オキアミを何かに漬け込んだものを「漬け(ヅケ)」と呼びます。漬け込み方はさまざまで、著名な釣り人の手法で作ったものを名前を冠して「◯◯漬け」などといいます。
漬けの始まりは、ツケエを確実に食わせたいという思いから生まれたものです。本来は生だったオキアミを長持ちさせたり、良いものだけを選別したパック入りのツケエから始まったことです。アミノ酸配合、ハード加工、黒変防止など「使いやすいツケエ」として幅広く使われるようになった中で、自分の釣りに合わせたツケエを追求した結果、オリジナルのツケエを市販品と合わせてローテーションに組み込むようになったのが現在のフカセ釣り用のツケエです。

漬けには二種類ある
集魚材パターン
食わせるツケエとして言われだしたのが、「マキエの中からオキアミを取る」というもの。「マキエとツケエの同調」を強く意識していたころの話。当時、マキエの中に含まれるオキアミは食うが、ハリに付けたオキアミは食わないといったことから、いかにマキエに紛れ込ませて食わせるかというのがテーマとしてありました。その結果がマキエの中のオキアミです。
もちろん、絶対に食うということはありません。それにマキエに混ぜているものだから、形も奇麗ではなく、形の良いものを探してツケエに使うというものでした。その後「使用している集魚材に加工オキアミをまぶす」ようになり、形状の奇麗なツケエが現場でもすぐに作れるように紹介されました。

添加剤パターン
ツケエにオキアミを使うのがグレ釣りの主流だったころ、シバエビのムキミを使ってトーナメントに勝った例から、特に九州でムキミが爆発的に広まりました。シバエビの殻を剥き、味の素漬けやアミ漬け、ウニ漬けが多く好まれました。ツケエを漬け込むための液体もメーカーから販売されるようになり、添加剤は一般的となりました。
漬けの目的
現在では、この2種類の漬け方をミックスしてオリジナルのツケエを作る人が増えています。本来の目的はツケエを率先して(美味しく)食わせることですが、マキエに紛れさせることで違和感なく食わせるということも重要視されています。ただし、当日の状況によってオキアミ生が当たりエサになることもあり、オリジナルツケエだけでは通用しない日もあることを理解しておかなければいけません。とはいうものの、「漬け」が爆釣エサとなる確率は高いから、自分に合った漬けを作り出し、ぜひ、爆釣を体験していただきたいものです。

漬け作りの基本
ただ何かに漬け込めば良いというものではありません。まずは本来の目的を持った漬けを作ることが大切です。そこから自分なりに改良してオリジナルツケエを完成させるほうがよいでしょう。
また著名な釣り人の真似をする場合は、マキエの配合パターンや水分量、仕掛けも真似しないと同じ釣りにはならないことを知っておきましょう。マキエの比重やツケエの比重、さらにはハリやラインの重量、仕掛けの張り方までを再現しないと違った釣りになるからです。だから「自分に合わせる」というのが一番手っ取り早いのです。
漬けの基本条件
- 当日使用するメインの集魚材を使う。
- マキエに混ぜるオキアミのサイズに合わせる。
- マキエとツケエに使用するオキアミの水分量は、かけ離れないようにする。
これが基本です。特に集魚材漬けにする場合、集魚材がオキアミの水分を吸ってしまい乾燥気味になったり、身が硬くなる場合があるので注意しましょう。
手軽にできる漬け方
釣り当日でもできる漬け方です。昔から行われていた手法で、現在のようにツケエを何種類も持ち込まない時代に、食い方に合わせて調整できる手法です(ただしウニ漬けは数日前から漬け込んだ方が効果があります)。
アミ漬け
昔から使われている漬け方です。集魚力アップの狙いもありますが、現在のように加工技術が優れていないときに、黒変防止や乾燥防止として使われることも多かったようです。常温で保存できるサビキ釣り用のアミチューブが便利です。マキエにも使えるから磯バッグに忍ばせておきましょう。
味の素漬け
「旨味成分アップ」という触れ込みの元、オキアミだけではなくエビ類にも好まれた漬け方。味の素は手軽に入手できるので重宝します。
ウニ漬け
ウニの程度にもよりますが、簡単なのは瓶詰めのウニを使ったもの。ウニの食べ残りをみりんで薄めてからツケエを漬け込むと浸透しやすくなります。
液体漬け
市販のオキアミ用液体を使った漬け。釣り場で混ぜるだけなので、当日の食いに合わせて調整できます。ただし、漬け込み時間により効果も変わるので、釣り場に行く前に漬け込みを開始するほうがよいでしょう。集魚材と一緒に使う人も多いです。
粉末・添加剤漬け
現場でサッと使えて量が調整できる粉末タイプも便利。「マルキユー ウマミパワー」は砂地が多い場所はイソメ、根が荒く甲殻類が多いところではエビなどの楽しみ方もできます。
集魚剤漬け
一晩以上冷蔵庫で寝かせるのが基本。水分の調整もできるしオキアミにしっかりと集魚材の成分が染み込み、マキエに入っているオキアミよりも強力な集魚力を持ったツケエに仕上がります。
作り方

