夏は暑くてエサ盗りも多く、集中力が長くは持たないから、少しでも楽に釣りたい。効率良く手抜きして短時間で勝負を心がけよう。釣果は折り紙付きだ。
全層か全遊動で狙う

チヌ釣りではいろいろなセオリーがある。それだけ研究が進んでいるといってもよいだろう。しかし、こだわり過ぎて釣果を逃してしまっている人が多いように思える。
特に暑い日差しの中では思考能力も落ち気味になってしまうから、「次の一手」が面倒になることも。
こうなるとアタリが出ないときに同じツケエで何度も仕掛けを流してしまうなど怠慢な釣りになりがちだ。
いわゆる釣れない条件を自分で作っている状態となる。だから、こだわりを捨ててチャレンジ精神で新しいことを試してみよう。
提案は、すでに実行している人も多い、上層から狙うチヌ釣りだ。場所の条件としては……
①歩く程度の速さまでの潮が流れる場所。
②水深10m以下で適度に濁っている釣り場。
③エサ盗りに小グロが交じらない場所。
この三つに当てはまる場所でやっ てみよう。

仕掛けはどちらも全層か全遊動釣法。流れがある場合は沈め釣りが理想で、ない場合はウキを浮かせて流れと仕掛けの位置を把握できるようにしておく。
マキエは通常通り比重の大きなチヌ用マキエで問題ない。仕掛けと完全同調するのではなく、マキエが沈んでいるエリアを軽い仕掛けで狙うイメージだ。
余裕があれば軽い素材のマキエを入れ、仕掛けとの同調を行うとさらによい。
夏チヌはマキエが効いてくると浮く傾向にある。だからずっと底にマキエを溜め続けるよりも、マキエの帯や煙幕を重視すると釣りやすい環境に傾く。
浅場から深みへ

条件によるが、夏は水深1mもあればチヌを狙うことができる。濁りができやすい底が砂泥質の場所では特にそうで、河口付近も同様に狙いやすい条件が整っている。
だから、夏チヌは浅場を狙うというのは定番ともいえる。
ここでいう浅場とは、一帯が浅い場所ではなく、ポイントの中でも浅い場所という意味だ。
夏になると水温が上昇しさらに溶存酸素量が減ると魚の活性が下がっていく。そうなると水温が安定する場所や、日陰となる場所で休んで動こうとしなくなる。
結果エサを追わないから釣れなくなってしまう。対策として夜釣りが効果的であるが、夜でも適正水温よりも高く推移するから食いは落ちる傾向にある。
以上のことから、夏はいきなり深場を中心としたポイント組み立てを行うとチヌがそこから動かなくなり、エサも活発に追わないということになりかねない。
だから、少しでもチヌの食い気を出すようなマキエワークが必要になってくる。
その一つが深場からチヌを動かすマキエ戦略だ。

呼び込むためのステージ(浅いエリア)を決め、潮の流れを計算してマキエが徐々に深場へと流れ込むようにする。
もちろん、海底の様子をカメラで見るわけではないから正確には想像でしかないが、釣れないからといってダイレクトに深場を狙わないようにすることだ。
マキエの煙幕や比重の大きな素材が、徐々にチヌが潜む場所に流れ込み、視覚と臭覚を刺激されたチヌが動き出すという算段だ。
辛抱のいる戦法になるが、一気にチヌが寄ってくるため釣れ始めると入れ食いになることもある。
ハリスを細くする

