かつて、立てているだけで魚が浮いてくるというキャッチフレーズの竿が登場したことがある。
反発力が強いから、面倒な操作をしなくても魚を取り込むことができるというもので、ビギナーには受け入れられたような記憶がある。
もっとも、反発力が強いのはグラスと比較したうえでの話であり、カーボンが普及してからは反発力がウリにならなくなった印象がある。
釣りになにを求めるか?

みなさんはグレ釣り、チヌ釣りになにを求めているのだろうか? もちろん、釣りに求めるものは多種多様であり、さまざまな目的があるだろう。
ウキが沈む瞬間が一番楽しいという人はまだまだ多いはずだ。
釣りを知的ゲームとみなして、自分が組み立てた予測が当たって魚がヒットすればそれが最高の喜びだという人もいるだろう。
タックルやエサ、釣り方など新しいチャレンジをしてそれが当たれば嬉しいという人もいると思う。だが、一番多いのはやはり魚とのファイトではないだろうか。
で、ファイトが楽しめるのはどんな竿か……というところから本題に入る。

引きを楽しめるのは胴調子だ。これに異論はないだろう。八二や七三の先調子では中・小型の魚が物足りない。やはり六四、五五の方が勝る。
では、上物釣りでは胴調子がベストの竿といえるのか? 絶対に違う! という読者の皆さんの声が聞こえてくる。
釣って楽しいのは胴調子だが、この竿にはいくつかの弱点がある。
風に弱い。
重たい仕掛けを投入しづらい。
ラインメンディングが難しい。
ハリ掛かりさせた魚の動きをコントロールできない。
いずれも皆さんはすぐ思い当たるだろうから詳しい解説は省く。
その一方で、胴調子にはファイトが楽しめる以外のメリットがある。
魚の引きに対応が遅れても竿の曲がりが吸収してくれる。
反発が軟らかいから魚が暴れない。
小型の魚でも大きく曲がるから視覚的に楽しい。
いうまでもなく、胴調子のデメリットは先調子のメリットに、胴調子のメリットは先調子のデメリットにつながるわけで、さて、どちらを選ぶかということになる。
胴調子はチヌ竿オンリー?

世間の一般的な評価では、グレ竿は先調子、チヌ竿は胴調子ということになっている。
かつて、チヌ竿、グレ竿という区分はなかったのだが、先調子、胴調子という表現よりもビギナーには分かりやすいというわけで現在のようなストレートな表示に落ち着いたのだろう。
だが、ちょっと待て! グレ釣りなのに胴調子を使いたいときはある。チヌでも先調子で釣りたいケースもある。せいぜい30㎝台しか期待できない堤防では胴調子でグレ釣りをした方が面白い。
複雑な地形だと先調子でチヌを狙った方が取り込める確率は高くなる。
とはいえ、現代はチヌ竿以外の胴調子を探すのは難しい。

かつてはメーカーによって特徴があった。シマノは全体に硬く、ダイワは軟らかいというイメージがあった。
だが、カーボンロッドが進化すると同時に釣りに求める要素が変わり、現在は昔ながらの胴調子はすっかり影を潜めてしまっている。
チヌ釣り以外で胴調子を求める釣り人は少なくなっていると言い換えた方が分かりやすいだろう。
理由は操作性と手返しにある。現在のグレ釣りではこの両者が大きな比重を占めている。
遠投できてラインメンディングがたやすく、誘いをかけやすく、早アワセができて、ハリに掛かった魚をコントロールできて、さらには瀬に突っ込もうとするところでブレーキをかけることができる。
そして、エサ盗りが多ければツケエをしばしば交換しなければならない。まさに、先調子竿の独壇場だ。胴調子の出番はないことになる。

このように、多くの竿メーカーが先調子をメインにしている中で、がまかつはジャンルの一つとして独自の胴調子路線を進めている。
ガマラーの間ではがま調子と呼ばれており、これはアクティブサス(スーパーASD=アクティブサスデザイン)という設計理論が土台になっている。
大雑把に解説すると、継ぎ目の段差を解消することによって荷重に応じて支点がスムーズに移動するというもので、これにより粘りを重視した胴調子が実現されている。
マスターモデルⅡ尾長がよい例で、大型の尾長の引きを元竿~元上で受け取るから細いハリスでも対応できるという。
著者:尾田裕和