フカセ釣りを始めるにはまず道具を集めなければなりません。今回は、ルアー釣り経験者でも、全くの初心者でも道具を集められるようにチヌのフカセ釣りに必要なものをご紹介します。
効果的な竿を選択する

磯竿とは名の通り「磯で使う竿」という意味ではなく、ウキを使用した釣りに特化したものを指します。
要は、細くて長い竿のことで、足元が悪い場所でも魚の取り込みをしやすくするために長めに作られており、軽さと強靭さが要求されるのが特徴的です。
また軽い仕掛けを扱うため繊細な穂先を持っていますが、その代わりに重たいオモリを扱うことができなくなっています。
チヌ用とグレ用では調子が異なり、前者は胴調子で後者が先調子というのが一般的。
さらに竿の号数としてはチヌが0〜1号、グレは1~1.5号がスタンダードとなっているので混同しないように注意しましょう。
長さは4.5~6.3mと幅広く存在していますが、現在チヌ・グレのどちらも5.3mがポピュラーなので、冒険はせずにそれを基準に購入してみましょう。
エントリー用のリールに求める性能

フカセ釣りに適したリールは、シマノなら3000番以上。ダイワなら2500番以上のスピニングリールがよいでしょう。
3号の道糸を150m以上巻くことができるスプール径ならば大型が掛かっても十分に対応できます。
また長時間竿を振り続けることが多いフカセ釣りでは、軽量であることが望ましいですが、入門機を選ぶ際にはさほど気にしなくても良い要素だと割り切りましょう。
道糸は「同調性能」が要

フカセ釣りの道糸に求められる性能としては以下の3点です。
・潮や風が強いときでも操作しやすく、ライントラブルが起きにくい。
・フカセ釣りのメインターゲットとなるクロやチヌの強い引きに対応できる耐久性。
・マキエとの同調のさせやすさ。
これらを最も高い水準で満たしているのはナイロンラインです。
ナイロンラインは非常にしなやかで、フロロカーボンラインと比べて圧倒的にライントラブルが少ないです。巻きグセもつきにくく柔らかさがあり遠投性能も高いです。

PEラインはナイロンラインよりもしなやかではありますが、しなやか過ぎて潮の流れや風の影響を過剰に受けやすく、また比重が水より軽いため水面に浮いてしまいマキエと同調させるのが非常に難しいのが難点。
近年のフカセ釣り用PEラインは性能がよく、その弱点も改善されてきています。
しかし初めてなら、柔らかくしなやかで適度にハリもあるナイロンラインが、仕掛けを自然に流すことが重要なフカセ釣りにおいて最適のラインでしょう。
150m巻きの蛍光カラーがポピュラーであり、号数は2〜3号が良いでしょう。
また比重が異なるフロートタイプとサスペンドタイプの2種類が存在します。
ラインが潜るというのは初心者だと扱いづらいところがあるので、まずはフロート系がおすすめです。ある程度フカセ釣りに慣れてから手札を増やしていくようにしましょう。
強度・張り・なじみ ハリスに必要な三要素

道糸とは異なり、ハリスにおいてはフロロカーボンラインが優れています。適している理由は大きく分けて3つあります。
1つ目は、他の素材に比べて最も摩擦に強い素材であること。
ハリスは海底の岩やロープなどのさまざまな障害物に触れる可能性が高く、グレやチヌの口周りでも擦れることもあるため、ラインブレイクを防ぐために摩擦に強い素材が必要とされているからです。
2つ目は、張りのある素材であること。
ハリスがしなやかな素材だと潮の影響を大きく受けてヨレが発生してしまい、ツケエを自然に漂わせることができなくなってしまうのですが、フロロのように張りがあればハリスの振れを大幅に抑えることができます。
3つ目は、比重が1.78(水が1に対して)と最も重いということ。
ハリスの比重が大きければ仕掛けを潮になじませやすくなり、また軽いオモリを使用している場合でもスムーズに沈ませることができるのです。
細かいことをいえば、ハリスの長さでも沈み方が変わるため、最初は2ヒロほどの長さから始めるとよいでしょう。
もちろん、何もフロロカーボンラインが万能というわけではなく、張りがありすぎることでクセがつきやすかったり、比重が大きいことで遠投に向いていないなどといった面も存在します。
しかしハリスは道糸の下に結ぶラインであるため、それらのデメリットを無視して、メリットのみを享受することができるのです。
ハリスの号数は仕掛けのロストを防ぐために道糸よりも小さくしたほうが良いでしょう。
チヌ竿0号なら道糸は2号、ハリス1.5号の組み合わせがおすすめ。竿が1号ならハリスは1.5号以上が良いでしょう。竿が柔らかいほど細糸でも安心できます。
強度などを含めたバランスの良い組み合わせを目指しましょう。
ハリを通して『食い』を学ぶ

