釣り入門にはサビキ釣りやチョイ投げ釣りが最適ですが、どうしても狙える魚種に限りがあります。もっと釣りを楽しみたいと思うならばステップアップを考えましょう。
堤防のチヌは日本全国ほぼどこでも狙えて誰もが50㎝オーバーを釣り上げるチャンスがある夢の詰まった釣りです。
フカセ釣りでも人気のターゲット

チヌ(クロダイ)は30㎝程度までの若魚には多くの地方名があり、メイタやカイズなどと呼ばれます。
北海道北部と沖縄を除く日本全国各地の沿岸に分布しており、近場の堤防から手軽に狙えるターゲットとして人気の高い魚です。
雑食性を持ち好奇心旺盛な面と、非常に神経質で強い警戒心を見せる二面性が、釣りやすさとテクニカルな面白さを両立させ、初心者からベテランまで夢中にさせます。
成長とともに性転換することが知られており、オスとして生まれ、生後4年以降に大部分がメスになります。
一年中狙えますが、釣りやすい季節があり、時期によって対象となるサイズも変わってきます。
「乗っ込み」といわれる2〜6月(北ほど遅い)の産卵期は浅場にチヌが移動してくるため、堤防でも大型を狙うことができます。
初夏〜秋は広範囲に分布し、浅場を中心に活発に行動するため、数釣りが楽しめるようになります。初めてチヌを狙うのであればこの時期が釣れるチャンスも多く釣りやすいです。
ただし、エサ盗りが多い季節でもあるため対策が必要になってきます。
チヌが釣れる場所を知ろう

チヌは沿岸の浅場を生息域としており、外洋よりも内湾にいることが多いです。潮流のスピードは速い場所よりゆっくりと流れ、その中でも変化がある場所を好みます。
漁港周辺のテトラや藻場などの障害物周りは絶好のポイント。また、他の多くの魚に比べると淡水に耐性があり、春から初秋には河口域にも多く分布します。
障害物が少なく流れもあまりない場所は、少しでも流れに変化が生じる場所を探し、その周辺にポイントを作って狙います。堤防の先端や曲がり角、沖のカケアガリなどが狙い目です。
寄せる「マキエ」と食わせる「ツケエ」
チヌのフカセ釣りでは、チヌを寄せるための「マキエ」と、ハリに付けて食わせるための「ツケエ(サシエ)」が必要になります。
マキエに集まったチヌがツケエを見つけて食うわけですが、その確率を上げるためには、まずマキエでチヌを寄せることが重要です。
マキエは撒ききる

マキエはオキアミ生1角(約3㎏)に対し、集魚材2袋(4〜6㎏)を混ぜ込んだものが一日(約6時間)の釣りで使う量の目安です。この他にアミやムギを混ぜ込む場合もあります。
この量のマキエを実際に作ってみると、ビギナーにとっては多く感じられるかもしれません。しかしこの量を全て撒くことで釣れる確率が上がるということを覚えておきましょう。
チヌ釣りでは基本的に底に溜まるようなマキエを作れる〝比重の大きい〟集魚材が好まれます。通常、チヌは海底付近を遊泳しているからです。
ツケエは複数持ち込もう

チヌ釣り用のツケエはオキアミ(加工・生)が標準ですが、チヌは雑食性が強いため、練りエサ、ムシエサ、小型のカニ類、貝類、サナギ、コーンなど多くのツケエが用いられます。
どれか一種類だけでもよいですが、そのエサを食わなければ手詰まりになってしまいます。なるべく複数の違う種類のツケエを持ち込んで、当日のアタリエサを見つけるようにしましょう。
外せないのは万能タイプのツケエ用加工オキアミと練りエサの両方を持っていきましょう。
必要なタックルと仕掛け

チヌのフカセ釣りで必要な道具はサビキ釣りやチョイ投げ釣りと比べると多くなります。まずは必要最小限の道具を揃え、慣れてきたら徐々に買い足して不便なく釣りができるようにしていきましょう。
竿やリール、仕掛け類は必須。マキエ関連のバッカン、マキエヒシャク、水汲みバケツなども必要です。
固定仕掛けと半遊動仕掛け

固定仕掛けはウキを固定する仕掛けのことで、ウキより下の長さ分の位置をピンポイントで探ることができるので、魚が食うタナ(水深)が分かっている場合は効率良く狙うことができます。
パーツが少なく分かりやすい一方で、最大で竿の長さまでしか設定できないので、竿の長さ以上の水深を狙う際は不向き。

半遊動仕掛けはウキが上下に遊動するようにセットされた仕掛けのことです。
ウキの上部にウキ止め(+シモリ玉)を取り付けて遊動範囲を調整する〝半遊動仕掛け〟と、ウキ止めやシモリ玉を使わない〝全遊動仕掛け(全層仕掛け)〟に細分化されます。
タナの設定も自由に行え、フィールドを選ばないため最もポピュラーな仕掛けです。
ウキセレクト

チヌを狙うのに適したウキは、基本的にどっしりとして仕掛けを安定して流すことができる浮力を備えたものです。
しかしながら実際には多くの種類があり、ウキのタイプによって得意な釣り場や釣り方が分かれています。
釣具店でどれを選べばよいか迷わないためにも、釣行する釣り場の水深や潮流の速さなど最低限の情報は把握しておきましょう。
また、チヌは季節によって好むエサや遊泳層、さらに狙うポイントなどが変わってくるため、シーズンに合わせた狙う場所の選定が必要です。

