あえて太タックルで挑み、グレに食わせる

ハリスは細い方がよい、ハリは小さい方が食いがよいという釣りの「常識」があります。ガン玉はない方がよい、ウキは小さい方が食い込みはよいというのも同様です。ビギナーはそう教えられ、唯々諾々と従います。ですが、本当にそうなのでしょうか? ハリスが細いと切れやすいともいいますが釣り人にしてみたらハリスは太い方がよいに決まっています。単に、太いと食わない、食いが悪いと教えられたから細いハリスを使っているにすぎません。

ここで問い直したい。太いと食わない、食いが悪いというのは本当なのでしょうか? そして、それが本当だとしたら、その理由はなんなのでしょう? それが判明すれば、操作や他の仕掛けを工夫することでハリスが太いという弱点をカバーできるのではないでしょうか?

それを自分で試してみようというのが本記事のテーマです。

常識と言われる戦術には訳がある。その理由を知れば弱点をカバーする方法も見えてくる。

最初に断っておきます。釣り人の皆さんが釣れるか釣れないかを試すのは魚の活性が高いときにしかできません。

活性が低く、どんなに細いハリスを使ってもなかなか食わないときはテストなどできっこありません。太いハリスを使ったため食わなくなったかどうかが判別できないのです。

そこで、活性が高く入れ食いに近い状態であえてハリスを太くしたり、ハリを大きくしたり、ガン玉を大きくしてみたりしてテストします。その結果を見て「常識」が本当かどうかを判断するのです。

そのため、他の釣り人は次々とグレを釣り上げているのに、自分一人だけが食わせようとして必死になることが往々にしてあります。最終的に港へ戻ったとき、クーラーボックスにはわずかな釣果しか入っていないことも珍しくありません。

したがって、目先の獲物を望む釣り人にこのテストはおすすめできません。スキルアップを図り、1年、3年、5年後に目標をおいている釣り人にこそこの記事を読んでいただきたいのです。

正直言って、今という時代は釣行費がバカにできません。渡船、マキエ、交通費などをトータルすると軽く10,000円を超えてしまいます。ささやかな釣果を考えるとやってられないトライアルかもしれません。改めて、将来を見据えていることを強調しておきます。

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目がよい魚は太ハリスが見えるから警戒する!?

目がいとされているグレですが、本当にハリスを見破っているのでしょうか?

最初にハリスから取り上げてみましょう。太いハリスと細いハリスの違いを見るため、実際に1.5号と5号のハリスを使って比べてみることにします。

最初に気づくのは、ハリスが太いとハリを結びづらいことです。特に、細軸の小バリはしっかり締めるのが難しいです。2〜3号なら少しは楽になるものの、それでグレバリ3号を結ぼうとすると、やはり同じ壁にぶつかります。太いハリスは小バリに適応していないのです。

同じ問題は道糸との結節にもいえます。大半のグレ釣り師は、直結という方法でハリスと道糸を結んでいるため、直結を前提に話を進めますが、太いハリスと細い道糸を直結するのは非常に難しいです。

一般に、道糸の太さはハリスの1ランク上とされています。ハリス1.5号なら道糸は2号、または2.5号というのが標準で、これは高切れの防止を考慮しています。

昨今はラインコントロールの重要性が注目を浴び、また品質の向上もあって道糸はより細くなっています。そういう状況でハリスだけを太くすると、通常の結び方はできません。編み込むなどかなりの手間がかかるようになります。

このように見てくると、改めてトータルバランスの重要性が浮上してきます。竿、道糸、ハリス、ハリのサイズはトータルでバランスを取っているのであり、一つ、二つだけが太かったり細かったりするとバランスが崩れ、それぞれの能力が十分に発揮できなくなります。

ハリスが太いと糸グセが取れにくく馴染みも遅い

小バリが結びにくいにしろ、5号ハリスでなんとか締めることができたとしましょう。次は、その仕掛けを海に投入してみましょう。すぐ気づくのは巻きグセが取れにくいことです。グルグルと回っていてその状態で沈もうとします。引っ張って真っ直ぐにしてもすぐ戻ります。フロロカーボンにはナイロンより硬いという特徴があります。そのため、スプールから引き出したら何度も強くしごき、糸グセをできるだけ解消する必要があります。

さらに、太いハリスは沈むのが遅く、馴染むのに時間がかかります。やはり海水の抵抗が大きいのでしょう。フロロカーボンの比重は1.78で、ナイロンの1.14より重いのですが、馴染みが早いか遅いかは太い・細い方が大きく影響するようです。もっとも、この抵抗が大きいという特性を利用しているベテランもいます。道糸とハリスの間にもう一本のハリスを入れる「二段ハリス」という使い方です。

