始めてみよう! イシダイ釣り「イシダイ釣りの中毒性」

小湊透プロフィール

小湊 透
こみなととおる

映画「男はつらいよ」とイシダイ釣りをこよなく愛し、デカバンとの出会いを求めて鹿児島県内各地で竿を出している行動派。さまざまなジャンルの釣りに精通する。

イシダイ釣り
イシダイ釣りのやりとりは綱引きのようなガチンコファイト。人間が魚に振り回されるような釣りが面白くないわけがない。

数ある魚釣りの中でイシダイ釣りを特別と捉える釣り人は少なくありません。

いろいろな釣りをしてきた経験値豊富なうるさ方の面々が最終的にこの釣りに落ち着くところをみると、この釣りがいかに魅力的なのかがわかります。

この釣りにハマり過ぎて家庭崩壊など人生を狂わした人の話を聞くこともあるほど、とにかく魅力的なイシダイ釣り。今回はどこにそんなに魅力があるのか、僕の視点で紐解いていきます。

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イシダイの強引

イシダイ釣り
デカバンを夢見るイシダイ野郎たちは、憧れの名礁に思いを馳せる。

魚釣りでのやり取りにおいて、人間が本気の力を出すなんてことはまずありません。ところがイシダイ釣りはなかなか切れない丈夫一点張りの仕掛けで、大物と綱引きとなることがあります。

竿を絞り体を反らし全体重を後方にかけるので、仕掛けが切れたら非常に危険ということでのヘルメット着用。これは他の釣りではあまり見ないいでたちで、この釣りの強引を物語っています。

ちなみに磯大物釣りの究極と言われるアラ釣りは、竿を地球に固定して挑む釣りです。竿を直接手に持っていないので魚のパワーをもろに受けてのやり取りではありません。

それに対してイシダイ釣りは、竿を手に持ついわゆるスタンディングファイト。魚のパワーはダイレクトに釣り人へ伝わってきます。

イシダイ釣り
ようやくアタッたと思ったら色の違う魚が上がってきたなんてことも日常茶飯事。

またスタンディングファイトの究極と言われるGTなどの大型回遊魚を狙ったショアからのルアーゲームは、ドラグ設定値が6~8㎏で魚のパワーを受け流しながらのファイト。

イシダイ釣りはフルドラグで挑む場合があるので、より純度の高いパワーゲームと言えるでしょう。

なお、厳密に言えば、イシダイ釣りでも大型を狙う場合はドラグをフル活用してやり取りします。今回は「強引」を分かりやすく説明するためにあえてこのあたりには触れておりませんので悪しからず。

イシダイ釣りの中毒性

イシダイ釣り
「幻の魚」ともいわれるイシダイ。希少な魚だからこそ、手にしたいという思いが強くなる。

イシダイは「幻(まぼろし)の魚」と称され、絶対数はけっして多くはありません。特に5㎏を超える大判(デカバン)は本当に幻で、なかなかお目にかかれません。

こういう魚だからこそ釣れたときの喜びは計り知れず、テンションMAX! 天にも昇る気持ち♪です。この「釣れない→釣れる」の落差、天国と地獄がたまらないのかもしれません。

これが一定周期で繰り返されるのですから中毒性があり、ハマるとイシダイ釣りの無限ループ、メビウスのなんちゃら。脇目もふらずひたすらイシダイ釣りに明け暮れるようになります。

端から見ると完全に病気、まさにイシダイ釣り依存症。たちが悪いのですが、自覚症状はなく、本人はそういうストイックな自分が好きなのかも……となってしまいます。

さらに症状が悪化してボウズも気にならなくなれば、立派なイシダイ野郎の誕生です。

イシダイ釣りのギャンブル性

イシダイ釣り
竿の構え方にぎこちなさを感じるビギナーでも、まさかの一発があるのがイシダイ釣り。

実はイシダイ釣りってそんなに難しい釣りではありません。こういうことを言うと大先輩方にお叱りを受けますが、釣りの手法としてはただのブッコミ釣り。エサをつけて投げるだけですから。

