
山口美咲
やまぐちみさき
トーナメントに励みながらも、プライベートでは大物釣りに夢中。シマノ、オーナーばり、マルキユー、釣研フィールドテスター。Zeque、ルミカフィールドスタッフ。YouTube、twitter、ブログ、Facebook、インスタ開設中。
フカセ釣り師の夢のターゲットの一つ「ロクマル尾長」。私もその夢を追い掛けるフカセ師の一人でした。
特に四国西南部、中でも高知県の沖ノ島、鵜来島の尾長グレは、見えていても、ツケエを見切ってなかなか口を使ってくれないという、難易度の高いことで有名です。
岡山県に住む私は、瀬戸大橋で四国に渡り、60㎝オーバーの尾長を釣ることを夢見て通うこと10年以上。子供のころにテレビで見た尾長との豪快なファイト、そして、その賢さを目の当たりにしてからは完全に虜になり、足繁く通う日々を送っていました。そして、その瞬間は突然訪れたのでした……。
ウキがマッハの勢いで沈む
令和2年3月17日、名礁「二並島東のハナ高場」を翌日に控え、前日は三ノ瀬周りでの釣りです。このエリアは渡船のシステム上、泊まりのお客さんが磯の優先権をもらえるというもの。なので、基本的には2日間の釣りとなることが多いです。初日に尾長場として有名な三ノ瀬2番には泊まりのお客さんの関係で降りられず、ウォーミングアップという気持ちで降りた「スクモバエ」。本番は明日、今日は口太を釣って遊ぼう! そう思っていたのです。

いくら本命の磯ではないとは言え、このエリアはいつどこで何が起こるか分かりません。タックルは気を抜かず尾長用で準備しました。
竿は新しくなったシマノ/ファイアブラッド尾長の1.7号、道糸やハリスも強気に3号通しです。

この日は師匠の森井さんとの釣り。お互いに釣り座を構えてさっそく釣り開始。朝のうちは潮も横流れで速く、釣りにくい状況。それに加えて魚の気配が全くありません。
このエリアでは、やはり見えてくれることが大事なので、マキエの下に何も居ない状況を見ると、やる気もあまり出てこないのが辛いところ。そんな状況が3時間ほど続いたでしょうか。ゲストすら釣れず、もう半ば諦めモード。師匠は後ろで休憩しています。
ところが突然潮が緩んだかと思うと、それまでの横流れが一変、急に前に出始めたのです。そして、チラチラとマキエの下の方に、何やら魚の影が見えはじめました。
深くて何の魚のなのかは全く分かりませんが、これはチャンスかもしれない! 慌てて仕掛けを入れ直して、仕掛けが馴染んだ瞬間、ウキがマッハの勢いで消えていきました。一気に竿を持っていかれ、強制的にやり取り開始。突然のヒットに必死になってやり取りしていたところラインブレイク。横にいた師匠から、「竿を立てすぎ! 尾長はそんなに立てたらアカン!」とアドバイスをいただいたものの、あの叩かない上品な引きはもしかしたら……。悔やまれる気持ちでいっぱいです。
興奮が止まらない!
切り替えて次の一投。そして再びウキが消えていきました。バラした後ということもあって、心の準備ができていました。先手は取られていません。横から師匠が「慌てなくていい。落ち着いていけ」と言葉を掛けてくれたこともあり、とても冷静でいられた気がします。
距離を詰めてからも、もの凄いパワーで突っ込んでいき、なかなかはっきりと姿を見せてくれません。心の中では「耐えろ! 耐えろ!」と道具を信じることしかできません。
そして遂に、水面に現れたのは真っ茶色な大きな尾長グレ。そして師匠が一発でタモに入れてくれました。網の中の尾長は、どう見ても大きい……。明らかに50㎝は軽く超えた魚体に、あまりの嬉しさに涙が出てきました。
師匠と2人でメジャーを当ててみます。あっという間に50㎝を超え、55、60㎝!? 2人で目を合わせて大騒ぎ! なんと61.5㎝! まさかのロクマル超えに、興奮が止まりません! 夢が叶った瞬間でした。

この尾長は、決して1人では獲ることはできませんでした。隣でサポートしてくれた師匠に感謝ですし、同じ夢を持って、一緒に通った仲間にも感謝しています。そして、これからもさらなる大物を目指して、通い続けたいと思います。



