毎年秋になると、タチウオ(太刀魚)の群れが回遊してくる季節です。釣れる場所はおおまかに決まっていますが、その年の水温や潮流などの条件によっても異なります。
タチウオ釣りでクーラー満タンを目指すために、知っておきたいことや、押さえておくべきポイントを、一問一答形式で解説します。
Q1 エサ釣りをするときのウキ下はどれくらいがよいのですか?

活性が高いときは、タナが浅くなります。タチウオの群れが大きく競争心が強いときは、半ピロのウキ下でもアタることがあります。
そのような状況でウキ下を深くしていては、時間をロスするだけです。周囲の釣り人の動きを見て、食いが高まったとみれば、すぐに浅くしましょう。
浅ダナでアタリがなくなれば、少しずつ深くします。足元で10mを超える深場であれば、竿2本近いウキ下を取ることも珍しくありません。それでもタチウオは釣れるでしょう。
では、データのない釣り始めはどうすればよいでしょうか?
これに二つの考え方があります。上から探っていくか、下から浅くしていくかです。
夕まづめからスタートすれば、活性は高いという前提です。この場合は、2ヒロからだんだん深くしていくとよいでしょう。
釣りのスタートが遅くて、すでにピークが過ぎていて、しかも水深がある釣り場なら、底スレスレから始めてもよいでしょう。
ただし、暗くなってからのタチウオのタナは一定しません。3ヒロでアタったと思ったら、次は5~6ヒロだったりします。
常にウキ下を変えて、タチウオのタナを探ることが大切です。流れが緩い釣り場では、竿を2本出し、ウキ下を変えて流すと、ヒットするタナを見つけやすくなります。
Q2 ポイントが分かりません。遠投した方がよいのでしょうか?

フィッシュイーターは暗くなると、明かりに集まる小魚を捕食するため、その周囲の暗がりに身を潜めています。これはスズキも同様です。
したがって、常夜灯があれば、その周囲をまず狙ってみましょう。
とはいえ、水深や潮通しなど、他の条件も考慮する必要があります。やはり、ある程度は深く、流れもあった方がいいでしょう。活性が高いときは、水深3m前後まで接岸してきます。
しかし、ハイシーズンの休日前夜などは釣り人が多く、なかなか好ポイントには入れません。常連に占領されているケースもよく見られます。
そんなときは、足元の影を釣るのも面白いでしょう。すぐ後ろに常夜灯があれば、足元に影ができます。埋め立て地の岸壁で水深があれば、そのような場所でもタチウオは釣れます。

暗くなって活性が落ちたタチウオは、接岸はしているものの狭い範囲で回遊しています。ですからアタリは続きません。ポロポロとアタったと思えばまたどこかへ移動します。
食わなくなってもまた戻ってきますから、気長に待つことも大切です。
本誌9月号の特集で紹介した集魚灯を試してみるのもいいでしょう。最近の新しい集魚灯は小型ですがパワーは十分で、夕まづめから点灯しておけばさまざまな小魚が集まってきます。
それらを掬ってエサにすればすぐ食い込んできます。
Q3 ウキにアタリが出るのにまったくハリに掛かりません。


タチウオは泳ぐのがあまり得意ではありません。なにしろ、名前の通り立って泳ぐのですから、小魚を一気に襲って飲み込むことは、よほど活性が高いときを除いてはしません。
タチウオの歯を見れば想像がつきますが、鋭くて釣りバリのようなカエシがあり、一旦噛みつかれると簡単に逃げることはできません。
そうやって動きを封じておいて、じわじわと飲み込むのがタチウオの食事パターンなのです。ハリまで口の中に入っていない時点でアワせても掛かることはあり得ません。
そのため、ウキの動きを見てアワセのタイミングをつかむのはやめた方がいいでしょう。

解説書の一部には、ウキが沈んでから3〜5分待ってアワせればいいと指示したものもありますが、それで掛かる場合もあるでしょう。しかし、ハリに掛かるかどうかは賭けのようなものです。
それよりは、竿先でタチウオの動きを確認してからアワせた方が確実です。ウキが沈んだらゆっくりと道糸を張り、竿先にタチウオの動きが感じ取れるまでテンションをかけます。
ピクピクという反応はまずエサ盗りと思っていいでしょう。ゴンゴン、またはゴツンゴツンと感じたら、エサをくわえたタチウオが首を振っている可能性が高いと見てよいでしょう。
さらに待つと、グーンと竿に乗ってきます。そのときが合わせどきです。
といって、それでも掛からない場合があります。そのときはグーンと乗ってからワンテンポ、ツーテンポ遅らせてアワせればよいでしょう。
このとき、穂先が硬い竿を使っているとタチウオがエサを離す可能性があります。ドラゴン級の取り込みは大変ですが、1.5〜2号竿がよいでしょう。
Q4 隣の人はよく釣れているのに自分にはアタリがありません。

