Tackles Scramble 釣り道具「ハリ その2」

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釣りバリの製造工程は、大雑把にいえば鋼線を曲げて焼き入れし、焼き戻す。それで形が整い、強度が出る。

言葉にすれば簡単だが、膨大な経験と知識、創意工夫が要求される。かつて、その工程の中で研究・開発者を悩ませたものの一つが焼き入れ・焼き戻しの段階で変形することだった。

漁師用ハリ
漁師用に販売されていた古い釣りバリ。ハリの種類やサイズなどの表示はない。

高熱を与え、再び冷やすのだから鋼材は否応なく膨張して収縮する。

事細かに形を決めていたところで、この段階で予想外に狂ってくる。その挙句、予想していたものとはとんでもなく異なるハリができてしまったことが過去にはあった。

試作段階ならそれは当然視されていたろうが、製造ラインに乗ったものが狂うと被害は大きい。現在では考えられない話だが、過去にはあり得ない話ではなかったらしい。

結果、予想外の形のハリが商品化され、苦肉の策として「イサキバリ」と命名したところよく売れたという、いかにももっともらしいエピソードがある。

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基本は2パターン

昔のハリ
昔のハリは油紙で包まれていた

現在、釣りバリの種類は非常に多く、ビギナーにとっては選択に悩む大きな課題の一つとなっている。しかし、海のエサ釣りに限定すると、ルーツは二つでしかない。

それが丸セイゴと伊勢尼で、他のハリはこれから派生したものだと考えてよい(もちろん、例外はある。それが釣りの世界だ)。

丸セイゴは万能

丸セイゴバリ

セイゴはいうまでもなくスズキの幼魚で、なぜスズキバリと命名しなかったかは分からない(スズキバリは別にある)。

江戸時代に釣りの対象とされていたのはハゼ、キス、マダイ、アジ、サバ、イワシ、タチウオ、ボラ、スズキなどで、江戸湾(現在の東京湾)にはこのような魚が生息していたのだろう。

このことから、当時の釣り人にとってスズキはなじみのある魚であったと予想できる。

他の魚とスズキを比べると、サイズやパワーのほかに大きな違いがある。エラ洗いだ。ハリに掛かったスズキはハリから逃れようとジャンプする。そういう状況でも外れづらい形が丸セイゴだったのだろう。

よく見ると全体に細身で、吸い込む食性の魚に対応している。

そして、軸とフトコロのバランスが強度と掛かりの良さを保持し、それでいて根掛かりしづらい。そのため、多くの魚に対応しているといえる。

投げ釣りによく用いられる流線バリはこれから派生したもので、ムシエサを装餌しやすいように軸を長くしている。エサを吸い込む魚……キスやカレイに特化したものだ。

チヌバリ、グレバリのルーツは伊勢尼

伊勢尼
チヌ、グレバリのルーツである伊勢尼。

伊勢尼は丸セイゴに比べてフトコロが広く、口の小さい魚や吸い込む食性の魚には適さない。反面、掛かりが良く、軸が太いので強度は十分で、チヌバリ、グレバリが伊勢尼から派生したものであることは一目瞭然だ。ただ、軸が太く、モエビなどの生きエサが弱りやすい。伊勢尼という名称は「磯海女」から転化したものではないかという説がある。

チヌバリ

チヌバリ
チヌバリは伊勢尼よりも軸が細いのが特徴だ。

チヌバリはグレバリよりも早い時期に登場した。

庄内藩のクロダイ釣りの例を持ち出すまでもなく、釣りのジャンルとしてははるかに歴史は長く、釣り人の要求が高かったのはいうまでもないだろう。

どのような要求があって伊勢尼からチヌバリが生まれたのかは判然としない。両者を比較すると、チヌバリは軸が細くやや長いだけでほとんど差はない。

それでいてチヌバリが登場した理由はいくつか考えられる。

チヌ_ハリ掛かり

セグメンテーション

マーケティングでは市場細分化と呼んでいて、磯竿の一ジャンルとしてチヌ竿を登場させた手法と同じと思ってよい。ビギナーには分かりやすいし、チヌ釣り師なら迷わずこれを選択する。そして、チヌ以外の魚を釣る場合は伊勢尼を使用するから、2種類のハリが売れることになる。

軸が細い

伊勢尼は軸が太くて強度があるが、その反面、生きエサに与えるダメージが大きいと前述した。チヌバリはその弱点を補い、ダメージを小さくして同時に魚の口に刺さりやすくもしている。

グレバリ

グレバリ
グレの小さい口に入りやすいようにグレバリはコンパクトな形状をしている。

グレ釣りというジャンルが生まれたのはチヌ釣りよりずっと遅い。したがって、グレバリの登場も遅く、初期のころは主に伊勢尼が使われていた。他にチヌバリ、丸セイゴを使う釣り人もいたようだ。

やがて、西日本ではクロ釣りが確立され、専用バリに対する要望が高まった。チヌバリで確信を得たハリメーカーはすぐさまグレバリを開発する。それが伊勢尼の軸を短くしたものだった。

チヌに比べてクロは口が小さいから、コンパクトにして口に入れやすくしていたのだ。とはいえ、グレ釣りファンが一斉にグレバリに飛びついたわけではない。

グレ

特に、これまで他のハリで実績を積んできたベテランにアピールできる要素は少なく、信頼のおけるハリをそのまま使い続けた釣り人もまた多かったのだ。

知る限り、松田稔さんもその一人だった。松田さんが愛用していたのはなんとヘラスレで、カエシがなく刺さりのよいヘラブナ用のスレバリで大グロを釣りまくっていたのだ。

しかし、ヘラブナ用ではいかにも強度に問題があり、がまかつが松田さん用にとヴィトムを開発することになる。

その後、グレバリはおびただしいほどバリエーションを増やし、着実にクロ釣り師の支持を得ていった。

ハリのサイズに基準はない!

タックルケース

チヌバリ、グレバリは伊勢尼から派生したにもかかわらず、サイズはまるで違う。フトコロの広さを比較すると、チヌバリ5号で9㎜。伊勢尼なら9号で9㎜。これが競技ヴィトムでは8号で9㎜だった。

伊勢尼とグレバリは非常に近いものの、チヌバリはまったく違っている。なぜこうなったかというと、ハリのサイズに規格はなく、メーカーが独自に、しかも商品ごとに自由に決めたからだ。

ただし、後発メーカーは先行メーカーの商品に準じており、例えばチヌバリはほぼ同じサイズに統一されている。

著者:尾田裕和

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