仕掛けの要となるウキの選択については以下のとおりです。
①深い水深が狙えるもの。
②遠投できるもの(コントロールがつきやすいもの)。
③潮に乗りやすいもの。
④アタリを取りやすいもの。
これらの条件を基本として、一つでもクリアしているウキを備えておくとよいでしょう。もちろん予算に合わせたコストパフォーマンスが高いことも条件の一つ。
タナ取りが重要
釣り場に着いて仕掛けを組み終えたら、まずは狙うタナ(水深)を決めましょう。ウキ止めの位置を上下に移動することで、任意のタナに設定することが可能です。
チヌ釣りでは、海底スレスレから30㎝ほどくらいに設定するとよいでしょう。もちろん、釣れなかったり根掛かりするようならウキ止めを動かして浅く(深く)調整します。
基本的な狙い方

ほとんどの堤防の足元には3〜5m沖まで敷石が置かれており、ここに段差ができてそれに沿って魚が移動します。このことから、まずは足元から6〜8m沖側を狙うのがセオリーです。
マキエ作りを終えたら、まずは仕掛けを投入する前にマキエをヒシャクで20〜30杯撒いてチヌを集めます。それから仕掛けを作り出してもよいでしょう。
仕掛けの準備を終え、タナ取りを済ませたら、ハリにエサを刺して、6mほど沖、自分の正面を目安に仕掛けを投入します。
狙い通りの位置に仕掛けが着水したら余分な糸フケを取り、すかさずヒシャクを使ってウキの周辺にマキエを3〜4杯続けて投入します。

潮が流れていれば、ウキと一緒にハリに付いたツケエも流れていくので、スムーズに流すために道糸も出ていく分だけ出してやります。
その間もウキの動きや道糸のたわみに注意してチヌのアタリに備えます。ある程度流してアタリがなければ仕掛けを回収し、エサを付け替えます。
フカセ釣りでは、マキエの撒き方が釣果を大きく左右します。釣り場の地形や潮流、魚の活性に合った撒き方をしないとチヌを寄せるどころか遠ざけてしまうことになります。
基本的にはウキの周囲を目安に打ちますが、風や潮流の速さによってマキエの拡散具合と仕掛けの動き(ウキストッパーの沈み具合など)を注視して、狙いの場所でマキエとツケエが同調するように調整する必要があります。
エサ盗り対策

海水温が高くなるにつれて、チヌのみならず、他の多くの魚も活発に行動しだします。その中にはいわゆるエサ盗りも含まれます。
チヌにツケエが届く前にエサ盗りに取られるケースが多くなるのです。そこで、少しでもエサ盗りからツケエを取られないように工夫する必要があります。
定番の方法は、まずツケエを替えてみること。オキアミから練りエサやコーン、エビのムキミなどに替えてみます。釣り場にあるジンガサやフジツボなどでもよいでしょう。
またマキエを打つ位置で分断する方法もあります。足元にエサ盗り用のマキエを多く打ち、そこに釘付けにして本命ポイントへ行くのを防ぐのです。

エサ盗りは魚種によって対策方法が異なりますが、堤防のチヌ釣りで最も厄介なのはフグ。目立つエサに食いつく習性があるのでエサ盗り対策の練りエサが使えないどころか、むしろフグを呼んでしまいます。
使うなら黄色い練りエサではなく赤系や茶系なら水中であまり目立たないのでエサがチヌのいるタナまで通る確率は上がるはずです。また、ハリの色を黒系に変えてみたり口オモリを付けている場合は外してみます。
いずれにしても、チヌ釣りの場合はマキエワークでかわすよりもツケエのローテーションでかわす方が効率がよいです。
特にエサ盗りが多いという事前情報があるなら、多くの種類のツケエを持参して状況に合わせましょう。
アタリとやり取り

チヌのアタリは、ウキの種類によっても変わりますが、さまざまな出方があります。
活性が高い場合は明確にウキを引き込むアタリが出ることもあるが、食いが渋い場合はウキがピョコピョコと揺れるだけだったり、5〜10㎝沈んだまま動かないこともあります。
引き込む場合はそのままアワせればよいですが、微妙な動きの場合はエサ盗りなのか本命なのか、はたまた根掛かりなのか判別しにくいです。そんなときは〝聞きアワセ〟をしてみましょう。
ウキに影響が出ない程度に仕掛けを軽く張り、魚の反応を見ながらゆっくり竿を動かしていきます。ここでハリ掛かりしていれば魚が走り出すはず。

アワセはあまり強くする必要はありません。「大きく」「ゆっくり」がキーワード。あまり急激に強くアワせるとアワセ切れやハリが伸される可能性が高いです。
アワセが決まればやり取りの開始。チヌはハリ掛かりすると独特の首を振る動きを竿に伝えながら、逃げようとします。
やり取りの基本は魚が泳ぐ向きに竿を倒すこと。魚が右を向けば竿を右に倒し、左を向けば左に倒す。チヌの走りを利用していなしながら徐々に近くまで寄せてきます。
障害物が何もなければ問題ないですが、テトラや沈み瀬、藻場などがある場合はそこに向かうケースが多いです。
潜り込まれるのを防ぐためにもそういった場所ではある程度強引に止めて主導権を早めに握るようにしましょう。