潮流(流れ)との関係
潮流と捕食行動

潮汐により起こる潮流はシーバスの積極的な捕食行動の引き金になります。捕食行動中のシーバスは流れに対してほぼ前方を向いていますが、これはエサを捕食するのに非常に有利だからです。
なぜならステイしていれば上流からエサが流れてくるからで、ベイトフィッシュや甲殻類も水流の抵抗により機敏な動きを制約されシーバスにとって捕食が容易になるからです。
また流水効果により酸素を効率的に吸収でき、より活発な摂餌行動が可能となります。
そして流れの中でステイするためにエネルギーを消費するので、より多くのエサを必要とし積極的な捕食行動をします。
しかし、流れが速すぎるため捕食効率よりエネルギー消費が上まわるようになれば、シーバスは流れの中に留まることはありません。流れがゆるくなる場所、橋脚の前後で流れがヨレる場所などに身を寄せ待ち伏せ型の捕食行動に切り替えます。

潮流の中でのゲームはルアーのアプローチも流れを意識・利用したものとなり、アップストリーム、クロスストリーム、ダウンストリームにUエフェクト(U字効果)を組み合わせた攻略となります。
もう一つの流れ、河川

リバーシーバスを攻略する場合、河口付近では停泊船やバース、排水溝、外灯周りなどのビジブルストラクチャーが中心となります。
それらの特性とシーズナルパターンを合わせたさまざまな捕食対象をイミテートしたルアーのゲームとなります。
それはルアーのレンジと明暗を意識したトレースラインを組み合わせ、明確なポイントへキャストする点の攻略でナイトゲームが主となります。
エリアが上流部になるにつれて、捕食対象はベイト色が濃くなり、それに絡む行動パターンを読んで攻略することになります。
狭いエリアでシャロー気味に広がりを意識してミノーを通すゲームが主となり、瀬の周辺や深みからのブレイクラインなど水深と水流の変化を見定め、雨の濁りを利用したデイゲームも可能になります。
河川で流速のある場合、クロスかダウンかということになりますが、一般的にダウンストリームであればベンド(河川の曲がった部分)から瀬尻、落ち込みの順で狙っていきます。
これらのポイントは強い流れで遊泳力が低下したベイトが流れ着く場所となり、シーバスが捕食の対象として意識するものは一部の甲殻類を除きほぼベイトとなります。
当然ルアーの選択やアクションもそれを演出することになります。
水温と溶存酸素
水温とデータ収集の落とし穴

どんな魚にもそれぞれの適水温というものがあります。シーバスの場合は14〜18℃の水温域。シーバスは温度変化に敏感で2〜3℃の変化でも反応しなくなることがあります。
当然、捕食されるさまざまなベイトにも適水温と接岸時期があります。
収集した水温データを検討する際の注意点は、計測した水温の多くは水面付近の温度であって海中ではないということ。
海ではサーモクラインと呼ばれる上層の暖かい海水と、それより冷たい海水の層で明確に層が分かれていることがあります。シーバスがポジションする水深の水温との誤差があるかもしれません。
しかも計測した数値は広いフィールドのほんの一部であることを忘れてはいけません。それらも含んだ上でデータを活用しましょう。
自分の通うフィールドでこの水温域や接岸時期に当てはまるシーズンはいつ頃か把握することが重要です。とにかくベストな水温帯のシーバスの活性は非常に高いので釣果につなげやすいです。
また、シーバスは水温とともに体温が上がります。体温が上がれば代謝活動が大きくなるので、体が必要とする酸素量も増えます。
海水温がピークに達する時期に選ぶフィールドは、多くの酸素を含み海水より水温の低い河川かその流入部分など限られた場所となります。
溶存酸素

