
隣りに立っている釣友は自分よりも多く魚を仕留めている場合、その原因が腕の差ではなくマキエの違いだとしたら、次回は同様のマキエを使う人は多いはず。しかし、同じマキエを使っただけでは、釣友よりも多く釣ることは叶いません。マキエの特性に合わせた仕掛けセッティングと流し方が重要になってきます。ここはマキエと仕掛けの同調を基本として、マキエの素材を重視する選び方を考察してみましょう。
そもそもなんで多くの種類があるのか
グレ・チヌ問わず集魚材の種類は多いです。それにプラスして、毎年新製品が出され試さずにはいられない人も多いでしょう。これだと決めている集魚材があっても、つまみ食いはしたいものです。
一般的には、ベースとなる集魚材があり、それに効果をプラスするために数種類の集魚材を混ぜる人が多いです。特に名手と呼ばれる人たちがそうで、毎回違う集魚材を使う人はほとんどいません。

しかし市販の集魚材は種類が多いです。当然、メーカーのテスターも開発に携わっているから、今までにない、もしくは強化された効果をプラスした商品が生まれてきます。そういった実績から、廃盤にならない限り商品は増えていきます。
これは商売上の問題でもあるのですが、購入側の釣り人にとっては、迷いはするが選べるものが多くあるほど楽しみは増すというものです。
集魚材の何を基準にすればいい?

昔のマキエは酒粕などが多く含まれていて発酵臭がしたものですが、最近の集魚材はフルーティな匂いさえしてきます。これは集魚というよりは釣り人の使い勝手を意識した要素が大きいです。臭く、匂いがいつまでも消えないものよりもその方が使う気になるものです。だから匂いにおいては最近のマキエ選びの基準にはしていない人が多いはず。「この発酵したムギと酒粕の匂いが魚を寄せるんだよ」というような人は少なくなっているのです。結論として、素材の選択肢から匂いは外すことを最初に伝えておきます。
では何を基準にすればよいのでしょう。ここ20年以上、ウキフカセ釣りでは「仕掛けとマキエの同調」を強く意識した釣り方が全盛です。スルスル、全遊動、全層、沈め釣りなど潮=ツケエ=マキエの一体感を目指した結果が大きいです。しかし、仕掛けをいくら軽くしたからといっても、どんなマキエにでも同調するわけではありません。
集魚材はそれぞれ沈降速度が違うので、マキエの内容を変えたらそれに合わせて仕掛けの沈み具合も調整しなければなりません。メーカーによりマキエの沈降速度が公表されている商品もあるので、それを目安にすればよいでしょう。ただし、数種類をブレンドした場合は変わってくるのと、当日の状況によってマキエの沈み方、仕掛けの入り方は変わってくるので、現地で目視して調整するのが当たり前です。

集魚材の主な素材
集魚材は食品のように成分表が記されていないため細かな内容は分からないのですが、商品ごとに成分は異なっていることは確かです。まずはメーカーのキャッチコピーなどを見て、商品の特性を判断するとよいでしょう。初めて使用する場合は足元にマキエを打ち、沈み具合を確認してから沖を狙うようにしたいです。仕掛けとマキエの沈下速度が大きく違っていて釣れなかったという話しはよく聞くものです。
そうならないためにも、ここでは集魚材によく使われる素材を挙げてみました、それぞれの意味を理解しておきましょう。素材の割合により、沈降速度に大きく影響するので、開封後にチェックしたいところです。また、練り具合や撒き方でも変わってくるので、水分管理はきっちりと行いたいです。

ムギ
釣り用に使われているのは押しムギが多いです。それを小さく砕いたものがグレ用には使われています。大麦が原料で、六条種という皮ムギを精白して加熱圧ぺんしたものです。水分を含まない場合は高い浮力を持ちますが、海水を含むと粉状の素材よりも速く沈下する傾向にあります。ゆらゆらと揺れながら沈むので、魚の気を惹きます。

オカラ粉末
大豆の皮を乾燥させて粉砕したもの。豆腐製造時の副産物として知られています。「◯倍に膨らむ」などオカラを多く配合することで割安感を強調した商品が好まれた時期も。元から集魚材の主原料となっているので、今でも配合されています。マキエの濁り、比重を軽くするなどマキエ本来の役目を担っています。

酵母粉末
魚の誘引効果を謳った商品に多く含まれています。グルタミン酸、アミノ酸といった方が分かりやすいでしょうか。その中の代表としてマルキユーのMP酵母が有名です。MPとはマックスプロテインの略で、タンパク質(プロテイン)を構成しているアミノ酸が最高の混合比(マックス)という意味です。近年ではアミノ酸結合体「ペプタイド」を配合した新MP酵母が注目されています。

サナギ粉
チヌ用に多く含まれている成分。高タンパクでアミノ酸を豊富に含んでいます。グレ用には細かく砕かれているものを使用し、他の素材との分散性を高めています。また匂いも魚に効くとさています。原料はカイコガのサナギで、繭がシルクの原料となり、サナギ自体は副産物です。生糸加工時のサナギが使用されています。

アオサ
グレ釣りにはノリエサ釣法があるほど、グレにとっても常食となる素材です。アオサをハリに巻き付けてツケエとして使用することで、大型のグレが食ってくることで有名です。アオサは1〜5月が漁期なので、同時期にマキエに混ぜたりツケエとして使うと効果が高く、特にタンパク質が多く含まれています。

パン粉
これもオカラ粉末同様、マキエの主原料として使われている素材です。九州ではお馴染みの素材で、パン粉のみでグレ釣りをする場合もあるほどです。練り込むほど粘りが出るため、近年ではパン粉ダンゴとして練りエサのようにグレ・チヌを狙う人も多く、エサ盗り対策としても活躍しています。

カキ殻
平たい形状のものは全て視覚効果をメインとした素材と考えてよいでしょう。ムギにしろ直接的な味覚で食っているとは思えないので、ルアーと同様リアクションで口にしている可能性は高いです。特にカキ殻は白い色とキラキラと光る表面があるので、多くの作用が期待できます。少し比重があるため、他の素材よりも速く沈みやすいです。
オキアミの沈下速度

集魚材にはオキアミ生を入れるのが一般的で、その量や刻み具合は人それぞれです。オキアミには空気が入り込んでいるから、原型のままよりも刻んだり潰した方が沈みは速くなります。これに集魚材がくっつく形となり、沈み具合が速くなったり遅くなったりします。なので、集魚材に配合されている成分に大きく影響されるため、オキアミ単体の沈下速度についてはあまり気にすることはありません。
しかし、ツケエとしてのオキアミはどうでしょうか。
ブロックから取ったオキアミ生、パック入りの加工オキアミ、オキアミボイル、ムキミなど沈下速度はそれぞれ違うのです。生とボイルが違うのは想像できるでしょうが、生と加工オキアミでも違っています。加工オキアミの方が生よりも速く沈むことが多いようです。また、マキエから取ったオキアミも速度が違ってくるでしょう。

ツケエローテーションとして、味覚や硬さだけではなく、実は沈降速度も違っていたということです。
次に釣行した際には、ぜひとも自分が使う加工エサとマキエのオキアミの沈下速度を競わせてほしいです。