「漁具(タイカブラ)から派生し、ルアー(ラバージグ)の要素を取り入れたものがタイラバですが、タイラバの進化をルアーの域にまで到達させたのが真鯛ロジック。タイラバをルアーフィッシングとして楽しんでもらいたいという思いを込めて考案しました」と言うのは、年間釣行300回超えの遊漁船・ゲームボート日登美丸の錦野憲彦船長だ。
「底取り」、「誘い」、「掛け」という三つのロジックが導き出したのは、クランクベイトを思わせる形状をしたタイラバだった。
朝まづめが勝負

午前5時30分に鹿児島市の鹿児島本港を出たゲームボート日登美丸は、錦野憲彦船長の操船により波穏やかな錦江湾を滑るように進んでいく。雄大な桜島が徐々に存在感を増してくるが、最初に狙う水深46mのフラットエリアには、港内を出てからわずか6分で到着した。


「昨日は潮が動かなくて日中は反応が乏しかったのですが、朝早い時間帯にはバラしがあったから、今日も朝イチが勝負だと思っています。深い場所まで走って行っても潮が流れていないような気がするので、このポイントで結果を出したいですね」と錦野船長が言うように、乗っ込みシーズン終盤を迎えた錦江湾のマダイは気難しい面を見せている。

船上でスタートの合図を待っているのは、園田コウスケさんと錦野愛(にしきの かな)さんで、園田さんはタイラバを得意とする遊漁船らいおん丸の船長。

愛さんは夫である憲彦さんと共に、船長として日登美丸の運営に携わっている。今回は前半を憲彦船長の操船、後半は愛船長の操船という継投策が見られるかもしれない。
「上げ潮と下げ潮の境目となる水道部に特有の流れが生じる場所ですが、今は上げ潮に押されて、船が前に向かって進んでいます」

使用するタイラバは、オンザブルー/真鯛ロジック。錦野憲彦船長の思いが込められたこのタイラバの形状を一言で表すと、まん丸の低重心タイプで、これは底取りの早さを狙ったもの。
フック周りは非常にシンプルな遊動式タイラバだが「落として巻くだけの」先にあるロジック(論理)が、凝縮されているという。
それぞれの戦略

「これは小さくても立派なタイラバ(ルーディーズ/魚子ラバ1g)で、タイラバが2連になればアタリも多くなるという発想です。これを使うとマダイやハタ類の本命はもちろんアジ、サバ、イサキ、カサゴといった美味しい魚が釣れるので、いつものタイラバにワクワクをプラスできますよ」と言う愛さんがリーダーに結んでいるアイテムは、ルーディーズとオンザブルーのコラボによって誕生したタイラバPLUS(プラス)で、メインのタイラバとして真鯛ロジック100gをセットした。


「この時間は食い気があるヤツを釣っていきたいので、80gを使って通常よりも速巻きで誘ってみます。反応は底付近に出ていますが、春の時期はあまり底に執着せず、水深の半分近くまで巻き上げてもいいかもしれません」というのが錦野船長の描いた戦略。


そんな錦野船長が、手にしたのはスピニングタックル。
園田さんもキャストを念頭に置いたスピニングタックル、愛さんは超低速巻きで反応をうかがえるベイトタックルを選択した。
「真鯛ロジックのヘッドは舵(背中のフィン)付きの低重心なので、ゆっくり巻くとストレートに泳ぎます。でもそれだけではなく、速巻き(潮の流れにもよるが1秒間にハンドル2回転程度)だとバランスを崩してロールするようにラインホールの角度を設定しました。タイラバは巻くだけの釣りですが、底付近ではサイレントに、中層では激しいアクションでアピールするといったように、巻き速を変えることによってルアー的な楽しみ方ができます」

釣り開始から8分後、最初にロッドを曲げたのは園田さんで、取り込んだマダイは40㎝級。幸先の良いスタートをもたらしてくれた真鯛ロジックは60gのアマモグリーンだった。
「巻き上げの速度は2秒に1回転ぐらい。ラインの角度がかなり斜めになった状態で、食ってきたのは底から10~15巻きでした」というのがヒットパターン。アタリはガツンと明確に出た。
頻発するアタリ
「ポイント選定の基本となるのは潮の流れですが、狙いたいのは食い気のあるマダイ。そんなマダイが平らなポイントに通す潮に付いているのか、カケアガリのような水深変化がある場所に絡む潮に付いているのかを考えます。湾内であるにもかかわらず、10分も走れば水深180mのポイントがあるのが錦江湾。つまり、非常に起伏に富んでいるということで、逆に言うと平らなポイントが少ないということです」