いつからだろうか、チヌ釣りもクロ釣りもハリス1.5号が標準的になったのは。
その昔は今よりもラインの強度が弱かったはずであるが、チヌ釣りでは0.8号を使う釣り人が多かった。
そのためか、掛けてからのやり取りの知識を追い求める人が多く、いかにバラさずに、いかに次のチヌを続けて釣るかを大切にしていた。これは現在の釣り方でも十分に通用する。
ハリスを太くすことはバラさずに取るためにはいいことであるから、あえて細くする必要なないが、もっとナチュラルに仕掛けを流すということを優先してみてはどうだろう。
夏はよどんだ潮、よどんだ流れとなる場所も多い。流れが緩いほどイレギュラーな動きは警戒心を生みやすい。太いラインほど仕掛けに張りを持たせやすい。
これは諸刃の剣でもあり、アタリが取りやすく仕掛けの角度を調整しやすいメリットがあるが、ちょっと仕掛けを引いただけでツケエまで動いてしまうというデメリットがある。
だからハリスを細く(柔らかく)してできるだけナチュラルにツケエを流すようにしてみる。

もう一つは、夏チヌの力強い引きを利用して、竿捌きの練習とハリスへの信頼感を増すためという鍛錬的な意味。
ベテランはすでに号数別の力加減は習得済みだろうが、ハリス1.5号しか使ったことがない人からしてみれば、0.8号は未知の領域だ。
0.8号ハリスを使う場合の注意点は、1号以下の磯竿を使うことと、アワセをできるだけソフトに行うという点だ。
とくにアワセ切れは昔はよく見る光景だったから、今でも結節部分で切れるのは同じだ。
やり取りは、1.5号を使っているときと大差はない。ただし、0号の竿と1号の竿では硬さが違うから、大きな号数ほど無理は利かないということになる。
最後にまとめると、ハリスを細くするメリットは……
①仕掛けの沈み方がゆっくりになる(ナチュラル)。
②魚に違和感を与えにくい。
③掛けてからのやり取りがソフトになり魚が暴れにくい。
サイズにこだわらない

大物を釣り上げたい気持ちは誰も一緒であるが、それを執拗に追うがあまりチャンスを逃していることもある。要は大物の釣り方は一つではないということだ。
特に大型のエサ、大型のハリ、特定の場所という風に決めて狙う場合は、ワンチャンスは逃しにくいものの、多くのチャンスは掴めないで終わるケースもあるということだ。
特に夏場はエサ盗りが多くなるから、チャンスを逃がす状況がより多くなる。チヌが近くにいてもツケエが届かなければ釣れないのだ。
そんなとき「すべての魚を釣る」つもりで挑むと功を奏することが多い。やり方としては、疑わしきはアワせろだ。
チヌ釣りで早アワセはあまり好まれないが夏時期だけはそうでもないから、ビシバシと掛けアワセで楽しんでほしい。
ガツンと掛けたチヌは暴れるから、強い引きを堪能できスリリングなひとときを味わうことができる。サイズに似合わない強烈な引きを楽しむことで満足感を得ることができるだろう。
これを実行する上で大切なことは、アタリを取りやすい仕掛け(タックル)と、食い込みやすいツケエが必要になる。まずタックルは、道糸にPEラインを使うことがおすすめ。
ラインが動いていないようなときでも、穂先やフェザリングした指にアタリが伝わってきやすい。コツコツという前アタリが分かるから、アワせの心構えができアワセが決まりやすい。
PEラインを使う場合、ウキは沈める・浮かせるのどちらかで悩む人もいるだろう。
現在発売されているフカセ釣り用のPEラインはすごく使いやすくなっているが、やはりナイロンラインに比べて風に弱いから、風がある日は沈め釣り、弱い日は浮かせるという風にしてはどうだろうか。

次に重要なのが食わせやすいツケエ。メインはオキアミでよいのだが、ハリとオキアミのサイズのマッチングが重要だ。
オキアミをハリに装餌したときに尻尾から頭まできっちりとマッチングしていることが大切だ。大きいとエサだけ取られ、小さいと警戒心を持たせ食いが浅くなる。
チヌバリ2号ならオキアミSかMサイズを購入し、その中からジャストサイズを選んで装餌しよう。大粒のサシアミも効果的だ。
練りエサを使う場合も同様に、ハリに沿って付けたり、ハリが見えないギリギリサイズに設定する。