通い慣れた堤防は休日ともなると大混雑。好ポイントに入ろうと思えば暗いうちから現場に着かないと難しいし、人が多すぎて釣りづらいことも。
そんなとき、ガラガラの沖堤防を見て「いいなあ、あそこで釣りをしてみたいな。きっと、よく釣れるんだろうなあ……」そんな思いに駆られたことはないでしょうか。
そんな釣り人の思いをかなえる沖堤防の魅力をお届けします。
沖堤防はパラダイス

沖堤防と地続きの堤防との一番大きな違いは、誰でも簡単に歩いて行くことができるかどうかにあります。
道路が通じていて堤防の近くに駐車スペースがあり、足場が良ければ、たくさんの釣り人が気軽に楽しめます。
一方、簡単に歩いて行けなければ渡船に頼らざるを得ず、経費がかかるためビギナーは二の足を踏んでしまいます。家族連れも難しくなり、その結果、釣り人の数は極端に絞られることになります。
もちろん、釣況によって釣り人が集中する場合もないではありませんが、地続きの堤防に比べるとずっと少なくなります。
あそこへ行ってみたいなあ……釣り人はそれを見てしばしばそう願う。沖堤防を訪れるのはベテランが主で、何をどうするべきかはよく知っています。
荷物をそこら一面に広げたり、仕掛けを流しっぱなしにして周囲の釣り人に迷惑をかけることはあまりありません。その結果、快適な釣りができる可能性が非常に高いことも魅力です。

釣り人が少ないと魚がスレていない
釣り人が少ないとゆったりと釣りができるのに加えて、魚がよく釣れるという大きなメリットがあります。なぜか? 理由としては次のようなものが考えられます。
①マキエの量が少ない

釣り人が少ないから投入されるマキエも少なく、魚は飽食状態とはほど遠い。
②マキエワークができる
肩を接するほど釣り人が並んでいると、エサ盗りをかわすマキエワークなど不可能に近いでしょう。でも、釣り人が少ないと可能になり、エサ盗りを分離できるようになります。
③ハリの怖さを知る機会が少なく魚は素直にツケエを食ってくれる
不自然な動きをするエサを食べるとハリに掛かり、自分の動きを封じられるという状況に遭遇すると、その後はなんとか脱出できたとしても経験は記憶され、エサを見つけたとしても素直に食わなくなります。
自分が当事者でなくとも、周囲の仲間が突然暴れだしてその場から消えるという状況が何度か続けば、魚は警戒するようになります。
その点、沖堤防はハリに掛かった経験を持つ魚が少なく、エサを発見すると素直に食い込もうとします。大型にしても警戒心が少なく、それだけ釣りやすくなります。
どんな状況にも対応できる態勢で

ここまで、沖堤防のプラスの要素を取り上げてきましたが、今度はマイナス面を見てみましょう。
沖堤防の最大の難点は簡単に帰れないことにあります。もちろん、予想外にシケだしたり、急病などで緊急を要する場合は、スマホで渡船の船長を呼び出せば港に戻ることはできます。
しかし、忘れ物をしたからといって港に連れて帰ってはくれません。したがって、飲食物は当然、釣り道具の予備や仕掛け、集魚材のスペアももれなく持参しておかなくてはなりません。

沖堤防の上は風や直射日光、雨にまともに晒されます。暑い時期は日除けやそれにともなう豊富な飲料が必要で、逆に寒いときは予備の防寒着や使い捨てカイロが欠かせません。
雨が予想されるならレインギアやテントを準備する必要があります。
地続きの堤防なら、なにか不都合があればすぐ車の中に退避できますが、沖堤防はそれができません。予想される状況に対してすべて対応できる態勢でないといけないのです。
沖堤防なりの難しさも

沖堤防は釣り人が少なく、魚はスレていないとはいえ、釣り堀のように簡単には釣れるわけではありません。
チヌやグレを相手にする以上、潮や波、時間などの条件によって食うか食わないかは大きく変わります。
また、マキエの効かせ方や同調しているかどうかなど、魚がツケエを食べない理由はいくらでもあります。釣れないからといって、即座に沖堤防に魚は少ないと断ずるのは大きな間違いです。
加えて、沖堤防には、往々にして地元のルールがあります。釣り人は少ないながら、そこが好釣り場であればあるほど常連が増え、その釣り場固有のルールができ上がります。
仕掛けが流れるにつれて移動する観音釣りなどがそれで、ルールを知らなければ列に入ることは難しいです。初めて訪れる釣り場では渡船の船長に確認しておいた方がよいでしょう。