かつて、一世を風靡した水中ウキという存在があります。その役目をハリスにさせようというわけです。水中のウキは抵抗を受けすぎてツケエより先行してしまうという弱点がありますが、ハリスの抵抗は小さいです。また、ツケエに近いためラインコントロールで操作できるという利点があります。二段ハリスのもう一つの目的は、ウキを沈めやすいという点にあります。フロロカーボンは重たく、太くすることでその効果は大きくなります。ガン玉に頼らなくてもウキが沈むとすれば、その魅力は大きいです。

太いハリスはどの方向から光が射しても反射する

昔々、チヌやメバルは目がよいからハリスを見分け、警戒するためできるだけ細いハリスを使うべきだという「常識」が広く浸透していました。しかし、昨今では魚は視力が弱く、さらに水中は視界が悪いため、単純に魚にハリスが見えるとは言われなくなりました。たとえ見えたとしても、それが危険なものだとは知らないはずです。エサのそばを流れているゴミのようなものだと認識しているに違いありません。

では、太いハリスのどこが魚の警戒心を刺激するのでしょう? 現在では、反射とツケエの不自然な動きが原因と見なされています。糸グセが取れにくい点と相まって、太ハリスは光を反射しやすい。直線になっていれば反射しなくても、クネクネと曲がっていると反射します。

仕掛けを巻き取ったり、誘いをかけたりすると反射するモノは大きく動きます。小さいと気にならなくても(活性が低いと小さくても気になる)、自分の体よりも大きな存在は魚にとって脅威であり、特に臆病なグレは驚いて逃げ出しかねないです。

マキエとは異なる動きをすると魚は警戒する

細いハリスの利点。太いハリスの利点をしっかり把握し、使いこなしましょう。

マキエのオキアミは、ツケエと違ってハリもハリスも付いていません。そのため、流れを受けると素直にそれに従います。しかし、太いハリスは流れの抵抗を大きく受けます。その結果、マキエとは異なる動きをすることになります。

もともと、マキエとツケエは違うものです。「ヒモ付き」のツケエとフリーなマキエにまったく同じ動きをさせるのは不可能なことです。ですが、細いハリスを使うと潮の抵抗が抑えられ、よりマキエに近い動きをするようになります。

では、太いハリスではツケエの違和感を解消することはできないのでしょうか? その答えが同調であり、仕掛けの張り、そしてツケエの先行になります。同調させるとツケエをマキエに紛らせることになり、短時間にしろマキエと同じ動きをします。グレにとってはツケエもマキエも同じに見えるでしょう。

仕掛けに張りを作ると太ハリスをカバーできるのはなぜでしょう? まず、ハリスを極力真っすぐにすることができます。ヨレていると光を反射しやすいのは前述した通りです。仕掛けを張ればそれを少しでも解消できます。次に、食い込んだとき抵抗が変わるのを防ぐことができます。グレがツケエをくわえて反転したとき、ハリスがヨレているとガン玉、そしてウキの抵抗が次々にかかります。グレはそれを嫌ってエサを離す可能性が高いです。仕掛けを張っていると、抵抗は大きいものの途中で変わることはありません。

ツケエを先行させると、ハリスが受ける流れの抵抗を最小限にできます。あくまでもツケエの流れが優先され、ハリスやウキがそれを妨害するのを最小限に抑えることができるのです。

食いが良いのはやはりガン玉なしの完全フカセ

ガン玉がある仕掛けと、ない仕掛けを比べると

ガン玉はない方が食いは良い。そのことは皆さんよく知っているでしょう。ですが、流れの中でツケエを沈めるには欠かせないということも分かっています。

ガン玉をまったく使わず、自然のままに仕掛けを漂わせることを完全フカセといいます。ガン玉がないからツケエのタナを確保できず、流れが速い釣り場ではほとんど出番はないような気がします。しかし、どのような仕掛けを使っても食わせることが難しい状況では、無類の強さを発揮します。食い渋ったグレにはガン玉がない仕掛けがかなり強くアピールするらしいです。そのアピールする理由はなんなのでしょう?

ガン玉があるとツケエは急速に沈みます。そして、ガン玉がなじんだ時点でツケエはゆっくり沈みだします。対して、完全フカセは水面からゆっくり沈んでいきます。仕掛けの張りやツケエの先行には一切こだわりません。それでもグレは食うのだから、張りやツケエの先行は一体なんなのだろうと感じさせられるものがあります。

完全フカセと半遊動、移動ウキの違いとは

ここで皆さんに質問をしましょう。

「半遊動と移動ウキの違いを明確に述べてください」

移動ウキはオモリのサイズが大きいとか、流すタナが深いというのでは正解になりません。半遊動でも潮が速く深ダナを流すときは大きなガン玉を使います。

答えは、ツケエの落ち込みにある。移動ウキでは仕掛けが馴染んでから臨戦態勢に入ります。対して、半遊動ではガン玉が馴染んでから食わせる態勢に入ります。つまり、ツケエが沈んでいる途中でも食わせられる態勢に入っています。そのため、探るタナが広くなるのです。

一方で、完全フカセは着水直後から食ってくる可能性があります。

このように見てくると、移動ウキは別にして、完全フカセと半遊動の違いは単に探る範囲の違いということになります。ガン玉のサイズは関係ありません。しかし、それでは皆さん納得できないでしょう。グレのタナがそんなに浅いとは考えられないからです。

では、完全フカセだと釣れるが、半遊動では食わないという場合、なにが違うのでしょう?

