釣友と磯に上がり釣り座を決める場合、みなさんはどう決めていますか? 相手が先輩の場合、言われるがままに釣り座に着くか、遠慮するかになりますよね。
逆に仲の良い友や後輩となら、釣れたら交代ということも考えて決めるかもしれません。どちらにせよ、実績のある釣り座というのは存在し、朝一に釣り座を決めた瞬間から50%は勝負が決まっているようなもの。潮下などあまり関係ないことが多いです。
しかし、残り50%は経験や知識でカバーすることができます。その知識をご紹介しましょう。
ライバルに勝つ釣り座とは?

最悪の条件とは
ここからは磯に2人という設定で考えていきます。自分の右に敵(ライバル)が釣り座を構えていると想像して読み進めてください。
仕掛けが流せない
磯に限らず、「狙える範囲が狭い」というのは、マキエを使うウキフカセ釣りにとって最悪なパターンとなりやすい。ピンポイントで食う場所は別として、こんな場所では、もはやノベ竿で釣っているのと同じ状態です。
これは他の釣り人と釣り座の位置が近い場合や、左右どちらかに障害物がある場合に起こります。
潮が一方通行

例えば右に流れる潮が終日続いたとしましょう。自分の右側に敵が居るわけだから、いくら仲の良い場合でも相手の目の前までウキを流すと仕掛け回収となります。これがいわゆる「潮下に陣取る敵」という事です。
「あと10m、いや5m流すことができれば食うのに……」
こんな経験は誰しもあるでしょう。
「もっと仕掛けを流してもいいよ」
こんな敵のやさしい声に甘えて仕掛けを流しても、案外食わないもの。しかも、敵の陣地内で勝負させてもらっているのだから、これで釣れなかったときは、敗北感をより大きく感じてしまいます。
まずは潮の流れを知る
まだまだ最悪となる条件はありますが、「潮下の敵に勝つため」というテーマでここからは進めていきましょう。
潮上に居るといっても、単純な横流れの場合から、引かれ潮的なものまでいろいろとあるでしょう。
ウキを浮かべて釣りをする場合、その動きを見て潮の流れの情報を得るのが一般的。さらに、仕掛け回収時に仕掛けが上がってくる方向や潮の抵抗などの情報を加算して、海中の流れを想像しましょう。では潮の流れの確認方法から考えていきましょう。
ウキを浮かべて確認

これは誰しもやっていることでしょう。沈め釣りオンリーの人なら、一旦ウキを浮かべて調査することをおすすめします。表層流と中層〜下層の流れは想像以上に違っていることが多いものです。流れる方向が同じでも流速が違ったり、海底にある障害物の影響で海表面には現れない湧昇流があることも多いです。まずはウキを浮かべて流れる道筋はもちろん、仕掛けの角度、ウキの傾き具合など多くの情報を得るようにしましょう。
表層よりも下の流れが速い場合
ウキフカセ釣りでは理想の流れともいえ、ツケエ先行で仕掛けが流れるため、ウキにアタリも出やすくなります。潮下の敵が釣れているのなら、普通にやっていれば潮上の自分にも釣果があるはずです。
ピンポイントでしかアタリがない場合は別として、もし敵は釣れて自分は釣れないなら、単純に狙っているタナが違うことが想像できます。
しかし、半遊動仕掛けで同じウキ下にしても解決できないことが多々あります。それは流す場所が違うからです。同じ仕掛け、同じタナで流しても、潮の変化などで違うタナを狙っているということになります。
解決策としては、より潮になじむ仕掛けが手っ取り早いでしょう。ガン玉など仕掛けが屈折する要因となるものを極力付けない全遊動や全層、00号以下の浮力でゆっくりと沈めることができる沈め釣りなどが効果的。敵のタナに合わせるのではなく、マキエとツケエをより確実に同調させて流すのが優先事項です。

もっと細かくいうと、マキエのどの部分に魚が寄っているか知ることです。煙幕に浮いてきているのか、ペレットやカキガラなどヒラヒラと沈下する中層エリアで食っているのか。または、海底に溜まったマキエに寄っているのかを分析しましょう。
敵のマキエの比重も気になるところで、自分とどう違うのか比較するのも参考になります。もし同じ配合パターンなら、練り具合をチェックすることです。練るほど沈下速度が速くなり底に溜まりやすくなるので、手で触らせてもらって確認してみましょう。
表層よりも下の流れが遅い場合

