タチウオは、夏の終わり頃から産卵のため接岸してくる。地域差はあるが晩夏からシーズンが開幕し、年によって異なるが、12〜1月まで釣れ続く。
もっとも、シーズン初期は平均して型が小さく、「指2本」級のベルトサイズが多い。だが、日を追って成長し、指3本から、やがて指4本まで大きくなる。
タチウオの食性

釣りをする上でぜひ知っておきたいのが、タチウオの食性だ。歯を見れば、タチウオは典型的なフィッシュイーターであることが分かる。が、体型やヒレから想像できるように、泳ぐのは得意ではない。
だから、アラカブや青物のように、いきなり小魚を頭から丸飲みすることはしない。というか、できない。
まずは胴体にガブッと噛みつく。そうやって動きを封じておいて、それからじわじわと飲み込んでいくのだ。
したがって、エサはできるだけゆっくり動かし、アタリが出てもすぐにはアワせない。
タチウオ釣りの一番難しいのがこの部分で、アタリは10回あったのに、取り込めたのは2尾だけということがしばしばある。
潮目と常夜灯下が狙い目

タチウオはエサを食べるために、夜になると堤防や岸際の近くにやって来る。早くいえばエサである小魚が集まる場所がタチウオのポイントになる。
では、小魚はどんなところにいるか?
彼らもまた、エサであるプランクトンが集まるところに集合する。1つは潮目であり、もう一つが常夜灯の明かりの下になる。
潮目にはゴミや海藻などの浮遊物が集まってくるが、プランクトンもまた、ここに溜まる。それを食べるために小魚が集まり、タチウオもその周囲にやってくる。常夜灯も同じだ。
とはいえ常夜灯があればどんなところでも釣れるというわけではない。ある程度の水深は欲しいし、潮はやはり動いていた方がいい。

また、理由は分からないが、岩礁帯よりは砂泥底のほうがタチウオは多い。常夜灯と似たような条件であるせいか大きな橋の下もタチウオは好む。
このように、タチウオのポイントは一定の条件が揃っている必要があり、そのため実績のあるところでは例年タチウオが釣れている。
なお釣り場によっては自前の集魚灯を使用するところもある。光に集まる小魚を網ですくい、それをエサにするのだ。
小アジやサヨリ、イワシなど、魚種にはそれほどこだわらない。
遠投&深場が探れる仕掛けがコツ

タチウオ仕掛けの要点は、遠投できることと深場が探れるところにある。タチウオは小魚が集まるところがポイントになる。そのポイントが遠いと、当然遠投できる仕掛けでなければならない。
また、小魚が深場に潜んでいれば、タチウオのタナも深くなる。特に、夜遅くなると竿2本以上になることも珍しくないから、オモリは2〜3号が標準になる。
それに伴って、竿も硬くなる。重い仕掛けを遠投しないといけないからだ。タチウオの引きそのものはあまり強くない。前述したように、泳ぎはあまり得意ではないからだ。
ポイントが近く、また浅ダナしか釣る必要がない場合は、仕掛けが軽くても構わない。竿も1〜2号でいいことになる。
タチウオ仕掛けの二番目の特徴は、ワイヤーを使うところにある。非常に歯が鋭いから、フロロカーボンではすぐボロボロになってしまうのだ。
とはいえ、ワイヤーの取り扱いには慣れが必要だ。専用の道具もいる。
というわけで、市販の仕掛けをおすすめする。これならスナップサルカンにセットするだけだから、非常に簡単だ。ワイヤーは一度ヨレると元には戻らないから、予備は5、6本用意しておこう。
夕まづめに食いが立ったときは、予備のハリにエサを装餌しておき、タチウオが釣れたら仕掛けごと交換するという裏技がある。
仕掛けを放り込んで、それが馴染む間に魚を処理して、再びエサを刺しておくのだ。
非常に食いが悪いときは、フロロカーボン5〜6号にチヌバリ4〜5号を結び、それにエサを刺す。ワイヤに比べるとフロロは軟らかいから、食いがよくなる確率が高い。
ただし、太くしてもフロロは傷が入りやすい。こまめにチェックして、傷が入ればすぐ結び直す必要がある。
ツケエは小アジの活きエサと冷凍キビナゴの人気が高い

魚を食べるタチウオを釣るのだから、当然エサは小魚を用いる。手に入りやすいのは冷凍のアジ、サバ、イワシなどだが、常夜灯に集まる小アジ、サヨリ、ヒイカなどを使ってもよい。
ここでは、人気が高い小アジの生きエサと冷凍キビナゴを例にとって解説してみよう。
生きている小アジを泳がせる場合は、1本バリ、または2本バリを使う。できるだけ長く元気よく泳がせるには1本バリの方が有利だが、前述した通りタチウオはエサを食べるのがヘタクソなため、ハリ掛かりさせるのが難しい。
2本バリで口と背中に掛けるとフック率は高くなるものの、今度は小アジが早く弱る。
冷凍キビナゴを使う場合、口や目に掛けると、遠投したときエサ落ちしやすい。それを防止するには一旦目から抜き、体を一巻きして背中に掛ける。
市販の2本バリタチウオ仕掛けは垂直式と水平式があり、キビナゴを縦、または横にして流す二つのタイプがある。条件によって食いがいい・悪いがあるから、どちらが優れているとはいえない。

なお、エサ用として釣具店で販売されているキビナゴは、塩を振って身を締めている。だが、食材として魚屋で売っているものは生のままだから身は軟らかい。
そのままエサとして使うとハリ落ちしやすいので、使う前に塩を振っておくことをおすすめする。
アタリは、たまにスパッとウキが消えることもあるが、ほとんどの場合ジワッとゆっくり沈んでいく。
冒頭で解説したように、タチウオはまず腹部に噛みつき、次に頭から食べていくためで、腹部に噛みついたときにアワセてもハリ掛かりしない。
そのため、タチウオ釣りの原則は超遅アワセと覚えておこう。ウキが少し沈んだままでそれ以上の変化がないときは、ジワっと張ってみる。それで食い込むこともあれば、エサを離す場合もある。
ウキが完全に見えなくなったところでソフトにアワせる。

ハリ掛かりしなかったら、仕掛けをもう一度送り込む。すると、再びタチウオが乗ってくることがあるのだ。大アワセするとエサがハリから外れる可能性が高い。
タナにもよるが、タチウオは必ずしもウキを下に引き込むとは限らない。横に移動することもあるし、食い上げる場合もある。ウキに変化が出たらジワッと張るのは、この場合も同じと思ってよい。
アタリがない場合は、ウキ下を変えて上下に探ってみよう。ピークの夕まづめは浅ダナに浮いてくるが、その後は小魚に合わせて潜ったり浮いたりしている。
浅くしていたら深くして、深くしていたら浅くしてみる。
冷凍エサの場合は、ルアーのように手前に引いてみるのも効果がある。潮の動きがよくないときはぜひ試してみてほしい。
ただし、引く速度はゆっくりと。タチウオ釣りではこれが絶対条件だ。