ツケエが沈む角度とマキエの角度の違い

これから先で触れる問題は、実はまだ実証例が少なく、多くの釣り人の賛同を得るに到っていません。多分そうではないかという推測の域を出ていません(釣りの世界では非常に多いことですが)。そのことを断っておき、先に進みます。

現在では、マキエとツケエ、それにハリスの角度との関係が有力視されています。

ガン玉があると、ツケエはそれを起点とした沈み方をします。潮が動いていなければ真下に、流れがあるとそれに乗り、仕掛けを張っていれば扇状に沈んでいきます。一方、完全フカセでは最初から潮に乗り、ゆっくりと沈みながら流れていきます。

ガン玉があるのとないのとではそこが大きく違います。たとえ同調していても、ツケエの沈み方、流れ方が異なるのです。特に、沈む角度はまったく違ってきます。となると、一時的にマキエと同調しただけでは(活性の落ちた)グレは食ってくれないことになります。彼らは瞬間を捕らえているのではなく、時間の流れの中でマキエとツケエの動きを見ているらしいです。したがって、完全フカセが有利な状況「無風、ベタ凪で流れが緩い場合」は、ガン玉を使うと非常に食わせづらくなります。

では、風も波もあり、流れが緩くないときはどうなのでしょう? そういう条件でガン玉がなければ、かえってマキエとは異なる動きをします。ウキや道糸、ハリスが風、波、流れの影響を受け、それがツケエの自由な動きを妨げるのです。言い換えるなら、ツケエにマキエと同じような動きをさせるためにガン玉を打つと思えばよいのです。タナの確保やウキの喫水をコントロールする以外にも、ガン玉は役立っていることになります。この場合のガン玉の選択は難しいです。重たいとツケエが沈む角度のコントロールはできなくなります。ガン玉が馴染んで次に仕掛け全体が馴染みます。それからの勝負しかできません。

大バリで食わせるのは難しいが技術は向上する

かつて、大バリから一斉に小バリに切り替わった時期がありました。それ以来、グレバリは4〜5号が中心となっています。それをあえて大バリで試してみます。

小バリだと食わせやすいその理由はなんだろう?

2000年代に入ってグレは総体的に食い渋るようになり、食わせるのがどんどん難しくなっていきました。そんなとき登場したのが小バリであり、単にハリを小さくするだけでよく食うことが分かり、釣り人は一斉に飛びつきました。現在ではそれが定着し、グレバリは4〜5号がメインとなっています。7〜8号を使う人は少なく、どうしてもアタリがない場合は3号を用いる釣り人さえいます。

さて、グレが大バリは嫌い、小バリなら気にしない理由はなんでしょう? 大バリは重たく、それが原因でツケエの動きが不自然になるというのがその回答になります。ハリの重量というのは近年注目されており、軽くするために細軸で強靱なハリが開発されています。反対に、ツケエを先行させるのに都合がいい太軸のハリもあります。口オモリの代用をさせようというわけです。

ハリが重たいとツケエが早く沈む。上昇流に乗っても浮上しません。その一つ一つがマキエとは異なる動きをします。グレはそういうところを警戒するのです。

シビアな同調、張りを作れば大バリでもヒット

大バリにもメリットはあります。なんといっても掛かりがよいことで、しかも強いからひとたびハリに掛かればバラすことはありません。これは釣り人にとって非常に都合がいいです。

ハリが小さいとアワせたときスッポ抜ける確率が高くなります。それを避けようとすれば完全に飲み込ませる必要があり、そのためにはアワセのタイミングを遅らせるしかありません。

ところが、尾長でそれをやると歯でハリスを切られることになります。尾長がアタる可能性が高いところでは、できるだけ小バリを使いたくありません。となると、大バリで対応するしかありません。グレ釣り師であればこういう状況に直面することは珍しくありません。そんなときのために、普段から大バリで食わせるトレーニングをしておきたいところです。

