釣り人にとって欠かせないアイテム、ヘッドライト。ヘッドライトを大きく進化させる大きな要因となったのがLEDライトの登場だ。
今回はこのLEDの歴史と魅力を深掘りしてみよう。
たくさんの利点があるLED(発光ダイオード)

LED(発光ダイオード)は第4世代の照明といわれている。第1世代とは松明やロウソクで、第2世代は白熱電球、第3世代が蛍光灯だ。
もっとも、釣りの現場で用いられるヘッドライトに蛍光灯は適していない。そのため、十数年前は白熱電球が主役だったのだ。
しかし、ライトとして使えるLEDが登場するや否や、あっという間にこのLEDが主役の座を占めてしまった。LEDが白熱電球に比べてどこがどのように優れているのか、まずはその点から解説してみよう。
白熱電球はフィラメントと呼ばれる抵抗体に電流を流すことで熱と光を生み出す。嫌がるところに無理矢理押し込むのだから、電力はたくさん必要になる。
光と同時に熱も出るから、フィラメントが燃えないように電球の内部を真空にする必要もある。生じた光をできるだけムダなく外へ放射するためには、電球の材質を透明なガラスにしたい。
その結果、電球はある程度の大きさが必要で、割れやすく、またフィラメントが切れる可能性も高かった。

俗にいう「球切れ」だ。そのため、白熱電球を用いたヘッドライトには、必ず予備の豆電球がついていたものだ。
対して、LEDは、電流を流すと発光する半導体(電流が流れやすくもなく、流れにくくもない中途半端な存在)を使っている。熱が出ない(少しは出る)から真空にする必要はなく、全体が小さい。
ガラスのかわりに硬く割れにくい素材が使えるので割れる心配もない。
強引に電流を流す必要がないから、電力の消費量が非常に少なくてすむ。あるメーカーの実験によると、白熱電球に比べて87%、蛍光灯の場合は30%削減できるという。
LEDの長所をここまで書き並べただけで、ヘッドライトには絶好の存在だということが分かると思う。小さく、寿命が長く、衝撃に強いのだ。しかも、電池が長持ちする。
さらに、他のメリットも派生した。小さいから、防水機能を持たせやすいのである。
また、紫外線も赤外線も出さない。ということは、蚊などの虫が寄ってこない。
LEDライトの寿命

球切れがないLEDに寿命はあるのかと聞かれたら、残念ながらあると答えるしかない。熱は出ないと前述したが、内部抵抗のため少しは発熱する。
その少しの熱が、LEDチップを包んでいる封止パッケージを劣化させるのだ。
そのため、20000時間から60000時間点灯させると寿命を迎えるという結果が出ている。数字に開きがあるのは、流す電力の違いや、発生した熱をどの程度流すことができるかによる。
それでも、白熱電球の標準である1000時間、蛍光灯の12000時間に比べて遥かに長い。
ただし、メーカーによる寿命の違いも大きい。LEDの場合は長時間点灯させられるという利点もあり、乱暴な使い方をしない限り10年以上は使える計算だ。
その頃には本体もガタがきているので本体ごと変えるのが一般的となる。
逆をいえば、壊れやすいメーカーはその違いが顕著に現れるということ。10年どころか、さらに短い時間で点灯しなくなったケースもある。信頼できるメーカーを選ぶように心がけよう。
電池もパワーアップ

釣り用のヘッドライトは白熱球を使っていた時代と比べれば大きく進化し、小さく軽くなり、格段に明るくなった。
その原動力となったのが、これまで解説してきたLEDのおかげであることはいうまでもない。
そして、もう一つ、ヘッドライトの進化に大きく貢献したモノがある。それが電池である。
マンガン電池からアルカリ電池への進化は今更ではあるが、昔はアルカリ電池はもっと高価だったこともあり、今のようにヒャッキンやコンビニで低価格の電池がズラリということはなかった。
「安い=寿命が短い」という通例も、ここ数年では大きく改善した。もちろん、パナソニックのエボルタのような高品質品と比べれば寿命は短いが、安いものでも結構長持ちする。
さらに、今どきのヘッドライトは充電可能なバッテリー内蔵タイプもある。これはスマホなどで使われるリチウムイオンバッテリーの小型化が影響している。
ヘッドライトを変革したLEDの存在、そして、バッテリーの進化による高機能化。次の世代では、どんな進化が待っているのだろう。それを考えるだけでも楽しいものだ。