ポテンシャルの高さとアクセスの手軽さから、人気の高いサーフ(砂浜)。
夏には海水浴客で賑わうサーフですが、釣り人には「釣れなさそう」や「どこを攻めればいいか分からない」などの理由で、投げ釣りやヒラメやマゴチのルアー釣り以外では他のエリアに行ってしまいがちです。
サーフでは一般的に低い位置からの釣りとなるため、潮の流れや水深が分かりづらいでしょう。また広大なエリアのどこがポイントなのか判断が難しいという点もあります。
ところがサーフはポイントさえ掴んでしまえば、フカセ釣り(渚釣り)でも堤防や地磯と同じように釣れるし、条件の良いポイントでは他のエリアよりも好釣果が見込めます。
そして何より場が荒らされていないので魚がスレていないことも魅力です。要所を押さえつつ、どうやったらサーフが釣れるのかを紹介していきます。
サーフの種類

釣りにおけるサーフとは、砂浜や砂利浜、ゴロタまで含んだフィールドをいいます。今回は砂浜をメインに話しを進めていきましょう。
大別すると砂浜は遠浅・徐々に・一気に深くなるという3つの種類に分けらます。まずは砂の粒を見てみましょう。
粒が小さいものは、勾配が緩やかなサーフで、明確なヨブ(サンドバー)が少めになります。浅瀬が一帯まで広がっているため、小さな砕波(白波になる波)が連続しています。
遠浅な千潟などが挙げられ、水温が気温に左右されやすい場所です。また甲殻類や貝類がよく見られるのが特徴です。
もうひとつは前述のサーフよりもやや勾配があり、明確なヨブがある場合です。砂の粒も小~中程度。

ヨブにもさまざまな形状があり、例えば、明確なヨブが直線状にできていると一直線に浜へ向かって砕波が押し寄せてきます。
最後は、波打ち際周辺より一気にカケアガリがあるパターンです。砂は大きく粗く、カケアガリがあるところで大きな砕波が生じ、それより沖の水深の変化がないところは砕波も少なめです。
水温の影響は受けにくいですが、海が荒れたときの波打ち際は危険です。
どこが釣れてどこが釣れないというわけではありませんが、共通して言えることは、水深があり、ヨブやカケアガリ、岩や藻場のようなストラクチャーがある場所に魚は潜みます。
こう考えてみると、堤防や磯と同様に釣るポイントは同じということが分かるでしょう。
重要なポイントと見極め方

海からの情報でどこに魚がいるのか、つまり水深や底の状態をどこまで推測できるかが重要になってきます。これが分かればサーフでの釣りも狙いやすくなります。
一口にサーフといっても長さや面積、直線か、湾曲か、などのさまざまな形状のサーフがあり、風の影響による波の数や大きさ、砕波の場所も違ってきます。
次からは具体的なサーフの形状、波の性質について解説していきます。
サーフの形状と種類
ワンド状

フカセのチヌ狙いではワンド状のサーフが一般的です。チヌは警戒心が強いので浅すぎると鳥や人間の気配で逃げてしまう恐れがあります。よって、水深があるところを選んだ方がよいでしょう。
また、両岸が突堤や地磯ならばなお条件はよいです。これは潮の流れが良好というのもありますが、両端を行き来するチヌがサーフ上の変化のある場所に居着くからです。
ひとつの目安として干潮時、20m先の水深が1mほどあれば狙うことは可能なので、遠浅だからといってあきらめることはありません。
もちろんルアーでも狙えます。潮が速すぎる場所では流されてしまう小魚がワンドに溜まるのです。
サーフに打ち上げられているカタクチイワシなどの小魚を見ますが、それはフィッシュイーターが追いかけて逃げた結果、という考え方もあります。
事実、遠浅のワンド内でも釣果は高いことからこのことはうなずけます。
沖堤防・沖テトラのあるサーフ

マキエを撒くフカセ釣りでは向岸流(当て潮)が強いと足下まで戻ってきてしまいます。また、流れが速すぎると海中でマキエがかき回されてしまう恐れもあります。
チヌをフカセで狙うなら凪いでいるか、沖堤防などで向岸流を一度殺してくれるサーフがおすすめです。
マキエを効かせやすくなるうえ、ウキも見やすくなります。また沖堤防がある場合、イガイなど貝類が付着しやすく、それをエサとする魚が集まってくるため、必然的に魚影も濃くなります。
チヌに限らずシーバスやヒラメ、マゴチなどのフィッシュイーターもこれらを狙って集まってきます。
河口に隣接