幸い、ガン玉と違って、ハリの場合は大きくてもやり方次第では食わせることが可能になります。やり方というのは一つは同調であり、もう一つは張りになります。

二番目の張りについては、実はこの方が重要だと思っていいでしょう。理想は少し上ずる程度まで張り、仕掛けにはまったくたるみをなくします。張りすぎるとグレのタナから外れる可能性があり、その点が難しいです。

大バリでもゆっくり沈めることはできる

シビアな張りと同調である程度グレの警戒心を緩めることはできますが、大バリの弱点である重さをカバーするのは不可能です。そのため、投入されたツケエはマキエよりも早い速度で沈んでいきます。それでは大バリの弱点をカバーしたことになりません。

それを解消するには、意識してツケエをゆっくり沈めなければなりません。それが、ルアー釣りで用いられるテンションフォールです。道糸を張ったままでいると仕掛けはゆっくり沈む。ウキは手前に寄ってくるから、それを予測してマキエを打ちます。仕掛けを張っているため沈む途中でも小さなアタリは表れます。磯際なら道糸をゆっくり送ればツケエは小バリ並みにゆっくり沈んでいきます。

大きくて重たいウキなら沈めれば抵抗は小さい

ウキの抵抗を抑えるのはそれほど難しくはありません。全遊動や沈め釣りにすれば魚の食いを妨げることは少ないです。風や上潮の影響は沈めれば対処できます。

小粒&細身のウキは抵抗が小さい

警戒心が強いとき、食い渋ったときなどは抵抗の小さいウキを使います。それが釣りの世界では常識とされています。小粒タイプや細身のウキはそのために開発されたものです。

一方で、下膨れのどっしりしたタイプもあれば、自重20g以上という大きなウキもあります。前者はチヌ釣りでよく使われるもので、ツケエがフラフラしないようにウキを水面でどっしりと固定させるために使用します。大きなウキは超遠投、または速い潮に乗せてはるか遠くまで流すときに使われます。決して視認性を高めるためではありません。向かい風でも遠投できるように、また遠くまで流したとき道糸が風や上潮の影響を受けてもウキがマキエのラインから外れないようにするためです。

では、この下膨れタイプや大きなウキを足元〜中間距離で使うとグレは釣れないのでしょうか? 問題は二つあります。繊細さが要求される状況では風や波、上潮の影響を受けやすいため、同調が難しくなります。風や波、上潮の程度によっては不可能ではないものの、相当に神経を使う必要があるでしょう。

もう一つの問題は食い込んだときの抵抗にあります。活性が高いという前提でテストしている限りは、食い込みにさほど影響はしないでしょう。小型棒ウキのように極端に抵抗の小さいウキよりも、かえって食い込みがいいかもしれません。

生きているエビをくわえると、エビは逃げようとして抵抗します。すると、魚は逃がしたくないからさらに食い込もうとします。ウキの抵抗が大きければこれと同じ反応があり、食い込みがよくなるケースもあります。この辺りは自身で体験していただきたいところです。

全遊動&全層ならウキのサイズは関係ない

次に、活性がそれほど高くない場面で下膨れタイプや大きなウキを使うとどうなるかを見てみましょう。問題はやはり食い込んだときの抵抗になります。

仕掛けを張っていればガン玉、ウキの抵抗が順次加わったとしても魚に掛かる負荷は変化せず、エサを離す確率は低いです。したがって、ウキの抵抗はある程度解消されるものの程度によります。ビンビンに張っていても食い渋ったグレに食わせるのは難しいです。

そういう場合は全遊動&全層の方がてっとり早いし確実です。登場した当初は、ウキ止めがないとウキは沈むわけがないと考える人が多かったのですが、今では完全に市民権を得ています。全遊動も全層釣法もウキ止めがないため、食い込んだときに抵抗はかからず、魚は一気にエサを飲み込むのです。ウキのサイズはまったく関係ないことになります。

全遊動、全層釣法ともまだ未体験の釣り人が多いと思いますが、ぜひ挑戦してみてほしいものです。

いくら沈めていてもウキの抵抗はかかる

最後に沈め釣りについて触れておきます。沈めてしまえば風、波、上潮の影響から免れるため、少々ウキが大きくても問題はありません。完全に沈むまでの短時間に注意しておけばよいでしょう。

しかし、食い込んだときの抵抗はそれなりにかかります。

カン違いしている釣り人が少なくないのですが、いくら浮力が殺されているといっても、ウキを動かそうとすればエネルギーが必要になります。物体には質量というものがあり、体積と重量に比例します。大きいウキを動かそうとすれば大きな力が必要になるのです。

潜水艦を例にとれば分かりやすいでしょう。いくら浮力がゼロといえ、人間の力で水中の潜水艦を動かすことはできません。同様に、大きいウキはいくら沈めていても抵抗は大きいです。小さいウキだと離さなくても、大きければ魚が離す確率は高いのです。

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