これまで多くのSNSでダイソー商品のレビューを見てきた皆さんにとっては、目の肥えている人も多いでしょう。
しかし、使える・使えないという判断でしか見ていないのであればもったいないです。
価格は別として、現在100円ショップで売られている多くの釣り具商品は、普通に釣具店に並んでいても遜色ないものが多くラインアップされています。
今までの価値観だけで使うことを懸念しているのであれば、少し耳を傾けてみてください。

ダイソーリールのスペック

結論から先に言いましょう。初心者がこのリールを手に取れば何も思わないでしょう。これがリールだということになると思います。
釣りに慣れた人だとミドルクラス以上の釣り具を使用していることだから、物足りなさを感じるし、プライドもあって使うことはないでしょう。
しかし、道具をうまく使いこなしている人なら、TPOに合わせて工夫して使うでしょう。使えるかどうかは自身の気持ち次第です。

前置きはさておき、ダイソーのリールを分解してみました。
ギア比は 5.2対1。糸巻き量はナイロンライン2号なら100m巻けるものです。ルアーのライトゲームや、ちょい投げ、穴釣りなどに使えそうです。これが550円で購入できます。
シリーズには、2000(550円、3号100m)と3000(700円、4号100m)があり、ボディは同じサイズのように見えます。1000・2000・3000と、スプールの糸巻き量を調整しているようです。
商品名 | リール1000 | リール2000 | リール3000 |
---|---|---|---|
価格 | 550円(税込) | 550円(税込) | 770円(税込) |
サイズ | 14.3×10.7×11.8㎝ | 14.3×10.7×12.7㎝ | 14.3×11.2×13㎝ |
ギア比 | 5.2対1 | 5.2対1 | 5.2対1 |
糸巻き量 (ナイロンライン) | 2号/100m | 3号/100m | 4号/100m |
糸巻き量から考えると、1000は多くのルアー釣りに使えそうで、エサ釣りでも軽量の仕掛けであれば問題ないでしょう。
2000は万能型で、ルアー釣りから波止のサビキ釣りまでできそうです。
3000は、ほとんどのサビキ釣りから、さほど仕掛けを流さないカゴ釣りまでいけそうです。このシリーズの中では3000が一番人気のようです。

ただし、これらは糸巻き量に対してのスペックで、ダイソーから出ている300円のPEラインを巻けば、もっと使い勝手の幅を広げることができそうです。
ナイロンラインだと100mと糸巻量が短いため、フカセ釣りなどで使いたい場合は、3000にナイロンライン1.7号を巻くなどして長さを稼いだ方がよいでしょう。
作りはどうか

手にとった瞬間プラ素材にしては重く感じ、剛性感があります。ハンドルを回してみてびっくり、普通です。いや、輸入リールの廉価品であれば、こんなによくない商品もあるでしょう。
それだけコストパフォーマンスが良く、初心者が手にとっても、みなさんが言う「イマイチ」がどこなのか分からないはずです。
1万円以上のリールを使っている人なら構造の違いが分かるかといわれても、はっきりと「ここが違う」といえない人もいそうです。もちろん巻き比べてみると違いが分かってきます。

中でも気になるのがドラグ機能。最近の国内メーカー製品のミドルクラスに採用されているようなドラグ機構と違い、廉価版に採用されている機構をさらにコストダウンした感じです。
写真を見ていただければ分かるように、ドラグはプラスチック製のツメと金属製の歯車でつくられています。
この仕組み自体はよいのですが、ツメが歯車に引っ掛かる強度が強く、スプール逆転時の音は「カッカッカッカッカッ」という感じになります。国内一流メーカー品に慣れた人なら懸念するでしょう。
でも、ダイソーで売られているリールを上から目線で見ればツッコミどころはあるかもしれませんが、このクオリティで550円なら許せます。
現在、釣り具の多くは海外で生産しています。つまり、新旧はあれど、技術的には元は日本から出たものが多いということです。懐かしささえ感じます。
見た目はどうか

釣りに慣れた人なら、正直物足りなさを覚えます。でも、見慣れると不思議と違和感がなくなってきます。よく考えると、釣り具は金や銀など、反射素材や発色の良い塗装が多様されています。つまり「派手」なのです。
その点、ダイソーリールはスプールは金色系ではあるものの、素材はABS樹脂でしょうか? どちらかといえばつや消しです。全体的にプラスチックが使われているため、物足りなさを感じます。釣り人は派手好きが多いのです。
劇的に使いやすくする要点

