魚だけではなく、さまざまな生き物に言えることだが、どんなによい道具を揃えても、ターゲットがいなければ意味がない。
冬の森にセミを捕まえにいくのと同じようなものだ。いるわけのない場所に釣り糸を垂らしても虚しいだけ。だったら季節ごとに本命がいるポイントを知ればいい。

■3〜5月

産卵をひかえたチヌが水温の上昇とともに浅場に乗り込んでくる、いわゆる「乗っ込み」の季節である。この時期のチヌは産卵の体力作りのため食欲旺盛で、貪欲にツケエに食らいつく。その一方で引きは弱く、特にチヌ釣り初心者にとって最適な季節と言えるだろう。
食欲旺盛なチヌを狙うには、当然エサが多く集まるところを攻めることになる。堤防の際には貝類がビッシリ着いている。目を凝らしてみると水中に藻が漂っているのも見える。このような場所にチヌは潜むのだ。
また、流れの違う潮がぶつかり合って出来る「潮目」や、港内の潮が緩む場所も、エサが溜まりやすく、狙い目となる。
■6〜10月

産卵を終えたチヌは体力を使い果たし、しばし休憩に入る。しかし、梅雨入りし、水温も上がるとまたも積極的に就餌行動に出る。
この時期のチヌは春よりもさらに浅場で釣れることが多くなるが、同時にフグや小アジなどのエサ盗りも多くなる。狙う場所は春と同様だが、何と言ってもエサ盗り対策が鍵を握る季節である。
この時期のチヌ釣りは、カニや貝類をメインのエサとして使う「落とし込み」や練りエサを使う「ウキ釣り」や「紀州釣り」に分があると言えるだろう。
また、エサ盗りを避け、夏の暑い日差しからも避けられる「夜釣り」を選択するのも有効な手段である。
■10〜2月

夏が終わり徐々に水温が下がるとともにチヌは深場へと移動し始める。よって必然的に狙うポイントは深場、狙うタナは深ダナへと変わっていく。
沖磯や沖波止がメインとなる季節ではあるが、地寄りの堤防でも水深があれば十分狙える。
また、大抵のチヌは水温に合わせて回遊するが、暖流などの影響により、一年中その場に落ち着く“居着き”のチヌも存在する。このチヌは他のチヌよりも体色が黒っぽく、判別はつきやすい。なお、温暖化の影響なのか、厳寒期でも水温はそこまで下がらないためチヌはエサを求めて行動する。条件さえマッチすれば大型がヒットすることがある。