河口のサーフでも基本的に攻め方は同じですが、海の流れと川の流れが複雑に交じわるため、潮流は速いです。川からの流れがあるのでカケアガリがあることが多く、その周囲に魚がいる可能性が高いです。
また潮と潮がぶつかるようなポイントも多く、ベイトフィッシュが多く集まりやすいため期待できます。そして汽水域でもあるので魚種も豊富です。
しかし、雨後などは濁りやすく、堰がある河川では放流にも影響されやすいです。
岬のサーフ

岬状地帯のへりは水深が他よりも深くなることが多いです。
潮通しが良く栄養分も豊富で、すぐ近くにカケアガリやヨブがあることが多いです。フィッシュイーターのエサ場・回遊コースとなりやすいのも特徴です。
波の形状・海の色で見分ける

砕波の発生は浅瀬に進入した海水が海底との摩擦により波の形を維持できなくなることで起きます。
また、このときの砕波の高さから水深を測ることができ、約1.5倍の水深があるので岸からでもある程度目測できます。ただし、強風や海が荒れているときはこの限りではありません。
大きな波が起こるということは、海底に何らかの変化が存在するということです。
だらだらとした小さな砕波ならば、浅く、海中の変化は少ないです。逆に大きな砕波ならば底に岩やヨブが存在していると考えてよいでしょう。
また、海水の色である程度の水深を把握することもできるでしょう。海水は光の中の青い波長を吸収しにくいため、水深が深くなるほど青が濃く見えます。
海によっては緑色や茶色に見えることもありますが、これは光の強さや水中のプランクトンの違いで、植物性のプランクトンが多いとそう見えます。水深が深くなれば濃く見えるという点に違いはありません。
波打ち際の変化

水深を予測する方法は他にもあります。背後の海岸地形を観察してみましょう。凹凸になっているのが分かれば、そのまま海側も同じ形状になっている可能性が高いです。
また、漂流物や残された砂利石によっても判断が可能で、漂流物の位置が低く、波打ち際より遠い場所にある場合は遠浅の海岸であることが多いです。
潮の流れ

潮が沖から岸に向かってくる向岸流。岸にぶつかり流れる並岸流。そしてサーフでのキモとなるのが沖に戻る流れ、離岸流です。
波と地形の相互作用によっていくつもの離岸流が発生し、大きいものだと幅は30mにもなります。流れは秒速2m以上という大変速いスピードになることもあります。
そのため、競泳選手でも逆らって泳ぐことは難しいとされる離岸流ですが、釣り人にとっては一級のポイントとなりえます。
フカセ釣りでは周辺にできるカケアガリやヨブで流れに同調させることを意識し、ルアーでは向岸流と離岸流の境目を意識してトレースしましょう。
離岸流の見つけ方

まず潮を観察してみましょう。岸に向かってくる砕波が切れている場所があるはずです。
さらにその周辺の水面がまるでライズしているかのようだったり、モワモワとざわついているところが離岸流の可能性が高いです。
波打ち際も注目。砂浜の一部が凹んだようになってはいないでしょうか。そして波によって作られた泡が一部だけ沖に向かって流れてはいないでしょうか。
また漂流物や藻が集積しやすい特性があるので、波打ち際や水中に集積しているのを発見できればその周辺は離岸流が起きているでしょう。
離岸流をどうしても見つけられないときは最後の手段として、ウキやフローティングミノーを漂わせてみましょう。そうすれば自然と流されていき、潮流を把握できます。

まずはコツを掴むこと
潮を読んだり、ストラクチャー周りを攻めたりすることは、他のエリアと結局は一緒なのだと分かります。ただ、水深や波の見方、形状を把握するには少しコツがいるということです。
「こんなところでは釣れない」という食わず嫌いならぬ、釣らず嫌いの気持ちを抑えて経験してみるのが一番良いでしょう。
サーフでの釣りを覚えるとハマる人が多く、また他のエリアでの応用が利くのでレベルアップして堤防や磯に挑むと新たな発見をすることでしょう。
波止や磯では離岸流とは言わないですが、沖に出る潮、潜る潮が仕掛けを入れる前に分かるようになるだけで、それは釣果を約束されたようなものなのです。