回転はスムーズですがドラグ性能がいまいちと説明しました。しかし実は最大の注意点があります。それが注油です。
リールを分解せずとも分かりますが、明らかに駆動部への注油が少ないです。コスト面もあるでしょうが、ここが釣り具専門メーカーとの大きな違いでしょう。コストダウンしても重要な部分には手を抜かないというところです。
注油が必要な部分はこの後の「ダイソーリール大分解」のパートで説明します。その通りするだけでも巻き心地などは改善するはずです。改造やカスタマイズする前に、まずは試してください。
次に、スプールへラインを巻き取る際の調整。リールハンドルを回すと、スプールが上下することで均等に糸が巻けるのがスピニングリールの特徴。
ラインの巻き取り量とスプールの上下動が合ってないと、偏ってラインが巻かれてしまいます。メーカー品なら調整ワッシャーが付いているものもあります。
ダイソーリール1000を見てみると、金属歯車の上に1枚ナイロンワッシャーがセットされています。これを増やすとスプールが上がることになります。ナイロンワッシャー1枚の厚みは0.5㎜です。
もし、スプールの下側にラインが多く巻かれているのであれば、ワッシャーを薄くすとよいでしょう。上側が多いなら厚くします。ワッシャー自体はプラスチックなど、滑りの良いものが適しています。
ここはスプールと擦れる部分なので、耐久性も必要です。同じくダイソーで売られているPPシートなどを加工して作ってもよいでしょう。ここにも注油をお忘れなく。
ダイソーリール大分解
ドラグ

ダイソーリールは一般的なフロントドラグ式。ドラグノブ(ネジ)を調整してスプールとの摩擦でドラグを効かせます。

ドラグをより細かくサポートする部分であるバネ。樹脂製のため細かな設定は難しく、少し硬いように感じます。

この歯車に樹脂製のバネが掛かってドラグ音を出します。最近はドラグ爆音など流行っているからかダイソー音もでかい!?

ドラグノブを外すと座金が出てきます。樹脂製の留め具を一つずつ広げて座金を全て取り出します。

左から右へ、重なっていた順序。注油できるフェルト3枚には油が塗っていませんでした。ここは注油必須部分。

フェルトにはしっかりとグリスを染み込ませます。できればリールドラグ用がよいですが、なければできるだけ粒子の細かなものを選びます。
内部構造

カバーを外したところ。最新式ではないものの、一般的に見れれる構造。グリスはしっかりと塗られていました。

ドライブギア上部にはナイロンカラーがセットされているので注意。外すと下からも同様にナイロンカラーが出てきます。

この左右のナイロンカラーをベアリングに交換するカスタムが多いです。適合ベアリングは厚み3㎜でDDL-740ZZ、MR74ZZなど。
ドラグギアシャフト

上から見て右側のナイロンカラー部分。シャフトにくっついているのでベアリングを入れるならワッシャー必須です。

左側はこのようにワッシャーが入っているからくっつかない。ベアリングを入れるつもりだった?

ドラグノブ。ギアを見れば細かな設定が可能なことが分かりますが、樹脂製の突起で制御しています。性能的には十分ですがバネがいまいち。
メインシャフト

ボディの分解はスプールを外して金色のネジを外すことから始まります。ここのネジは逆ネジなので注意。左回しで緩めます。

分解すると正・逆転機構が見えます。ここもパーツは樹脂製でできています。ここにはグリス不要。

写真はすでに外していますが、メインシャフトは本体を分解しないと外せないので注意。2本のネジを外します。
ベアリング

唯一のベアリング。外径14㎜×内径7㎜×厚み5㎜。交換するならDDL-1470ZZやMR147ZZなど。
ベイルアーム

ラインローラー部のネジを外すとシルバーに塗装されたカラーの中からナイロンカラーが出てきます。

ベイルアームは太くて頑丈◎。180度ねじることで外すことも可能です。メンテナンス性が良いです。
ラインローラー

ラインローラー部のナイロンカラーをベアリングに交換するなら、厚み2.5㎜でDDL-740ZZ、MR74ZZなど。

外側のカラーの向きに注意。間違えると回らなくなるから、セットしたら必ず確認すること。
まとめ
まずはよろしくない部分からだと、
①ドラグの感触と音。なめらかではないところ。
②スプールの横方向のガタツキ。回転時はあまり気にならないが、大きな負荷が掛かると不安。
これくらいです。触るほど550円という金額が全てを打ち消すかのように「このままでよくね?」となります。
ドラグ音は最近爆音化というのがあり、気にしないならこのままでも大丈夫。クリック感が気になるなら、樹脂バネの突起部を丸くするか、ギアのサイズを変更するかでしょう。
スプールの横方向のガタツキは、メインシャフトからくるものでこれ以上どうしようもありません。逆に、よくこれで収まっているくらいです。
本来はカスタムした姿をご紹介する予定であったが、いじるうちに必要ないことが分かりました。しかし「改造して楽しむ」人たちにとっては格好の材料でしょう。パテ埋めして形状を変えても面白そうです。