ハリの種類は狙う魚によって分かれており、チヌのフカセ釣りではチヌバリの1~3号をメインに使うことになります。
サイズは2号を基準にして、アタリの度合いによって交換します。
寒チヌ時期のように活性が低く口を大きく開けて捕食しようとしていないときは1号の小バリが有利であり、逆にチヌの活性が高い場合やエサ盗りが多い場合は大バリである3号が有利です。
また4号以上のハリや1号以下のハリも販売されていますが、限られた選択肢の中で魚の大きさ、天候、食い渋りを把握してハリのサイズを上げるべきなのか。それとも下げるべきなのか。
まずはその判断力を培わなくてはならないため、最初に多くの選択肢を用意しても有効に活用することは難しいでしょう。
フカセ釣りに慣れるまでは基準の2号だけ用意するのも良いでしょう。ただし、初夏〜晩秋はフグが多く、ハリへのダメージが大きいため2袋は用意しておきたいです。
フカセ釣りの要となるウキ 円錐ウキと棒ウキの違い

フカセ釣りに使う主力のウキは、円錐ウキと棒ウキの2種類に大別できます。
円錐ウキは、磯などの外洋に面した釣り場、サラシ、本流など潮流や波のある場所で有効なタイプ。
海面からの距離があり、見下ろすような場面では非常に見やすく、仕掛けの投入や持ち運びも容易にできます。特に中通し式のものは操作性が抜群に良く、ラインメンディングがしやすいのが特徴です。
しかし潮流が安定しない場所では性能を十分に発揮させることが難しく、サイズが小さいため遠投をした際にウキの挙動が確認しにくくなってしまいます。

棒ウキは、円錐ウキと逆のシチュエーションで有利なタイプです。波止などの内湾部のように潮流や波が弱いポイントで真価を発揮します。
波止で遭遇しやすい表層滑りの二枚潮では、自身の高さ程度しかない表層滑りでも大きく影響される円錐ウキとは異なり、同じオモリ負荷、質量であってもボディの潮受け能力が高く、水面下に道糸が沈む棒ウキは受ける影響が少ないです。
また海中への引き込み抵抗が小さいため微細なアタリを取ることができる感度を持ち、視認性が良いため遠投をした場合でもウキの挙動を確認しやすいです。
ただし、潮流や波が強いポイントではウキの立ち方が不安定になることで高感度という特徴を活かすことが難しいです。
縦長の形状と円錐ウキと比べて仕掛けが若干煩雑であることが合わさり仕掛け絡みがおきやすいので要注意。
ウキの形状はそれぞれに得意なポイントがあるため、優劣を付けることができません。しかし入門向けとして考えるのであれば、対応力の高いオールラウンダーな円錐ウキが堅実でしょう。
円錐ウキ、棒ウキのどちらもMサイズのB~3Bを揃えておけば大半のポイントに対応することができます。
オールラウンドに使いたいなら5Bを選択する方法もあります。最初はラインメンディングも難しいので、少し道糸を引いても仕掛けが動きにくい重いものをチョイスするとやりやすいでしょう。
仕掛けの調整を担う重要パーツ「ガン玉」

天候や潮流、チヌの活性の度合いに応じて仕掛けを調整するために、ガン玉(またはジンタン)と呼ばれる粒状のオモリが使われています。
ガン玉は単に仕掛けの沈みを良くするためだけではなく、仕掛けやアタリに対してさまざまな調整を施すために用いられます。
主に「仕掛けを目的のタナまで引き下ろす」「ハリスを潮になじませる」「アタリに対する感度を高める」「ウキの浮力を調整する」といった用途があります。
ウキの浮力、潮流や波などの海の状況、ハリスの長さなどそのときどきに応じた重さを使用するので単一の号数を揃えるのではなく、幅広い号数を複数揃えておくのがスタンダードです。
3B~G3までのガン玉がセットになっているものが販売されているので、それを購入しておけば問題ないでしょう。
タックル以外に必要な補助アイテム