難易度がもっと高く、難しくて訳のわからない不可解な釣りはこの世の中にいっぱいあります。

何が言いたいのかというと、イシダイ釣り歴何十年のベテラン釣り師でも、最近イシダイ釣りを始めたばかりの若い釣り初心者にあっさり釣り負ける可能性を秘めているということ。

そんなビギナーズラックが生じやすいのがイシダイ釣りなんです。

イシダイ釣り
どのタイミングでどこにマキエを打つか悩みどころ。自然と向き合い小さなことをコツコツと積み上げていくのがイシダイ釣りだ。

そういう意味では釣果を上げる一番の近道は「数撃ちゃ当たる戦法」。とにかくイシダイ釣りに行くことで釣れる確率を上げる作戦。すると前回ご説明した不思議な現象「ノサリ」が……。

イシダイ釣りの世界もご多分にもれず「運」が存在します。釣り人の間では「ノサリ」と呼ばれるこの漁運、ノサリがあれば無敵! どこに行ってもイシダイがついて回ります。面白いように釣れるのです。

これは、その本人も上手くなったと勘違いするのでたちが悪い。そして釣技を磨こうとせず、ノサリに期待して、行けばそのうち釣れると信じて釣りを繰り返すようになります。

こういう、ある意味ギャンブルのようなイシダイ釣りに、魅力を感じている釣り人も多いのです。

努力が報われる釣り

イシダイ釣り
朝まづめにマキエを打ち、用意周到で釣りを開始。それでも釣果を得られるとは限らない。

ここまで書き進めてきて、ようやく正論となります。イシダイ釣りの上達に近道はありません。やはり経験値に比例した釣果というものがあるのです。

例えば、磯のクロのフカセ釣りではハリやハリスの号数を落とすことで劇的に釣れるようになることがありますが、イシダイ釣りの場合はこのような即効性のあるテクニックは存在しません。

というよりは、これは魚の絶対数からくる確率の問題。

普通の釣りはやっていることが正解であればある程度の結果=釣果が出ますが、イシダイ釣りの場合は正解であっても結果が出ないことが多々あります。

釣れない=間違いという考え方ならばイシダイ釣りは間違いだらけ。でも1日というスパンで見ないで1カ月とか1年という長いスパンで見れば正解となる考え方があるのです。

1年間で1尾でもいいと考えれば、その都度のボウズが気にならなくなります。

イシダイ釣り
イシダイの気持ちになってツケエは赤貝を選択。早春の磯で大物に期待する。

エサの装着方法、仕掛けの投入方法、ハリのセレクト、マキエの仕方、アタリに対しての対応などなど……それぞれは釣果を得る上では小さなことですが、とても重要なこと。

この小さなことをコツコツと積み上げていくのがイシダイ釣りです。

イシダイ釣りを「イシダイ道」として釣技向上を目指し切磋琢磨するようになれば本物のイシダイ師の誕生です。

そしてある程度のレベルに達すると大物がアタるようになってきて釣果を出せるようになってくるのです。

こういう地道な形で、やがて経験豊富なベテランとなり、その後ベテランならではの持ち味を出し釣るべくして釣れるようになっていくのです。

イシダイ釣り
1ヶ月1年のスパンで見ながら釣技に磨きをかける。イシダイ道は険しい。

食べて美味い魚

日本人は狩猟民族。海に囲まれているので魚を食べる文化があります。イシダイの食味評価は高く、食用としても人気の魚。

時期やエリアによっては味が少し違うようですが、個人的には自分が釣った魚は食べないので詳しいことは分かりません。

「イシダイは美味しくて捨てるところがない」とは魚好きの友人の弁。食味もこの釣りの魅力になっていることは間違いなさそうです。

イシダイ釣り
釣れない苦しさと釣れたときの喜びの差が大きいイシダイ釣り。イシダイを手にしたときの高揚感には中毒性があり、今日もイシダイ釣り師は磯に立つ。
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