初夏から晩秋にかけては本格的な投げ釣りに匹敵するほどの釣果が期待できる。そう、キスを狙った「チョイ投げ」である。
堤防、砂浜、砂利浜とそのロケーションは広く、すぐに始めて止めたいときに素早く撤収できるのも人気の要因だろう。
今年の夏はぜひとも家族で楽しんでいただきたい釣りのひとつだ。
人気ターゲットはキス

メインはキスと呼ばれる「シロギス」。他にアオギスやホシギス、モトギスなどがいるが、日本本土で釣れるほとんどがシロギスだ。
水質汚染に弱く、成長速度も遅いため養殖が難しい魚でもある。このためスーパーなどでは輸入物を多く見かける。
食の旬は晩春から初夏の産卵を控えた時期。キスの産卵適水温は25〜26度で、体内に毎日卵を作り出す仕組みを持っている。このことから、高水温が続く夏季は抱卵した個体が釣れることも多い。
釣れて「大きい!」と思えるのは20㎝を超えるサイズで、3歳魚以上となる。置き竿にこのサイズが掛かると、竿をひったくるほど強烈なアタリが出るため、立てかけた竿が滑り落ちることも。
比較的軽いオモリを使用したチョイ投げでは、この力強いアタリがダイレクトに伝わってくるため、最初はびっくりすることだろう。

その他釣れる魚は、メゴチ、小ダイ、トラギスなどがおり、エサ盗りの代表としてフグが陣取っている。
逆に嬉しい魚は、釣れたキスを回収する際に食ってくるヒラメやマゴチだ。特に夏場はヒラメも浅場に接岸しているため、釣れる確率も高い。
ただし、場所によってはエイが丸呑みしてタックルごと海に持っていくこともあるため、置き竿時には充分注意しよう。
狙う場所

もちろん砂浜が一番のポイントだが、サーフを攻略するには遠投が必要になる場所が多い。キスがいくら浅場に接岸するといっても、水深1m足らずの場所ではピンギスに遊ばれることもしばしば。
浅くとも3m以上あり、できればカケアガリがあるポイントを選びたい。
この条件にぴったりなのが砂浜が隣接する漁港の堤防だ。
砂浜を横向きに狙えるため、いきなり深場を釣ることが可能だ。しかも、カケアガリを横向きに釣ることができるため、キスがいるエリアを長く探ることができる。
タックル

手持ちのタックルを流用できるのがチョイ投げ釣りの魅力だが、タックルに合わせたオモリ選びが重要だ。俗にいうタックルバランスで、ロッドの「適合オモリサイズ」はもちろんのこと守らなければならないが、道糸の種類や太さにも大きく影響してくる。
ナイロンライン使用
道糸にナイロンラインを使う場合、3号以下のオモリが使いやすい。これはナイロンが伸びる素材のためで、これ以上重いものを使用するとアワセが効かなかったり投げにくいためだ。
号数はできるだけ細いほうが風の影響も少なく遠投ができる。おすすめは1.5号だ。
これらを総合すると、使用するロッドはメバリングやアジングロッド、短めの磯竿(適合オモリサイズに注意)が最適となる。
しかしここで大きな問題がある。穂先(ティップ)が軟らかいため、魚が掛かったときや仕掛けをサビく際に穂先が曲がってしまい引きにくいことだ。
さらに、魚が食っても穂先がグッと曲がってしまい、アワセが効かない場合も多い。これを解消するためにも、穂先が軟らかい竿を使う場合は、できるだけ軽いオモリを使おう。

PEライン使用
エギングのおかげでPEラインを使う釣り人も多くなった。エギング用のタックルをそのままチョイ投げに流用できるのですぐに始められる人も多いだろう。
もちろんリーダーライン&スナップもそのままでOKだ。
PEライン使用時の最大の利点は、感度はもちろんだが重い号数のオモリが投げられるということ。これを有効に活用するなら、エギングロッドやシーバスロッド、万能ロッドなどが最適となる。
とはいえ、本格的な投げ釣りのオモリは使えないので、8号くらいまでのオモリを使うことになる。もちろん軽いほうが根掛かりも少ないのだが、やはり遠くに投げて広範囲を探れる利点は大きい。
PEラインの理想の号数は1.2号くらいだが、細い場合はフルスイングせずにセーブしながらキャストするといいだろう。テーパーラインを使用してもOKだ。
ハリにこだわる

投げ釣り用の仕掛けを自作してもいいのだが、市販品を購入したほうが楽ちんだ。しかも投げ釣り用の仕掛けは廉価品も多くあるから、多くのセットを買っておくことも可能である。
しかしここで注意したいのがハリ。廉価品の多くは輸入品で、ハリの掛かり具合が国内のメーカーに比べると格段に落ちる。釣果を左右する部分なので、メーカー品の投げ釣りセットが望ましい。
しかし、フグが多い場所では次々とハリを切られてしまうので仕掛けを多く消費してしまう。
対策としてバラバリを購入しておき、切られたハリスにハリを結び直すとハリ数はそのままで仕掛けを再利用できるのでおすすめだ。
オモリにこだわる

投げ釣りでは一般的にテンビンを使用する。これはキャスト時の仕掛け絡みの防止と、根掛かりを軽減してくれる効果を見込んでだ。
多くのテンビンが売られているが、使うのはオモリ一体型のテンビン。おすすめはジェット天秤やキング天秤に代表される浮力体や羽根つきの浮き上がる天秤だ。
仕掛けを引くとテンビンの手前側が浮き上がり根掛かりを防いでくれる構造となっている。
続いて遊動式と固定式のテンビンがあるが、スナップスイベル付きの仕掛けセットを使う場合は固定式が使いやすい。ただしアタリが小さかったり掛かりが悪いときは遊動式を試すと良い。
エサの種類


アオイソメ(アオムシ・アオケブ)や、イシゴカイ(コケブ・スナムシ・スナゴカイ・イワデコ)などを使う。
1匹をまるごと付けることもあるが、通常はタラシを1㎝ほど残して手で切る。苦手な人はハサミを利用するとよい。
キスの口は細く、エサを噛むのではなく吸い込んで食べるため、幅の細いハリを使いエサも吸い込みやすくするのが釣果を伸ばすコツだ。
ムシエサを付ける際、ヌルヌルしているうえに暴れて付けにくいが、石粉をまぶしておけばこれが軽減できるのでおすすめだ。

そうしても生きたムシエサが苦手な人は、釣れる人工エサが多く売られているので利用するといいだろう。
釣り方

基本は「引き釣り」だ。キャスト後オモリが着底したらロッドを横向きにして仕掛けを引くか、リールをゆっくりと巻きながら仕掛けを引くかのどちらか。
根掛かりが多い場所では、ロッドを縦向きにして仕掛けを浮かせるように引き、底を跳ねるように引いてもよい。
投げ釣りや船釣りで主に狙われるキスは、底ベッタリに遊泳しているように思えるが、実際は海底から30㎝くらい上を泳いでいることが多い。
このため、仕掛けをシャクって浮き上がらせ、ふわっと仕掛けが落ちる際に食うことも多い。エサだけ取られるときや釣れないときに試すと良い。