メインとなるタックルの他にも、フカセ釣りを行うためには必要となる道具があります。
配合したマキエを収納しておくバッカン。フカセ釣りでのツケエとなるオキアミ、コーン、練りエサなどを小分けにして収納しておくツケエバッカン。
マキエを撒くために必要なヒシャク。マキエの配合時や納竿後の清掃に使用する水汲みバケツ。釣り上げた魚を保存しておくストリンガーやスカリにクーラーボックス。
これらは釣行に必要とされている道具であるものの、タックルのように基準となる規格はないので、形状や材質、デザインなど自分に合ったものを選んで問題なさそうです。
魚の取り込みに使うタモに関しては、5~6mほどに伸縮するタモの柄であれば大半の釣り場に対応することができ、タモ枠は直径が40~45㎝あればチヌ釣りでは十分でしょう。
初期費用はいくら? ハイエンド仕様と入門機の差

さて購入……といきたいところですが、しかし道具を揃える前に「費用」という最大のネックが残っています。
釣り道具というのはスポーツ用品であるため、竿一つを取っても3,000円前後の安価なものから10万円を超えるハイエンド仕様のものまで幅広い価格帯が存在します。
入門機としてならばハイエンド仕様のものを選ぶ必要性は低いですが、しかし無名ブランドなどのコストダウンに特化した製品だと数回の釣行で破損してしまうことが少なくありません。
「安物買いの銭失い」にならず、入門機として手を出しやすく、ある程度の年数を耐えることができるという条件で考えるのであれば初期費用は30,000円はほしいところ。

ウエア類も充実させるとなるとこの限りではありませんが、全くのゼロから揃えて掛かる初期費用の概算がこれぐらい。
また消耗品以外は数年間使うことができると考えれば、何かと躊躇っていた人も手を出しやすいのではないでしょうか。
中には「いやいや、これじゃあ足りない」と10万以上のお金を掛けてハイエンド仕様やブランド品を揃えたりする人がいます。
しかしベテランのフカセ釣り師ならばともかく、入門者の場合、免許を取りたてのドライバーがF1マシンに乗るようなもので、大きな差が生まれることはないということを念頭に置いておきましょう。
絶対に必要な物

竿&リール
磯竿 | 10,000~15,000円 | 0号から1.2号くらいまで。長さは5.3mが基準です。 |
リール | 5,000〜10,000円 | スピニングリールの2500〜3000番。レバーブレーキはなくてもOK。 |
ウェア類
フローティングベスト | 6,000~30,000円 | 命を守るためのものですから必ず着用しましょう。フカセの場合ポケットが多いものが便利です。 |
磯靴 | 5,000〜20,000円 | 磯なら必須です。ただ、波止の場合は見送っても良いでしょう。 |
マキエ用品
マキエバッカン | 2,000~4,000円 | EVA素材のハードバッカンが主流です。 |
水汲みバケツ | 500〜2,000円 | 最近はダイソーなどでも販売されているのでそれでもOK。 |
マキエヒシャク | 1,000〜5,000円 | 比較的安いものでも良いでしょう。 |
仕掛け類
道糸 | 1,500〜3,000円 | 150m以上のものは用意しておいたほうが良いでしょう。 |
ハリス | 1,500〜3,000円 | 50m巻きの1〜1.5号がおすすめです。 |
ウキ | 1,000〜3,000円 | 1個では心もとない。安いものでも良いので別の浮力のものを複数購入しておきましょう。 |
ガン玉 | 500円 | ウキと同じ重量が必要です。複数のガン玉が入ったセットを購入すると良いでしょう。 |
ウキ止め | 300円 | フカセ釣りの場合糸タイプがおすすめです。 |
エサ類
オキアミ生 | 1,000円 | ツケエ、マキエ兼任と考えても最低1角(3㎏)はほしいです。 |
加工オキアミ | 400円 | ツケエ用のバリエーションとして購入しておいたほうが良いでしょう。 |
練りエサ | 500円 | 残ったら冷凍保存もできるので便利。 |
集魚材 | 1,000円 | とりあえず最初はベース材にオキアミ生を混ぜるだけでも良いでしょう。 |
次に購入するならこれ
ロッドケース | 5,000〜30,000円 |
磯バッグ | 5,000〜30,000円 |
タモ一式 | 10,000〜30,000円 |
ツケエケース | 100〜20,00円 |
マゼラー | 500〜3,000円 |
ストリンガー | 1,000〜3,000円 |
フィッシンググローブ | 1,000〜3,000円 |
キャップ | 2,000〜5,000円 |
ウエア | 5,000〜50,000円 |
クーラーボックス | 10,000~30,000円 |