることだ。
実際に釣れた人に教えてもらうか、よく観察して巻き上げのスピードを真似ればよい。リールの巻き上げ性能でも変わるのでそこは注意が必要だ。
アタリはアワせる?

ハンドルを回している最中に何か違和感を覚えても慌ててはいけない。明らかに魚の引きだとしても冷静に同じ速度で巻き続けることが大切だ。
マダイはフック部分に直接アタックすることもあるが、まずスカートだけを噛んでいる場合もある。
このときに慌ててアワセを入れたり、巻くのを止めてしまうと、魚が違和感を覚えてタイラバを放してしまうのだ。
アタリが出てもそのまま巻き続け、ロッドのティップ部が巻き上げ中よりももう一段階深く曲がり込み、手元にしっかりとマダイの重みが伝わったらそこでしっかりとアワセを入れてフックが根元まで刺さるようにすると確実性が増す。
アタリがないときの対処法

同船者の他の人が釣れているのに自分だけアタリが出ないようなときは、他の人が使っているタイラバのサイズやカラーを真似たり、巻き上げスピードを参考にするのが釣果への近道。
誰にもアタリがないときはいろいろなことを試すしかない。
ネクタイを交換する
カラーや形状をこれまで使っていたものとは違うものに変更する。微妙に変えるのではなく、大胆に変える方がアタリを見つけやすい。
ヘッドを交換する

カラーや重量の変更も有効だが、厳しい局面を打開するためにはヘッドの形状を違うものに替えてみるのがおすすめだ。フォール時や巻き上げ時にトリッキーな動きをしてマダイを誘うヘッドもある。
ワームを装着するメリット

フックにワームを刺すことで水流の変化を起こしてマダイにアピールすることができる。またワーム自体に集魚効果のある匂いや味が付けられたものもあるので確率アップに繋がる。
ネクタイとワームが合体したような「ネクタイワーム」もある。
3本バリの有効性

市販のタイラバはフックが2本付いたものが主流だが、近年は3本バリのものが増えてきている。
3本バリのメリットは単純にフックが増えた分、掛かる確率がアップするというもの。
またフッキングの後にハリ外れせず取り込める確率もアップする。デメリットとしては2本に比べると絡みやすいということ。
後付けで1本追加できるパーツなどもあるので、通常は2本で狙ってショートバイトやバラシが多発するような状況で3本を試してみるのも一つの手だ。
「掛け」のタイラバとは

タイラバの基本は「ゆっくり等速で巻き、アタリが出てもアワせず巻き続ける」という、いわゆる「乗せ」のスタイルであることは説明した通り。
もちろんこれで間違っていないし、80㎝オーバーの実績も十分ある。
しかし、近年、このスタイルの真逆に位置するようにアタリに対して積極的にアワせていく「掛け」のスタイルの人気も高まっている。

掛けの一番のメリットは、「釣った感」が強いこと。
どちらかというと掛かるのを待つ「乗せ」のタイラバよりも、アタリを捉えてしっかりアワせることで、自分で掛ける楽しさを味わうことができるということだ。
また、副次的なものだが、フッキングをしっかり入れることで途中でバラすことを防ぐという効果もある。
「乗せ」にも「掛け」にもメリット・デメリットがあり、それぞれの楽しさがある。
しかし、いきなり初心者が「掛け」のタイラバをするのは難しい。アタリの後のシビアなタイミングでの適切なアワセが要求されるからだ。
タックルにしても、微かなアタリに素早く反応するためにファーストテーパーのいわゆる「掛け調子」のロッドが必要になる。
ラインシステムもそのままだと、瞬間的なアワセの負荷に耐えきれずにアワセ切れしてしまう可能性もある。
まずは基本の「乗せ」をしっかり習得して、次のステップとして「掛け」に挑戦するのが順当だろう。