ハリがカラー化されたのはいつごろからだったろう? もともとは鋼線そのままで販売していたのだが、時間が経過するとサビが発生するのは免れない。
たっぷりと油を塗布したりもしたが、それでは長期間の経過に耐えられない。そこで、メッキという技術が広く行き渡ることになる。
手頃な費用でサビ、劣化、摩耗が予防され、さらに見た目もよくなるのだから、ハリメーカーの間で急速に広まったのも当然だ。
詳しい説明は省くが、メッキとはハリの表面に薄い金属膜を作る処理で、使用する金属によって仕上がったカラーは異なる。
金を使えば金色に、銀や錫、ニッケルを使用すれば銀色になる。ハリのカラー戦略はここからスタートする。
海の中ではどう見えるのか?

現在、ハリのカラーは何種類もある。金、銀、黒、赤のほか、白、ピンク、茶、緑、青、ケイムラ(赤や青、紫などの蛍光色)など使われているカラーは多く、どの色はどんなときに効果があるとまことしやかに伝えられている。
その基本的な目的は目立つか目立たないかに尽きる。目立てば魚の注意を引きつけ、本命魚に発見されやすい反面、警戒心を抱かれるし、エサ盗りの注意も引く。
だからこそ、目立たないカラーの存在価値がある。
それはともかくとして、メッキのカラー以外は塗装によるものだ。自由にカラーを選べる反面、剥げやすいというデメリットがある。

フグのような歯のある魚がかじるとてきめんに剥げるから、エサ盗りの正体を確かめるという意味では役に立つ。
とはいえ、目に見える色はあくまでも陸上での話だ。それが海の中になるとどうなるのか、釣り人にとってそれは興味深い問題のはずだ。
赤は魚に対してアピール力が強いとされていた。かつて、イシダイ釣りに関しては先鋭的で宙釣りを開発した北九州のイシダイマンたちはオモリを赤く塗り、より強くイシダイにアピールしようとした。
だが、深場では赤が目立たなくなることが知られて一斉に白に変更したという事実がある。

太陽の光にはあらゆる色が含まれている。しかし、海水を通り抜けると深さに応じてそれぞれの色は吸収されていく。
波長の長い赤、オレンジなどの暖色系ほど吸収されるのは早く、逆に波長の短い寒色系の青、緑は最後まで残る。そのため、海底の色は全体が青っぽく、または緑っぽく見える。
アラカブやハタ類はみんな赤い色をしていることを考えると、海の底では赤が目立たないのは頷ける。前出の魚はみんな小魚を食べる、フィッシュ・イーターだ。
物陰に身を潜めて獲物が近づくのを待ち、チャンスと見れば一気に襲いかかる。赤い色が目立てば小魚は警戒して近寄らない。

赤が有利な場合もある
ここまでで分かるように赤の効果がないことは証明されている。ところが、反対に赤い色が効果的だという実戦上の報告もある。
昔から知られている紅サシ(ワカサギ釣りに用いられる赤く染められたサシムシ)がそうだし、関東に多い管理釣り場ではよく釣れるという理由で赤バリの使用が禁止されている。
管理釣り場というのは半野生化したマス類の釣り堀で、条件次第ではテクニックなど不要でヒットするという。また、サヨリ釣りでも赤いハリが有利とされている。
このように考えると、浅場では赤い色の効果があると見てよいのかもしれない。その浅場の範囲は濁り具合や潮色によるのだろうが、目安としては4~5mといわれている。

では、深場で目立つのはどんな色なのだろう?海中では彩度より明度というのが法則で、それに従えば白というカラーが浮上してくる。わずかに色を加えるとしたら黄色だろう。
波長としては緑とオレンジの間にあり、水深7mでも視認されたという報告もある。そういえば、食い渋りイエローという練りエサがあったなあ。
白も黄色も、目立たそうとすればこれに勝るものはないといえそうだ。
カラーローテーション

ハリよりもっとカラーに敏感なタックルがある。それがルアーやエギだ。
何人かのルアーマンに尋ねたところ、近年、ルアーの色に対するこだわりは薄れてきているという。もともとナイトゲームが中心のシーバスやタチウオは、グロー系を除けばあまり意味がない。
また、ボトムを攻めるルアーはどんなカラーも同じ色に見えるのだそうだ。前述した理由により、それは十分頷ける。
エギについてはまだカラーについてさまざまな説がまかり通っており、それなりの効果が認められているので保留としておこう。
ハリに戻ろう。ダイワのテスターである丹羽正さんは以前、こんなことを言っていた。
魚に一番近いのはハリであり、状況によって魚の活性はどんどん変わるのだから何種類ものハリを準備しておき、結果が出なければ次々に交換するべきだと。
何種類ものハリという中には当然カラーも含まれている。
魚を釣るためにはトライ&エラーが欠かせない。これで釣れなければ何かを変えて、それでダメならまた変える。皆さんは散々それをやっているはずだ。ハリの色にしてもそれがいえそうだ。
著者:尾田裕和