
小湊 透
こみなととおる
映画「男はつらいよ」とイシダイ釣りをこよなく愛し、デカバンとの出会いを求めて鹿児島県内各地で竿を出している行動派。さまざまなジャンルの釣りに精通する。

今回はイシダイの釣り方についての解説の前編。竿を出すまでに行うべきことと、注意点などを書き進めていきたいと思います。
釣行前日の心得

釣行の前日に最も重要なのが天気予報の確認です。もちろんそれまでに仕掛けを作り、タックルの準備を終え、エサの段取りを済ませておきましょう。
イシダイ釣りに限らず、磯釣りは危険と常に隣り合わせです。当日の天気予報はもちろんですが、できれば数日前からチェックをして流れとして分かっておくこと。
天気予報では分かりにくいシケ残りなどの海況が想定できます。
天気予報の定番はNHKの夕方7時前の放送ですが、最近はネット上の天気予報サイトも充実。参考にして釣行するかしないかの判断材料にしましょう。
瀬渡しであれば出るか出ないかは船長任せとなりますが、自分なりに当日の天気の移り変わりを知っておくと心構えができていいでしょう。
最後に当日の潮回りや干潮・満潮の時刻をさらりとチェックすればバッチリです。
釣り場のチェック

いよいよ迎えた当日、ついに釣り場に立つことができました。そうなると、すぐにでも竿を出したい衝動に駆られるわけですが、まずは熱い気持ちを抑えて冷静になります。
そしてその磯で一番高い場所に登り、自分が置かれている状況を俯瞰(ふかん)してみます。
まずは地形や沖の根、潮流などを目でチェック。「ごちゃごちゃしてるなー」とか「水深ありそう」とか「小魚多いなー」とか「ゴミや泡がたまってるなー」とか、とにかくザックリとつかみます。
それと同時に、風や気温、匂い、波の音など五感で感じられるもの全てを感じるのです。
そして後々、それらが変化したことに気付けることが重要。
「研ぎ澄まされた感性」、といえば何か難しいことのようですが、要するに、ちょっとした変化であっても気付けるように集中して釣りましょうということです。
タックルのセッティング

次はタックルと仕掛けのセット。
順番は竿を継いでからリールをマウントし、道糸を竿のガイドに通していくのが普通ですが、足場が狭いときは竿を継ぐ前に道糸をガイドに通してからでないとセッティングできません。
仕掛けを結んだら、次はドラグ調整。大物を狙う釣りにおいてドラグ調整がどれほど重要かはいうまでもありませんが、これはイシダイ釣りにも当てはまります。
もっとも、荒々しさが強調されるイシダイ釣りでイメージされるのは、ドラグをハンマーで打ったくってガチガチにしてイシダイと綱引きする図。いわゆるガチンコのケンカファイト!
確かにカッコいい! ということで否定はしません。

しかし、ターゲットに対してタックルの強度が明らかに勝る場合は問題ありませんが、大物を意識する場合には、やはりドラグを活用した釣りをした方が正解だと僕は思います。
ドラグを使ったやり取りの利点は、瀬ズレしてもラインブレイクし難い(ラインがピーンと張られていないので瀬ズレしてもキズが浅く、広範囲の損傷になるため致命傷にならない)ことと、タックルのダメージや釣り人の体力的負担が少ないこと。
あまり根に行かないイシダイとのやり取りには向いていると考えます。
釣り座の構え方

タックルのセットが完了したら次は釣り座のチョイス。潮流が分かればその潮が当たる地点を釣り座とします。潮流が分からないなら、ピトン足を打ち込んだ跡がある場所を釣り座としましょう。
釣り座が決まったら次は竿掛けを設置します。でも時期によってはこれはこのタイミングでピトン足を打つのはNG!
その時期とは春の乗っ込み期で、足元近くにイシダイがいることがあるのです。
乗っ込み期のイシダイ釣りはシューズのスパイクの音にも気を使うほどの細やかな神経が必要。
人の話声よりも、岩を伝わる振動の方がよっぽど水中に響くらしいので、ハンマーでピトンをガンガンぶっ叩けばイシダイを追っ払っているのと同じこと。
少なくとも朝の数投は手持ちで、そーっと仕掛けの投入を行います。
さて、朝まづめの時合に何事もないというのはありがちな話で、落ち込むことはありません。
極々一部の超ラッキーなイシダイ野郎を除けばこれが当たり前です。気を取り直して次の手立てへと進みましょう。

ここでようやく竿掛けをセットする作業を行うわけですが、穴があればそこに、なければ岩の割れ目に、ピトン足をハンマーで打って固定します。
穴が大きいようであればハーケンを使い、打ち込んだ時に生じる金属音が変わるまでしっかりと打ちます。
置き竿で釣りをする場合は竿掛けが要。大事な竿と釣果を預けるのですから妥協は禁物で、一切の不安が無いようしっかりとセッティングします。
なお、手持ち派の人でも竿掛けは竿の置き場として便利なのでセットしましょう。

ここで忘れてはいけないのが、大切なタックルを魚に持っていかれないために、竿尻に尻手ロープを結ぶこと。尻手ロープの長さは好みで構いませんが、2mぐらいがおすすめ。
いちいち外さずに仕掛けの投入ができて、かつ邪魔にならない長さです。
竿を持っていかれるのは竿掛けのピトン足を倒されて飛ばされるケースが大半なので、竿掛けにもロープを通しておくと万全です。

おろそかにできないのは釣り座周辺の整理整頓。
エサ付け、仕掛け投入、仕掛け回収、エサ付けという一連の動作を極力動かずに、スムーズかつストレスフリーで行えるように、エサの入ったバッカンや水汲みバケツ、ハサミやウニ通し、エサ巻き糸などのイシダイキッチン用品、根掛かり外しなどを配置します。
ここまでできたら準備完了。ようやく本格的なイシダイ釣りの開始となります。