ベテランにとってはなんでもないことなのだが、ビギナーにしてみるとなかなか越えられないカベというものがある。
それが、40㎝というサイズで、不思議とグレもチヌも共通している。今度こそ越えたと思っても38〜39㎝だったりした経験は多くの釣り人が持っているはずだ。
そこで、いよいよシーズンを迎えたグレの40㎝のカベを越えるための秘訣を紹介してみよう。
グレの成長速度

グレの成長速度は、一般には1年で10〜15㎝、3年で20〜25㎝、7年で30〜35㎝といわれている。40㎝に達するには8〜10年はかかるわけだ。
それだけ長く生きているということは、数々の学習をしていると思ってよい。
グレとチヌを釣り分けるのはそれほど難しくない。ポイントが違うし、タナ、ツケエを工夫すれば、かなり高い確率でどちらか一方だけを狙って釣ることができる。
しかし、同じグレのサイズを釣り分けるのは難しい。もちろん、小型を狙って食わせるのは簡単だ。だが、大型を釣るとなると、偶然に頼るだけでは簡単にはいかない。
同じグレだから習性はほとんど変わらず、グレとチヌを釣り分けるようにはいかないのだ。
といっても、小さいグレと大きいグレには少ないながらも習性の違いがある。どんなところが違うか、まずはそこを見てみよう。
大型は内海には少ない

これは誰でもすぐ分かるだろう。大型は外洋に面した荒磯を好み、内湾の穏やかな海域には少ない。本当に40㎝オーバーを釣りたければ、大型がアタる確率がより高い釣り場へ行くべきだ。
いくら実績があるといっても、漁港内の波止や堤防でそれを望むのは無理というものだ。
当然のことながら、外洋に面した荒磯へ行こうとすれば少なからず経費がかかる。40㎝オーバーを求めるならそれ相応の出費は覚悟しておかなければならない。
大型ほど警戒心が強い

冒頭で記述しているように、グレが40㎝オーバーになるまでには10年前後かかる。
その間、大きな魚に襲われたり、釣りバリに引っ掛けられたりと何度も危険な目に遭遇しているだろうことは想像できる。
そして、このような経験を経て彼らは学習し、美味しそうなエサが目の前にあったとしてもすぐには食いつかなくなっている。
警戒心を身につけているのだ。その結果、マキエを投入しても簡単には浮いてこなくなっている。
ご存じのように、グレは非常に臆病な性質があり、異常を感じるとすぐ自分のすみかに逃げ戻る。
グレのすみかとは深場の岩陰であり、警戒心の薄い小型のグレは食欲に負けてマキエに誘われ、浅ダナに浮く。
だが、警戒心の強い大型はそうはいかない。常にすみかに近いところでエサを食べようとしている。
一つ付け加えるなら、釣り人が撒くエサがふんだんにあるため、先を争って浮上しなくても飢えることはないという事情もある。
結論として、40㎝オーバーが浅ダナでアタることは少ない。よほど活性が高くない限り、竿1本より深いところで食う確率が高いのだ。大型に限っていえば、固定ウキの出番はないと思っていいだろう。
大型は高活性時に集中

これも警戒心に関連するのだが、前述したように大型は警戒心が強い。そのため簡単には浮いてこないし、目の前にエサが沈んできても、不自然さを感じるとなかなか食わない。
しかし、活性が高くなると食欲に負けてついついエサを食ってしまう。したがって、活性が高くなったときには集中して釣らなければならない。
肝心なときにもつれた仕掛けを解いていたり、ハリやハリスを結び直していたりしては貴重な時間をムダにしてしまうことになる。
では、どんなときにグレの活性は高くなるのだろう?
それが時合であり、天気や潮、時間、波などが複合的に影響しているため釣り人には分からない部分が多い。
ただ、確率として活性が高くなりやすいのが潮変わりと呼ばれるもので、それまで止まっていた潮が流れ始めたとき、速く流れていた潮が緩んだりしたときに食いが高まることが多い。
流れる方向が変わったときもこれに含まれる。
潮が止まったり流れ始めたりするのは干潮・満潮前後に多いが、実際はそれだけではない。潮の流れというものは単純ではなく、常に変化している。
方向はもちろん、速くなったり遅くなったり、止まったり動いたりしているものなのだ。

だからどうすればいいのかというと、常に仕掛けを海の中に入れておく。これに尽きる。ある程度釣りに慣れてくると、潮が動かないと食いが悪くなることが分かってくる。
すると、釣りを中断して食事をとったり昼寝をしたりする。
食事も昼寝も必要なものだから否定はしないが、その間もウキを浮かべておき、潮が動き始めたらすぐ分かるようにしておくことをおすすめする。
潮の動き始めが大きなチャンスであることは、ベテランならみんな知っている。しかも、それが長く続く保証はない。ワンチャンスかもしれない。
チャンスがあるなら絶対にモノにしようとする気構えは欠かせない。
マキエへの反応速度

マキエを撒き始めてすぐに集まってくるのは小さくて足が速い魚たちだ。彼らは警戒心が弱く、また数が多いからグズグズしていると食べ損なう可能性が高い。そこで、エサを発見すると即座に反応する。
対して、大型の魚は警戒心が強く、エサの存在を知ってもすぐには飛びつかない。小魚が食べるのを見て、安全だと判断したところでおもむろに近づいてくる。
そのため、マキエを打ち始めてそれが40オーバーに効果を表すまでには30分前後のタイムラグが生じる。
つまり、マキエを開始して30分ほどしたときに大型がアタる可能性が高いため、その時間帯に集中しなければならないことになる。

マキエに対する反応は大型ほど遅いというのは、実はもう一つ意味がある。たった今撒いたマキエに対して、すぐ集まるのは小型が多い。大型は少し遅れてやって来る。
マキエを先打ちしてそれに仕掛けを合わせようとした場合、大型に狙いを絞るなら仕掛け投入のタイミングを遅らせないといけないことになる。
早く合わせると、すぐに反応する小型の餌食となってしまうのだ。
このとき、大型がマキエに向かってくるコース上に仕掛けを沈めれば理想的だが、ビギナーにとってこれはかなり難しい。
ツケエの好みが異なる

最低でも3種類のツケエを用意するというのがチヌ釣りの常識だが、グレ釣りでそこまで考える人は少ない。
チヌほどエサの嗜好が多様ではないというのがその理由だが、最近はツケエ用に加工されたオキアミの種類が増えている。
それにムキミ、サシアミを加えれば意外にバリエーションは多くなる。
ところで、小型はあまり食べないが、大型は好んで食べるというツケエが実際にあるのかというと、現状では明確な答えはない。ただ、条件次第では、これを使うと大型が連続して食ってきたという報告がある。
残念ながらそのエサは固定しておらず、条件によって変わっている。
さらに、それが本当の意味のツケエの違いによるものなのか、それとも沈下速度、あるいは流れ方が変わったから大型の好みに合ったのかどうかも分からない。
ただ、釣り人として、少しでも可能性があるのならぜひ試してみるべきだろう。当たり前のことだが、魚の気持ちは人間にはまったく分からない。
いろいろ試してみて、食ったらそれが正解というのが釣りの世界である。ツケエを数種類準備するのは、大型狙いのみならずグレのご機嫌を判断する上で大いに役に立つ。