仕掛けにある程度ブレーキをかけて流したり、一定の距離を流すと引き戻したりしますが、そうするとタナがボケやすくなってしまいます。なので、ここでは1000釣法など仕掛けの補正が少なくて済む釣り方が有効と言えます。ただし、ベタ底で釣れている場合は一気に底が狙えるように5B以上のウキを使った移動仕掛けが手っ取り早いです。
下層よりも上で食っている場合、一定のタナというよりは、マキエに寄っていることが多い。こういう場合は狙う範囲を決めた半遊動仕掛けで狙うのが一般的ですが、ウキ先行で流れる場合、アタリを取りやすくするためにも、仕掛けを引き戻したりの作業が必要となります。そうするとマキエの中からツケエが外れてしまったり、ツケエが不安定になってチヌが食わない原因となりやすくなってしまいます。
仕掛けを潮の流れに乗せ、なおかつ安定してマキエの中にツケエを同調させるのが理想です。この点1000釣法では、仕掛けが全て一体となって流れやすいので、マキエ(煙幕)と同様に沈降しながら的確なタナを狙うことが可能となります。
もちろん、「下の流れが速い場合」と同様に、チヌがどのタナで食っているのかを考えて仕掛けの沈降速度を決めなければなりません。
チヌの移動から考える
潮下の方が有利というのは、マキエが効きやすいからというだけではありません。魚は流れに向かって泳いでいることから、潮下の釣り人の方から魚が泳いでくることになります。
なので、潮下にあるツケエほど魚に遭遇する順位は高くなるわけです。
さらにマキエを撒いているから、そこでストップしてしまい、上流側の釣り人の位置まで魚がなかなか泳いでこないということになります。
マキエを打つタイミングを変える

問題は、潮下の釣り人のツケエには反応せずに、潮上の自分のツケエに反応させたいという、難しい理想。しかし、マキエのタイミングや打つ位置を変えることで難しい理想を現実にすることも可能です。
自分が撒いたマキエは、敵のポイント付近に届いたころには、かなり沈んでいることになります。つまり敵の釣り座前では、敵が打ったマキエが上層に、自分が打ったマキエが下層にと、二段のマキエの層ができていることになります。
このマキエが効いている範囲の広さも潮下の方が有利といわれる要因ですが、潮上ばかり釣れるということもあります。
これは、上層にあるマキエには反応せず、下層にあるマキエを辿って自分の釣り座まで寄ってきたと考えられます。
敵が熟練の場合
熟練なら自分の釣り座付近のマキエの事実を知っているから、自分だけのマキエだけではなく、潮上全ての釣り人のマキエを利用しようと考えるでしょう。
そうなると上から下までのタナをくまなく探っているから、泳いできた魚全てを獲られてしまうこともあるかもしれません。おこぼれの確率も低く、惨敗に終わるでしょう。
しかし熟練の釣り人ほど、1尾掛けると次の1尾が釣れるまで釣れたパターンを再現しようとする傾向があります。
こんな経験はないでしょうか? 隣人に先に釣られてしまい、時合かもと気合を入れマキエを多く撒くと、次の1尾はだれも釣れず、単発で終わってしまった。これが「釣れたパターンを崩す」原因となっています。
相手が釣れたからといって、マキエを乱打して釣れないようにするのはナンセンスなので、自分に釣れるようにマキエの投入パターンを変えてみましょう。

ここでも同様に、どのタナで食ってきたのか確認する必要があります。聞けない状態なら、いっそ相手の釣りを観察して狙っているウキ下を盗み見てしまいましょう。
浅いタナを狙っている場合なら、他人のマキエで食ってきたのではないことが分かります。そうなると、潮上の釣り人としては自分の釣り座までチヌが泳いでくるのを待つしかありません。しかし、ただ待つだけでは面白くないので、マキエを打つタイミングを他人と変えてみましょう。そうすることで、自分が打ったマキエにつられてチヌが自分の釣り座まで寄ってくる可能性が高くなります。
逆に深いタナで釣れた場合は、他人のマキエを利用して釣ったことになります。この場合は、マキエの帯に沿って潮上へと泳いでくる確率が高いです。
対策としては、マキエとの同調を心掛けるか、ダイレクトに下層を流し、下層のマキエに合わせるかです。
もうひとつプラスして言えることは、マキエの量に釣果も比例しやすいということ。かといってドカ撒きはあまり良くなく、断続しないマキエの帯が理想です。少量でもいいから、一定間隔で絶え間なくマキエを撒くこと。チヌにレッドカーペットを敷いてあげましょう。
敵がマキエの効果に気付いていない場合