水温が上昇すると、水の中の溶存酸素量は減少します。ここで問題になるのは溶存酸素量が極端に減少したときの魚の活性です。
水温が上がると、プランクトンの活動が活発になります。プランクトンは光合成で酸素を作り出す植物プランクトンと、それをエサにして酸素を呼吸する動物プランクトンに分かれます。
河川からの流入があるところは、植物プランクトンが多く発生し、過剰に増えるとそれをエサにして動物プランクトンが爆発的に増殖します。水の動きの少ない深い湾などは、両者のバランスで水中の溶存酸素量がかなり左右されます。
プランクトンはベイトにとって重要なエサですが、赤潮のように特定のプランクトンが大量発生すると毒素や貧酸素状態の海を作り出し、海域の生物全体の活性を下げることになります。
この条件下でシーバスゲームを考えるなら、まずは酸素が豊富な場所を見つけることから始まります。

空気中の酸素が海に攪拌されて溶ける要因は、主に風による波、消波ブロックへ打ち寄せる波、雨粒の水面への衝突時、排水などの滴落によるもので、最も酸素が豊富に供給される場所は河川の流入域になります。
天候や気圧とシーバスの活性
強風が吹き横殴りの雨が降り注ぐ悪天時に、予期せぬ大物が釣れたり入れ食い状態になったりすることがあります。これはジンクスでもなんでもなく、理由があります。
天候と魚の活性には密接な関係があり、シーバスの行動は天候に大きく左右されます。それがうまい具合にパターンにハマれば予想以上の釣果を上げることもできるのです。
雨が降るとシーバスが釣れる?

河川の流域に雨が降れば当然ながら増水し、濁った水とともにハヤや稚アユなどのベイトフィッシュを下流へと押し流します。
水が濁ればプレッシャーが薄れ、さらにエサまで流れてくるため、河口域のシーバスの活性は急上昇します。
まとまった雨が降った場合、河口付近の水門やストラクチャー周りなど、流れが弱まりベイトが溜まるようなポイントを攻めれば高確率でターゲットに出会えるはずです。
ただし、猛烈な土砂降りで土色の濁流が音を立てて流れている場合などは、さすがのシーバスもストラクチャーの陰に避難しています。危険防止のためにも、流れが落ち着くまで様子をみましょう。
往々にして雨は活性を高めますが、雪の場合は注意が必要です。雪によって温度が下がった水は海に流れ込み、河口の活性を下げてしまうからです。
この状況は、降雪時のみならず、好天時にも雪解け水によって生じることがあります。
風を味方に付ける

風もシーバスの活性を左右する重要な要素です。
シーバスの適水温は14〜18℃と言われていますが、12℃程度の低水温時に南からの暖かい風が吹けば水温は上がり、ベイトやシーバス自体の活性も上がります。
高水温時はその逆。また、風によって生じる波はシーバスの警戒心を解いたり、初夏から盛夏にかけて海水中の溶存酸素が低下する時期でも海水を撹拌し酸素量を上げる効果もあります。
風はシーバスにとって必要不可欠だと言えますが、強すぎる風はキャスティングやラインメンディングの妨げになります。風の強さを見極め、対応するタックルやメソッドで挑みましょう。
晴天無風時でも諦める必要はありません。荒天時に比べ、キャスティングは格段にやりやすく飛距離も延びるはずです。隠れているシーバスへの積極的なアプローチを試みましょう。
気圧が及ぼす影響

気圧とは空気の圧力であり、地表で部分的に気圧が低いところを「低気圧」、高いところを「高気圧」といいます。
低気圧の中心には他から風が流れ込みます。その風は水分を含んだ上昇気流となり上空で雲を作り出し、雲が発達すれば地表に雨をもたらします。
高気圧は逆に上空から下降気流となって海面を押さえる形になります。雲が発生しにくいため一般に晴天が多くなります。
低気圧下の悪天候は前述したようにシーバスに影響を与えますが、天候ではなく気圧自体が及ぼす影響もあるのです。
空気の圧力は水中にもかかります。シーバスやベイトフィッシュはその圧力の変化を敏感に感じ取り、高気圧下では押さえられて水面に出にくくなります。低気圧下は逆に水面を意識しやすいです。