①素材となるオキアミを選びます。マキエにSサイズを入れる場合は同じサイズのオキアミを選ぶのが基準。余裕があればSMLで作るとよいでしょう。

②今回ブロックではなく選別された生タイプのオキアミを選択します。ほとんど頭を取って使うことが多いのと、後でハサミでカットしてサイズ調整したいのでLLサイズを選択しました。

③液体の添加剤を使用する場合は集魚材を入れる前にここで漬け込むようにします。最低でも3時間ほどは染み込ませるようにします。商品により目安がありますので、チェックしましょう。

④液体添加剤を十分に染み込ませたら、液体を全て捨てます。水っぽくなっている場合は、キッチンペーパーなどで水分を拭き取り、少し乾燥させるとよいでしょう。

⑤釣行日に使用する集魚材のベースとなる素材を選びます。集魚材をミックスする場合は同じような配合にするとよりマキエに近くなります。

⑥大きめの容器にオキアミと集魚材を入れて、潰さないように指でまんべんなくまぶします。ツケエが凍っている場合は解凍してから行いましょう。ビニール袋の中でも行えます。

⑦タッパーに入れます。余分な水分が落ちるスノコ付きが理想ですが、ない場合は一番下に集魚材を多めに入れ、次にまぶしたオキアミ、その上に集魚材を振り掛けます。

⑧チルド室や野菜室に入れて熟成させます。2日もあれば水分調整されたツケエができあがりますが、1週間ほど熟成する釣り人もいます。変色や身が崩れなければ問題ありません。出来上がったものは小分けにしておくと必要な分だけ取り出せて便利です。

ただし、このやり方だと頭が潰れてしまう個体が多いです。元のオキアミの選定も大切です。水分が多いと感じたら少量の集魚剤に混ぜておくと適度に吸い取ってくれます。
注意点①/何度も繰り返しますが、水分調整が大切。釣行日まで冷蔵庫に入れたままほったらかしにするのではなく、慣れるまでは朝・晩のチェックが必要です。水分が多い場合は乾燥させればよいですが、逆に身が乾くほど乾燥してしまうと身が硬くなり厳寒期にはハードすぎるツケエになります。
注意点②/土台となるオキアミに左右されるのが鮮度の持ち方。さらに見た目は良くてもオキアミの身が硬くなりすぎてハリに刺すと崩れてしまうときがあります。漬けを作ったら、必ずチェックしてから持っていくようにしましょう。もしだめな場合はマキエ用として使います。
2日間の集魚材漬けの後、さらに2日間アミ漬けにしました。より熟成度が上がりアミの赤さと匂いが染み込みより集魚力の高いツケエが完成しました。水分が多い場合また集魚材にまぶして再調整しましょう。


オキアミ不凍加工
数年前からネットやYoutubeで紹介され、話題になっている自作オキアミハード加工。漬けとは違いますが、漬けのベースを自分で作れるということで、一部紹介します。
用意するもの
- ブロックオキアミ
- 本みりん(みりん風は×)
- 砂糖か粗塩
- ザル、タッパー
※使用した本みりん液はマキエに混ぜたり、漬け用の液として再利用できます。
作り方
①オキアミを選別する
ブロックのオキアミを購入し、形状がしっかりしたものを選んでサイズ分けします。
②ザルにオキアミを入れる
水洗いなどは必要ないので、選別したオキアミをサイズごとにザルに入れます。水分が落ちるのでボウルなどを重ねます。
③砂糖(または粗塩)を振り掛ける
オキアミの余分な水分を抜くため、砂糖か塩をまんべんなく振り掛けます。これは浸透圧を利用して水分を抜く作業で、身が少し硬くなる程度(3時間以上)冷蔵庫で寝かせます。ときどき混ぜてやるとムラがありません。いわゆる脱水状態となり、水分がない=凍りにくいということになります。
④本みりんに漬け込む
黒変防止効果と劣化防止のため、本みりんに1日ほど漬け込んで完成。これが漬けのベースエサとなります。もちろん、このままツケエとして使うことも可能。オキアミ生よりも少しハードに仕上がります。水分が少ないため直射日光に当てないことと、気温が高くなりすぎなければ再度保存が可能なほど劣化しにくいです。
Before

After

白っぽかった冷凍オキアミが、透明感あるツヤツヤのオキアミになります。魚の食いは置いといて、ハリへの装餌は格段に良くなり、粒揃いのため使いやすいです。
おすすめ! 真空パック機
家庭用に販売されている真空パック機(フードシーラー)を持っていると、ツケエを長期保存できるので便利です。小分けして保存しておけば必要な量だけ持っていけるし、開封していなければ余っても再度保存することが可能です。さらに釣って食べきれない魚や残った身を真空パックにして冷凍保存できるから、大変重宝します。