隣で竿を出しているベテランは次々とタチウオを釣っているのに、自分にはまったくアタリがないことがあります。
仕掛けもエサもウキ下も大差ないのにそういうことがある場合、一番に疑わないといけないのが誘いです。潮が動いているからといって、そのまま仕掛けを流しっぱなしにしていませんか?
タチウオのエサであるキビナゴがここに2つあったとします。一方はハリに掛かったまま同じ状態で流れていて、他方はピコピコ、またはフワフワと動いているとしましょう。
タチウオにとってどちらが興味深いでしょう?生きた魚を常食としているタチウオは当然「動いている」キビナゴに注目し、そちらを食べる確率がはるかにアップするはずです。
船釣りではシャクる誘いもあるそうですが、ウキ釣りではゆっくり持ち上げる程度で十分です。フワッと誘い上げてゆっくり沈め、また誘い上げることを繰り返します。
竿を2本出している場合は交互に持ち上げるとよいでしょう。
ただ、小さいアタリが続くだけでどうしても食い込まないときは、誘い方を変えるといい結果が出る場合もあります。
ウキが少し沈んでそれ以上変化がないときは、じわっと張ることが誘いとなり、さらに食い込む可能性があります。
いずれにしても、置き竿で仕掛けを流しっぱなしにしていては釣れません。
Q5 タチウオにマキエの効果はある?

キビナゴやイワシを刻んで撒くとタチウオの活性が上がるし、多くのタチウオが集まってくるのは確認されています。
しかし、いくら撒いても足止め効果はなく、いずれはどこかへ去っていきます。
また、集魚灯の下ではなにもしなくても小魚が集まってくるので、そこではマキエの効果は期待できないことになります。少し余分に買って撒く程度でしょうか。
Q6 釣り上げたタチウオを簡単に処理する方法はありますか?

夕まづめの活性が高いとき、タチウオは連絡してアタってきます。そんなとき、釣り上げたタチウオの処理に手間取っているとゴールデンタイムを逃してしまいます。
30分の間に7〜8尾釣るのと1尾しか釣らないのとでは大きな違いです。
といって、やたら急ぐと大ケガをしかねません。上の写真のようにタチウオの歯は鋭く、しかも性質は獰猛ですからうっかりつかもうものなら噛みつかれてしまいます。
そのため、タチウオ釣りには魚を挟むためのハサミが欠かせません。慣れていればタオルを被せて頭のすぐ後ろをつかんでも構いませんが、頭を激しく振っている状態ではそれも難しくなります。
また、タチウオを絞める場合、他の魚のようにナイフで延髄を刺すのは不適当です。イサキやサバのように首を上方に曲げる首折りが適切です。
手でも可能ですが、危険を避ける意味でやはりハサミを使って、左右のエラ孔の一番下の部分を切ってしまえば簡単です。
そのとき、ついでにエラを指でちぎり取り、塩氷(海水を氷でたっぷり冷やしたもの)に入れると血抜きもできます。慣れるとこの作業に1分もかからないでしょう。
タチウオは美味しい魚です。せっかく釣り上げたのですから、美味しいままで持ち帰りましょう。刺身、塩焼き、ムニエル、唐揚げ、フライ、天ぷらとどんな食べ方もできます。
Q7 ウキがピクピクするだけで全然引き込まないときの対策は?

タチウオ釣りではハリスにワイヤーを用いるのが一般的です。なにしろ食い込みが悪いため、アタリに対して送って送って送るのが通例ですからハリは飲み込まれているのが大半です。
そのため、フロロカーボンでは切られることが多く、その対策としてのワイヤーなのです。
しかし、49本縒りのいかにしなやかなワイヤーでも、食い渋ったときはこれが理由で食い込みが悪くなります。そんなとき、フロロハリスに交換すると食い込むケースがあります。
さすがに2〜3号ではすぐ切られますから、最低でも5、6号を使ってください。市販のフロロ仕掛けも6号がメインのようです。
当然、チェックは念入りにやる必要があります。仕掛けを巻き取るたびにキズを調べ、発見したらすぐ交換します。
タチウオが食い渋ったときの対策としては、他にウキの抵抗を小さくする方法があります。釣りのガイドブックには、なぜか2〜6号のウキを使った仕掛けをよく紹介しています。
当然、オモリもそれに対応しているものを使っているわけですが、ウキ下がそれほど深くなければBや2Bでも十分なはずです。
さらに、ウキの残浮力を極力なくすことで抵抗は少なくなりますから、タチウオの食い込みはよくなります。
Q8 タチウオはルアーとエサ釣りではどちらがよく釣れますか?

通常、タチウオは朝夕のまづめに活性のピークを迎えます。他の魚もこの時間帯になると活性が上がることが多く、タチウオはそれらを追って活発な食欲を見せます。
したがって、このチャンスタイムはルアーの方が勝負は早いといわれています。着水したルアーを追いかけて食うのですから、アタリを待つロスタイムはほとんど不要です。
また、エサをハリに装餌する必要もありません。ピーク時に次々と釣り上げることができればクーラー満タンも夢ではありません。
しかし、完全に日が沈んで暗くなればタチウオは活性が衰え、タナは全体に深くなります。

エサを見つけても一気に食うことはなく、口先でチョンチョンとつついてみたりしてハリに掛けるのは難しくなります。
そういう状況になればエサ釣りの出番です。ウキを流してエサをゆっくり漂わせ、それほど食欲のないタチウオにアピールします。
タチウオの群れは1カ所にとどまらず、狭い範囲を移動していますから、彼らが回ってくるのを待つというイメージです。
このように、できればルアー釣り、エサ釣りのタックルを両方持参して、タチウオの食いに応じて使い分けた方がベターでしょう。
ただし、たくさんの人がエサ釣りをしている中でルアー釣りをするのはやめましょう。他人に迷惑をかけるのはまともな釣り人とはいえません。