「チヌ釣り」と聞いて、投げ釣りを思い浮かべる人は少ないでしょう。ウキフカセや落とし込みに比べると確かにマイナーな釣り方ではあります。
しかしこの投げ釣りが、時期や地形によってはその他の釣り方をしのぐ釣果を叩き出すこともあるのです。また、その仕掛けや釣り方の簡単さは入門にもピッタリ。
どのような状況で威力を発揮するのか説明していきましょう。
シーズンとエリア

春〜夏に河口の汽水域や沿岸域にいたチヌは、水温低下とともに沖の深場へと移動します。
沿岸域の浅場ならウキフカセでも落とし込みでも狙えますが、沖の深場となるとそうもいかない。そこで投げ釣りの出番です。
水温が下がり出す12月頃から乗っ込みが始まる3月頃が、投げ釣りの最も効果を発揮するシーズン、すなわちベストシーズンといえます。

もちろん4〜11月でも狙えますが、その場合は河口や沿岸域がターゲットエリアになります。水温が高い時期は浅場、冬場は深場と覚えておけばよいでしょう。
必要なタックル

投げ釣りでは、飛距離と使用するオモリの重さで竿を選択します。
潮流が緩い場所やチョイ投げの場合は遠投用磯竿でも対応可能ですが、潮流の速い場所や50m以上のポイントを攻める場合は投げ専用のタックルが必要となります。
道糸はナイロンラインの3〜4号。遠投する場合はPEラインがおすすめです。仕掛けはトラブルの少ない一本バリ仕掛けが一般的です。
広範囲を探るため、数本の竿で飛距離を投げ分けると、効率的にポイントを絞り込めます。
ツケエは活きエサ中心

ハリ外れしないようなしっかりした身を持つエサを使用します。
イソメ類、スナモグリ(ボケ)やシラサエビ(モエビ)など、動きで誘う効果を持つ活きエサが中心ですが、冷凍エビやサナギなどでも狙えます。
タックルをセットしてエサをハリに刺したら、自分の釣り座から見て潮上に向かって投入しましょう。
投入後、オモリが底に着いたのを見計らって糸フケをとり、穂先が少し曲がるぐらいで三脚に掛けておきます。複数の竿を出す場合は重ならないように扇形に投入してアタリを待ちます。

カケアガリを探る

仕掛けを投入したあと、しばらく待ってもアタリがないときは、リールを巻いて仕掛けを少し手前に引き戻します。
それを数回繰り返していると、仕掛けが重く感じて動かなくなるところがあります。その場所が「カケアガリ」であり、絶好のポイントになります。ここでアタリを待つのが最も確率が高いです。
カケアガリより手前は捨て石や障害物が多いため、仕掛けを引きずると根掛かりの原因になります。
よって遠投し、少しずつ巻きながら仕掛けを移動させ、最終的にカケアガリで止めてアタリを待ちます。アタリがなければ巻き上げて再度投入します。
チヌのアタリ

アタリは突然出るときと、前アタリがあって、その後に本アタリが出ることもあります。また、モゾモゾとハッキリしないなど、さまざまなパターンがあります。使用するエサによっても違いがあるのです。
慣れないうちは、アタリを分かりやすくするために穂先にアタリ鈴を付けてもよいでしょう。40を超すような大型チヌの場合は、竿を引ったくられそうな大きなアタリが出ることもあります。
食い渋りには誘いで対応

活性が低く、なかなかツケエを食べてくれない状態を『食い渋り』といいます。
この食い渋りに一番有効な対処法は、誘いをかけることです。仕掛けを一点に置いたままにせず、時々巻き取って移動させてやることでチヌの興味を惹くことができ、またエサ盗り対策にもなります。
投げ釣りの場合はエサが着底しているため、一点にエサを置いたままにしておくと、魚はもちろん、カニやヒトデなどの小動物にエサを取られてしまいます。
取り込みはあわてずに
アタリが出てチヌがヒットしたときは、慌てずに竿をゆっくりと立て、まず、チヌを底から浮かせます。大型のチヌでも底から離すことができれば主導権を握れるのです。
底を切れば、引きを楽しみながらゆっくりとリールを巻いていきます。そしてチヌが浮いたらタモですくいましょう。
チヌが水面に浮いても道糸、ハリスは常に張った状態を保つこと。緩めるとハリ外れの原因になってしまいます。