コイにエサやりをした経験のある人は分かると思いますが、エサを持った人間が近づいてくると、我先にと集まってきます。案外、魚は陸の人間をよく見ているものです。
同じ現象が釣り場にも発生しており、魚は釣り人をよく観察しています。必然的に身を守る知恵を身に着けた経験豊富な大物は、釣り人に警戒心を持っています。
そのため、ターゲットから見つけられないように行動することは、サイズアップを狙うための必須課題といえるでしょう。
魚の視力は悪い?

魚種 | 視力 | 魚種 | 視力 |
---|---|---|---|
チヌ | 0.13 | ブリ | 0.11 |
グレ | 0.13 | カツオ | 0.43 |
マダイ | 0.16 | マアジ | 0.12 |
スズキ(シーバス) | 0.12 | ブラックバス | 0.17 |
魚の視力については研究データがあります。その結果によると、人間でいうところの0.1〜0.6の視力しかありません。しかも多くが0.1〜0.3程度の視力です。
この結果だけみると、魚は人間より目が悪い……ということになるのですが、そもそも人間と魚では目の構造が大きく違います。
まず、体の構造ですが、目だけではなく首や体を動かして視界を移す人間に対して、魚は首がないので、体を動かすことでしか死角を見る手段がありません。
その上、天敵だらけの海で暮らすのですから、身を守るためにも視野は広くなくては生きていけません。そのため、魚は人間に比べて顔の横に目玉が付いています。

魚の眼は人間より視界の広さが段違いで広く、体を動かさなくても広範囲を見渡せるような作りになっています。
ただし、人間が両目を開けてピントが合っているときに見やすいのと同じように、魚もまた、見やすい範囲があります。これを「両眼視野」と呼びます。
魚が仕掛けに注目したときに、横目ではなく真っすぐエサやルアーを見るのはこのためです。
この両眼視野は目の付き方でも微妙に異なってきます。これは捕食するエサなども影響しているとされています。
チヌなど底にいる甲殻類を捕食する魚は斜め下もよく見えるような作りに、プランクトンや小魚を捕食する魚ほど上や前方を見やすいようになっています。
魚から釣り人が見えているのか?

魚は水面を通して陸の釣り人も見えていると考えられています。
この概念を「フィッシュウインドウ」と呼び、魚の眼の上から水面へ向けて97度とされています。光の屈折の関係で、見た目よりかなり広い範囲を見ることができるそうです。
それ以上の角度だと、水面で光が鏡のように反射してしまうため、海上を見ることができません。
それらの広い範囲を凝縮したような光景を魚は見ていて、陸に人がいるかを判断している。これがフィッシュウインドウの考え方です。
当然、これは魚と岸に距離があるほど陸上を見ることは困難になりますし、水が濁っていればさらに見づらくなります。
この概念を釣りに応用したものだと、足元に魚がいるとき、数歩下がった位置からキャストしたり、リトリーブ時に体制を低くすることで魚から見づらくするという戦法があります。
色を見分ける能力

色は網膜細胞にある錐体(すいたい)細胞という場所で識別しています。人間には3種類の錐体細胞があり、それぞれを原色として捉えて、色を判別します。いわゆる「光の三原色」です。
さて、魚にはどこまで色が見えているのかというと、多くの魚に錐体細胞が人間より多い4種類存在していることがわかっています。
色の識別能力がない魚もいますが、多くの魚は色を識別することができます。
しかし、問題はここから。魚が色を見分けるのは間違いないのですが、どういう判断基準で捕食し、攻撃するのか。という構造については不明とされています。
ルアーのアピールカラーが良い例で、自然界にない色のルアーが、ベイトの代表例ともいえるイワシなどのカラーより釣れることはよくある話です。
この点については、学術的な観点で見るよりも、釣り人の経験の方が、釣果を得る上では重要かもしれません。
夜目は効くの?

人間の目の構造として、明るい場所から急に暗い場所へいくと何も見えないですが、徐々に夜目が効いてきて見えるようになってくるという機能があります。
これは桿体(かんたい)細胞の働きによるものです。
実はこの桿体細胞は魚も持っています。人間と同じく時間が必要ですが、魚にも夜目があるわけです。
また暗くて色の判別が難しいというのは魚にも起きることで、結果、夜に効くルアーカラーがあるということになります。
とはいえ、魚が本当はどこまで見えているのかは、魚に転生でもしなければ分からないことです。
目以外にも魚は側線を始め、嗅覚、聴覚など、あらゆる器官でエサを判別し、天敵を察知します。これらを意識すれば、よりスキルアップすることができることでしょう。