誰しも強いラインシステムを理想としています。しかし「絶対切れないライン」というものは存在しませんし、そもそも切れないラインがあったとしても根掛かりしたときが大変です。
根掛かりで切る場合、どこで切れるようにするか考察してみましょう。
一般論として
例えば、根掛かりなどで仕方なくラインを強く引いて切る場合、多くの人はノット部から切れるでしょう。当然、弱い部分から切れるのが当たり前で、もしラインに傷が入っているとノット部よりも先に切れることがあります。
一番嫌な切れ方はPEラインがリールやロッド付近から切れるもので、多くのラインを失うことになります。
以上のことから、使用しているPEラインの強度よりもリーダーラインは弱いものを選択するのが一般的となっています。切れる順番からいうと、ルアーノット部→ライン結節部→リーダー→PEラインの順が理想とされています。
ラインの表記
PEラインとリーダーは素材が違うため、ひと目では強度計算ができません。そもそも、昔の日本の釣り糸の規格には「強度(lb)」というものがなく、「太さ(号数)」が一般的でした。しかしルアー釣りではlb表記されている商品が多く、特にナイロンやフロロをよく使うバス釣りでは、号数よりもlb表記の方が馴染み深いでしょう。
PEラインは、船のエサ釣りがメインで使用されていたこともあるのか号数表記が今でも標準です。しかし、ルアー釣りで細いPEラインを多くの人が使うようになってからは少し事情が変わってきたようで、号数と強力表示を併記する商品や、lb表記のみのPEラインも見かけるようになりました。
釣り糸の基準を定める日本釣用品工業会(JAFTMA)では、釣り糸の標準直径や重量の基準値を明記していますが、「強度」という点では指標がありません。
強度計算
ラインの強度基準が設けられていないと書きましたが、統一基準がないだけで各社ラインメーカーでテストされた数値が公表されている場合はあります。PEラインの場合、4本撚りと8本撚りがあり当然8本撚りの方が強度は上がります。しかし、編み込み方によっても強度が変わるから、一概に1号のラインが各社同じ強度とは限りません。PEラインの原料にも種類があるから、同社の別商品でも同じ強度とは言えません。さらに、釣り人が使いやすいようにコーティングや芯を入れたPEラインもあり、商品ごとの強度計算が必要になります。
それを意識してか、商品パッケージやカタログには号数の他に強度も一緒に記されているので、自分が使用しているラインの強度を確かめておきましょう。
結節部

ノット法で大きく強度が違ってきます。
最初に順位からいくと、PRノットやSFノット、SCノットといった編み込み系が上位を占めます。人気のFGノットはというと、焼きコブや後処理の違いで、同じFGノットでも強さが大きく異なってしまいます。つまり、FGノットは覚えやすくて結ぶスピードも早い代わりに、結び手次第で強度が大きく違ってしまうノット法なのです。ただし、これはFGノットに限らずどのノット法でも中途半端な結び方では強度が落ちてしまうので、自分が丁寧に確実に結べるノット法が自分の最強ノットになります。これだけノット法があるにもかかわらず、未だに新しいノット法が考案されるのはそのせいでしょう。
しかし著名なアングラーでも狙う対象魚やサイズによって結び方を替えている人も多く、オフショアのヒラマサ狙いではPRノットなどが多く、ショアからだとFGノット愛用者が多いようです。
ラインの傷
エサ釣りに比べて、ルアーアングラーの多くはリーダー(ハリス)の点検を行わない人はまだ多いようです。特に細いラインを使用するウキフカセ釣りでは、ラインに傷が入っていると不意な大物から切られてしまうリスクが高いです。だからこまめなハリスチェックを行う必要があるのですが、ルアー釣りのリーダーは太めで短くなったら替えるという程度で考えている人が少なくありません。
ほとんどのルアー釣りでは、リーダーラインの設定は対象となる魚よりも強いものに設定しているから、多少の傷でも難なく釣り上げられる場合が多いため、神経質になる必要はありませんが、釣行前に擦れや傷がないかくらいはチェックする癖を付けておきましょう。
リールの傷

もう一つ、傷のチェックを怠っているのがリールスプールとベイルアームです。
リールスプールに傷がある場合、キャスト時やライン放出時に引っ掛かることもあり気づきやすいです。おかしいなと思ったら指でなぞってみましょう。少しでも違和感があれば2000番クラスの耐水ペーパーで傷を消しましょう。
そして見逃しがちなのがベイルアームの傷。特にロッドを地面に置く人は要注意。キャスト時はベイルアームを起こしているから影響はないですが、不意な大物が掛かった際や、魚が突然ベイルを起こすような急な走りをしたときにラインが傷に当たって悲劇となることもあります。とにかく、ラインが触れる場所は小さな傷でもラインが傷ついてしまうので、点検を怠らないようにしておきましょう。
根掛かりと結節強度
一口に根掛かりといっても多くの状況が考えられます。根掛かりした状況を海の中に入って確認することはできないから全てが想像です。また根掛かりではなく、魚がルアーを咥えたまま根に潜ったり、すぐに外れることを想像してまずは軽く引っ張ったりシャクったりするでしょう。それからどうしても外れないことを認めると、ロッドを根掛かり方向へ真っすぐに向け、ラインを一直線にして強く引きます。