フラットエリアの方が好調という現状を踏まえた最初のポイント選びは正解だったようで、スタート直後からアタリは頻発。型は小さいながらも錦野船長がマダイをキャッチする。
「魚探の反応は底の方で線のように出ていたのですが、その通りに食ってくれましたね。カラーは指宿の遊漁船BGの船長が考案したBGベイトグロー。水温が上がる時期はイワシベイトに付いてマダイが浮くことがあって、そのときには特に有効なカラーです」


一方でタイラバPLUSをセットしている愛さんは、30㎝級のアジを2連発。アタってくるタナは下からハンドル15回転で、迷わず魚子ラバを吸い込んでくる。
これはエダスの結束部分に用いられた貫通ビーズが自由自在に動く、360度(サブロク)遊動システムが有効に作動している証拠といえるだろう。

ジックリと底付近を狙っていた愛さんの、この日3回目のアタリは30㎝ほどのマダイ。

「7回ぐらい底を取り直したところで、底から3巻きで真鯛ロジックの方を食ってきました。3本のハリが全部しっかりと掛かっているから絶対にバレないですよね」
愛さんが選んだ真鯛ロジックのカラーは、その日最初に投入する色として定番であるという意味のファーストオレンジ。

タイラバPLUSの方に本命のマダイが掛かってくることも珍しくなく、小型から中型までのマダイが食ってくる可能性が高い。




フッキングを極める

「アタってきても乗らないケースでは、リールを巻き続けるか、それとも落とすのかで迷うところですが、迷っていてはダメだと思っていて、春だけはある程度の追い巻きをするようにしています」
次に捉えたアタリに対し、その言葉を実践に移した錦野船長のロッドに重さが乗ってきた。
「マダイを寄せてくるときは、ハリがどこに掛かっているのか分からないという意識を持っています。マダイが顔面でタイラバを叩いて、たまたま掛かったような場合もあるでしょうし、口の外やくちびるの皮1枚へのフッキングもあり得るので、テンションを変えないことが大事。この魚は絶対にバラさないぞ、と思うようにしています」


難なく取り込んだマダイは小型だったが、注目すべきはフッキングしていたのがアゴの下の薄皮1枚だったこと。
この部分へのフッキングが成功したことも驚くべき事実だが、もしも強いテンションをかけていれば、間違いなく身切れしていたことだろう。


「あくまでメインはジゴクバリですが、アシストの追っかけバリがきっかけとなってフッキングに持ち込むことができます。ジゴクバリの最大メリットは、2本とも掛かったときに倍の強さを発揮できる点ですね」というのが、錦野船長が導き出した掛けるための回答。
真鯛ロジックに搭載されたフックがトータル3本となっているのはこうした理由からで、なおかつ、アウトサイダーフックと名付けられた真鯛ロジック専用フックは、口以外へのフッキングを確実にするため、ネムリのない形状を採用。カエシの配置はフッキングポイントからやや遠めにしている。

「ただ巻くだけ」を探求することで見えてきたのは、底取り、誘い、掛けのロジック。船長自身が欲しかったタイラバは、もはやルアーの領域へと達していた。
使用タイラバ
真鯛ロジック

左から40gのBGベイトグロー、60gのシルエットブラックゴールド、80gのアスタキサンチンレッド、80gのアマモグリーン、100gのファーストオレンジ、120gのマダイピンク。
重さはこの他に150gと200gが用意されている。

カラーバリエーションは全6色。
#01/ファーストオレンジ:スタンダードなマストカラー。
#02/アマモグリーン:マダイの生息に欠かせないアマモがモチーフ。
#03/BGベイトグロー:タイラバでは珍しいイワシ×グロー。
#04/マダイピンク:ピンクカラーをベースにアイシャドウとにブルーラメ。
#05/アスタキサンチンレッド:マダイが好むエビやカニに含まれる赤い色素がアスタキサンチン。
#06/シルエットブラックゴールド:現場からのリクエストNo.1カラーのクロキンは水中視認性が高い。
タイラバPLUS

愛さんのおすすめアイテムは、通常のタイラバ以上のワクワク感を与えてくれるタイラバPLUS。
1gのタイラバ(魚子ラバ)を360°(サブロク)遊動システムに組み込むことで通常のタイラバには反応しない魚種もターゲットとなる。

タイラバPLUSのカラーラインアップはギラギラ、ミドキン、アカキンの3色。
問い合わせ/日登美丸
℡090-6776-6930