潮下の釣り人が、自分の釣り座前がパラダイスなマキエ効果に満ちていることに気付かない場合、こっそりとその釣り人の下層を狙わせてもらいましょう。もちろん、その釣り人がダイレクトに下層を狙っていなければの話ではありますが。
下層を狙うといっても、単純にタナを深くして相手の目の前まで仕掛けを流すのはいけません。沈め釣りで見た目には分からないようにして、相手の下層へと仕掛けを送り込むのが礼儀です。
沈みが速めのマイナス浮力のウキが理想で、ガン玉などで強制的に沈めるのは理想ではありません。そうすると自然に下層へ仕掛けを送り込むのが難しくなり、最悪根掛かりが多発するからです。
仕掛けの流し方の理想は、少し張り気味で流し、ツケエ先行で仕掛けが水平に近いように流れる形。流れの速さと沈降速度の調整は仕掛けの張り具合などで調整する必要があります。竿をガッツリと海中に差し込んでしまってもいいです。相手の陣地をこっそりと狙うのだから、それなりの技術は必要です。
マキエで呼び込み
相手が釣れてから動いていては、やはり手遅れになることも多いです。チヌは潮下の真下からくるとは限らず、斜めに遡ってくることも当然考えられます。だから、だれも釣れていないときは自分のポイントへいち早く駆けつけてくれるよう、マキエでマイポイントを作り上げることが大切です。
これは堤防のチヌ釣りでは定番となっている戦法で、広範囲にマキエを撒いてチヌを呼び寄せ、徐々に狭くして思い通りの場所で食わせるというやり方に近いです。
流れが速い場所でも有効で、磯のどこかにマキエが少しでも溜まれば、それを辿ってチヌは近寄ってくれるはずです。ドン深な場所では難しいですが、チヌ狙いの場所であればさほど水深が無いポイントでしょう。

やり方として、扇状に遠投して撒きながら徐々に範囲を狭くするのですが、磯では流れがあるためかなり比重の大きいマキエでないと難しいです。
なので、遠くから近くまでというところに要点をおき、縦軸にマキエを撒きながらチヌの道を作ってあげます。こうすることで縦軸はもちろん、潮下に向かってのアピールも大きくなります。底に溜まるような比重が大きく粒子が粗いマキエを使うのも重要で、流れが変わっても海底で一定時間ゴロゴロしてチヌの道がすぐに消えないことが理想です。
そもそも事前対策はないのか
海底の起伏で決める
冒頭でも書いたように、事前対策は潮上に入らないことです。上げ下げで流れが逆転する場合はより潮下に立てる釣り場を選ぶくらいです。
しかし、潮の流れと横向きとは限らない。瀬に向かって流れる当て潮だったり、沖に向かう潮だったりと、いつも潮下ではないのです。

そもそも、チヌ狙いではグレ釣りに比べて潮へのこだわりは低くなります。それよりもマキエが溜まる場所や、身を隠すことができそうな藻場やエグレなど、地形の変化を重要視する傾向にあります。
だから事前対策としては、潮通しや方向よりも、地形変化などのチヌが好みそうな場所を前にした釣り座選びが重要といえます。
オキアミサイズで差を出す
マキエの配合は人それぞれだが、磯釣りでオキアミを入れない釣り人は少ないでしょう。ここで、配合するオキアミの「形」にこだわることでも釣果に差をつけることができます。
例えば、敵がオキアミを潰したり細かく切っている場合だと、こちらはLLなど大きめのサイズのオキアミを購入し、原型を残したままマキエに配合すればよい。より目立つマキエは、チヌの目にもとまりやすいです。
さらにエサ盗りが多い時期なら、大きいオキアミはエサ盗りの食べ残しも多いため下層まで届き、チヌを寄せるのにもうってつけとなります。チヌはマキエだけではなくエサ盗りのハミ音にも寄ってくるといわれいるので、一石二鳥なのです。
最後はやっぱり腕がものをいう

どんな釣りでも、上手い釣り人ほど手返しの多さが目立ちます。海中に仕掛け(ツケエ)がある時間と釣果は比例するからです。もちろん、ツケエがしっかりとハリに付いており、マキエもちゃんと効率良く撒いているというのが前提です。
手返しが良い=トラブルが少ない・操作が雑ではないということです。
朝一の仕掛け作りをスムーズに終わらせ、一日のリズムを作るために、装餌、仕掛け投入、そして回収までテンポ良く行うことを心掛けましょう。