ここでテーマの本題である、「どこから切れればダメージが少ないか」となります。
前提としてルアーの回収は絶望的な状況とします。せめてルアーとリーダーの結節部から切れてくれれば、リーダーの結び直しはないし、PEラインの減少も防げます。というのが最善の結末でしょうか。
となると、リーダーとPEラインの結節よりも、ルアーへの結びは弱く設定しなければなりません。しかし、ルアーは魚との唯一の接点なので、ここが最弱になると魚とのやり取りに不安が残り弱腰でのファイトになりそうです。それに、ルアーとリーダーの結節を強化するようにリングを付けることもあるから、やはりラインシステムで一番最初に切れるのはPEラインとリーダーラインの結び目という結論になります。
根掛かりの原因

ルアーにおいての根掛かりのよくある原因は、フックが岩や海藻などの障害物に引っ掛かることでしょう。この場合、引いたときにどの程度動くかによって予想することができ、若干動くようなら藻の可能性が高いです。こんなときは強く引くことで外れることも多いものです。また引く向きを変えることで簡単に外れることもあります。



次に多いのが岩などにルアーが挟まったりハリが引っかかる場合です。ロッドをアオってもびくともしない感触のときです。こうなると回収不能となるケースもありますが、まずは引く方向を変えたり、軽く煽ったり色々試してみましょう。するとうまく脱出できることもあります。ルアー回収機を使う手もあります。
運良くルアーを回収できたら、必ず状態をチェックするようにしましょう。特に藻などの障害物の痕跡があるなら、そのエリアは藻が群生しているので狙い方を替えなければいけません。藻場は甲殻類やエビ類が多く生息し、小魚も集まってくるから、ポイントにもなりやすいので良いヒントになることもあります。
根掛かり対策① フックセッティング
一番の対策は、海底の様子を把握することです。例えば、50m沖にキャストしたとして、30m地点で根掛かりした場合、その地点は無理に攻めないということです。「根があるから魚もいるかも」という期待感はあるかもしれませんが、狙いにくい場所を攻めるとルアーの紛失が増えてしまい、結果として釣りをする時間が少なくなってしまいます。ギリギリを攻める自信がないなら根掛かりしない深さをタダ引きしたり、別のエリアを狙うようにしましょう。こうすることで、根掛かりはかなり減るはずです。
次にフックでの対策。例えばジギングの場合、トレブルフックはタチウオやカマス狙いのみに使い、普段はアシストフックにすることで根掛かりを回避することもできます。これは多くの人がそうしているでしょうが、40g前後の軽量メタルジグは、フロントにアシスト、リヤにトレブルをセッティングされたものが多く販売されています。これはあくまでもフルセッティングなので、リヤのトレブルは外して大丈夫です。もし不安なら、リヤにもアシストフックを取り付けましょう。
根掛かり対策② フックの種類
フックポイントが内側に向いたものをネムリバリと呼びます。フックポイントがすぐに当たらないようにすることで物を引っ掛けないから根掛かりのリスクが断然小さくなります。
フックポイントが外向きのものに比べると最初の掛かりは悪くなりますが、掛かった後のホールド性が抜群なのでバラシ軽減にも繋がります。
もう一つは重量を軽いものにすることです。重いものに比べてルアーを引いた際にフワッと浮き上がるから地面に掛かりにくくなります。ただし、フックの重さが変わるということは重量バランスも変わるので、必ず足元でスイムチェックをしましょう。
根掛かり対策③ 着底前後の処理
ルアーが着底したまま放置すると潮流の影響を受けて地面をゴロゴロと転がります。このときにラインを緩めておいたり何もしないと、転がったルアーはどこかにハマったり引っ掛かる結果となります。だから、着底後は速攻でルアーとラインを一直線にして遊びをなくし、ルアーを浮かさなければいけません。
一度カウントダウンで水深を測っておけば、次からは着底させずにアクションを始めることも可能です。1日の釣りの中では、さまざまな狙い方を試してみることです。
あまりに根掛かりが多発する場合は、場所を移動するというのも手です。移動できなければルアーコースを変えるだけでも根掛かりしなくなることもあります。岩場では「岩の目」も関係してくるので、諦めたり同じことに固執せず、狙い方を替えてほうがよいでしょう。
