すべての海釣りにおいて、潮というのは重要な要素です。潮についての考え方はいくつかありますが、その中でも潮目という言葉をよく耳にしたことがあると思います。
実際、我々編集部でも数々の媒体で潮目という言葉を使ってきましたが、潮目が具体的に何なのかを把握していない釣り人も多いです。
そこで今回は潮目について解説してみます。
潮目とは?

潮目とは単純にいえば「違う性質を持つ海水の境目」となります。
海水といっても実は水質によってグループのように分かれています。この近い水質を持つグループのことを、水塊(すいかい)と呼びます。
この水塊は主に下記の要素によって分かれます。
・水温
・塩分濃度
・溶存酸素
・栄養塩類

なぜ違う性質の水塊ができるかはいくつかの理由がありますが、分かりやすい例のみ選出すると下記のようなものがあります。
・河口により流れてきた淡水と混じり合った海水。
・砂浜や堤防などにぶつかった波が、海では得られない養分や温度を吸収した。
・工業排水や、船、その他人工的な理由で水質が変わった。
水塊は簡単には混ざることはなく、必ず境目となる部分ができます。その境目が潮境と呼ばれ、潮目は表層で目視できる潮境のことをいいます。
では水質が違う水塊がぶつかることで、なぜ魚が集まるようになるのでしょう? 結論から話すと以下の二つが挙げられます。
・プランクトンが多い。
・酸素量が多い。
植物プランクトンが増殖するために必要な要素

植物プランクトンが成長するためには「光」、「栄養塩」、「温度」が必要です。
植物プランクトンが成長するためには栄養塩を取り込み、太陽の光で光合成をしなければなりません。しかし、海中に入る太陽光は10%程度。90%は海面で跳ね返されます。
そのため生きた植物プランクトンは主に表層にいます。
ただし、栄養塩が豊富なのは海面より底のほうが多いです(底に栄養塩が多い理由は少し複雑な話になり、本筋から外れてしまうのでここでは割愛します)。
植物プランクトンが成長するために必要な要素が表層と海底にある。これでは植物プランクトンが増殖しづらい。この問題を解決してくれるのが潮目です。
ここで水塊が分かれる要素に「水温」があったことを思い出していただきたいのですが、実は水温が高い海水は、冷たい海水より分子の密度が低い、つまりやや軽いのです。
そのため温かい水塊は冷たい水塊の上に登るような動きになり、冷たい水塊は下へ流れていきます。

この温かい水塊の上昇する流れにより、潮目付近に栄養塩が集まってきます。すると、植物プランクトンが急増します。
植物プランクトンが増殖すればするほど、光合成するプランクトンが多くなるので酸素量も多くなる。これが潮目に酸素が多くなる理由です。
さらに、その植物プランクトンを食べる小魚が集まり、その小魚を食べる大型の魚が集まる食物連鎖が発生します。これが潮目に魚が集まる理由で、釣れる理由なのです。
もちろん植物プランクトンは、栄養塩がきたからといって科学反応のように急増するわけではないので、ある程度の長時間潮目ができていることが必須条件になります。
そのため、潮目ができやすいポイントはプランクトンが多くなり、魚が集まってくるのです。
特に回遊魚を釣る場合、潮目の要素は大きいので、積極的に狙ってみましょう。

待つのも大事
潮目ができる理由はわかりました。でも常に潮目が私達釣り人の手に届く範囲にあるかといえばそんなことはありません。
相手は自然ですので、どんな遠投タックルでも無理な場所に潮目ができることもあります。そんなときは単純に諦めるのではなく、別の場所を狙いつつ少し待ってみましょう。
潮目は常に動いています。なので、待っていればこちらの手が届く場所にやってくるかもしれません。
それに、潮目があるからといって絶対に魚がいるというわけではありません。別の要素で他の場所にプランクトンや小魚が集まるケースもあります。常夜灯などがそのよい例です。
よく海を観察して、潮の流れを読み、釣れる要素を常に考えてみましょう。
