キビナゴは、イワシやコノシロなどと同じニシン科に分類される魚で、本州中部以南の熱帯・亜熱帯域に広く分布し、沿岸から沖合の表層域に生息する。
鹿児島の郷土料理として有名で、長崎や高知などでも巻き網漁が行われている。
産卵期は場所によって異なるが、九州南部では春から初夏にかけて生後1年で成魚になり、体長は大きくても10㎝ほど。寿命は1〜2年といわれている。
非常にデリケートな魚で、ほんの一瞬でも水から出すとすぐに死んでしまうため、水族館でも長期飼育できた例はないという。
釣りエサとしてのキビナゴ

ある程度の大きさの魚にしか食べることのできない絶妙なサイズであり、ムシエサなどに比べるとエサ持ちが良くエサ盗りにも取られにくい。
体表を覆う小さなウロコは光を乱反射させ、ただ沈むだけでエサの存在をアピールする。堤防や磯釣り用としては理想的なエサといえる。
沖縄発のキビナゴを使った大物釣りのメソッド「するするスルルー釣法」も高い実績で注目を集めている。
カサゴ、タチウオをはじめとして、ハタ類、チヌ、マダイ、青物、カマス、アジ、メバル、イカ類など、魚をエサとする魚のほとんどに有効。意外なところでは大型のキスが釣れることもある。
スーパーで購入できる
キビナゴは他のエサと違い、釣具店のみならずスーパーや鮮魚店でも購入できる。
近くに釣具店がなくてもエサを調達できるので思い立ってすぐに釣りに行くことができ、場合によっては非常に安い値段で大量に手に入れることも可能だ。
しかし、キビナゴは非常に傷みが早い魚でもあり、キビナゴ漁が盛んな地域以外のスーパーでは入荷量が少なく、いつでも手に入るというわけではない。
それに選別が厳密に行われていないのでサイズにバラつきがあったり、頭や目玉が取れているものがある。
釣りエサ用として売られているものは、一年中入手することができ、サイズもほぼ揃っている。頭や目玉が取れているものも少ない。
中にはアピール力を高めるために着色加工などが施されている商品もある。確実性を求めるなら釣りエサ用を選択しよう。
キビナゴの加工(塩締め)

スーパーや鮮魚店で売られているキビナゴを釣りエサ用に加工する方法もある。
やり方は簡単。タッパーにキッチンペーパーや新聞紙などの水分を吸収するものを敷き詰め、塩をまぶしたキビナゴを並べるだけ。
さらにその上にペーパーを敷き、その上にキビナゴを重ねてサンドイッチ状態にしていく。
蓋はせずにそのまま冷蔵庫に1〜2日放置しておくとキビナゴから水分が抜けて身が硬くエサ持ちも良い強化キビナゴが完成する。
水分を切って(キッチンペーパーは捨てる)そのまま釣り場へ直行してもいいし、冷凍すれば数カ月の長期保存も可能だ。一度に使う量を小分けしておけば準備も楽だろう。
うまく作るコツは、元の素材に一度冷凍したものではない生のキビナゴを使うことと、水分を吸うための紙を多めに用意することである。
また、キビナゴが曲がった状態で並べるとそのままの形で固まってしまうので、真っすぐに並べることを心掛けよう。
カサゴの狙い方

カサゴはキビナゴをエサにして釣れる魚の代表格。アラカブ、ガラカブ、ホゴとも呼ばれる。
典型的な根魚で、海底に潜みエサが落ちてくるのをジッと待っている。落ちてきたエサには警戒心なく食い付き、難しいテクニックなども必要なく、一年中釣れるので初心者にもおすすめのターゲットだ。
ポイント
岩礁帯やテトラの物陰に隠れてエサを待つ習性があるため、近くに岩場があったりテトラが入っている堤防が狙い目。
堤防の周りが遠浅の砂浜になっていたり干潮時に完全に水が引いてしまうような場所は期待できない。最低でも水深1m以上はある場所が良い。
また、海藻がびっしりと生えているような場所は、生息している可能性は高いが、根掛かりが多いため初心者にはおすすめできない。根に入られる前にアワせて取れるテクニックを身に着けてから挑もう。

こんなところを狙おう
テトラ周り
カサゴにとってはマンションのようなところ。ただし夜はピンポイントを狙いにくい上、危険性も高い。テトラの中を狙うよりも周りを攻めるといいだろう。
港湾の角
潮がよどんで溜まりやすい角はエサが溜まりやすい場所でもあり、カサゴも集まってくる。
堤防の際
堤防や護岸の際にはカキやイガイなどが付着しており、そこに小魚やプランクトンが集まる。中でもケーソン同士の継ぎ目や曲がり角など潮の流れに変化が生じるところは好ポイントになりやすい。
排水口周り
漁協や食品加工場の排水口はカサゴに限らずさまざまな魚が集まるポイント。
タックルと仕掛け

2m前後のルアーロッドに2000〜2500番の中型スピニングリールの組み合わせが使いやすい。道糸はトラブルの少ないナイロンラインがおすすめ。
仕掛けは胴突きやブッコミなどがよく知られているが、キビナゴエサを使う場合、もっと簡単で釣果も望める仕掛けがある。
道糸にハリを結んだハリスを直結し、ハリにガン玉やカミツブシオモリを付けるだけのシンプルなものだ。
軽い仕掛けを使ってキビナゴの重さで落とし込むことで、比較的自由にキビナゴを動かすことができ、次々と場所を変えて広範囲を探ることができる。
ただし、潮の流れが速い場所や水深が5m以上あるような場所ではこの仕掛けでは釣りにくい場合もある。そんなときは3号以上の中通しオモリを使ったブッコミ仕掛けが良いだろう。
エサの付け方


どんな付け方でも食ってくるが、なるべく外れない付け方を心掛けること。頭をチョン掛けにしただけではエサの投入時にはずれてしまう。
基本は、まずハリをキビナゴの両目を貫通させてハリスを通し、ハリ先を背中に埋め込むように刺す。自然な動きになるように、ハリスに対してキビナゴが真っすぐになるようにする。
釣り方
アクション

あまり遠投せずに足元周りを中心とした近場を狙うのが基本。
足元にそのまま落としただけでも、そこにカサゴが居れば食ってくるが、この仕掛けの利点はアクションを付けやすいところなので、いろいろなアクションを試してカサゴの気を惹こう。
ズル引きやリフト&フォール、ボトムバンピングなど、ワームを使うアクションが応用できる。
ただし、あまり速い動きには付いてこないので、なるべくゆっくり動かすことと、食わせの間を作ってやることを心掛けよう。
アタリとアワセ
カサゴは基本的に向こうアワセで十分食ってくる。
ガガガっと竿を引き込むようなアタリがあったら、軽く竿を立てるようにしてハリを食い込ませ、そのままラインを緩めないように一気に巻き上げる。
スッポ抜けが何度か続くような場合は、竿を立てるタイミングを少し遅らせてみよう。カサゴはあまり動き回らないので、同じ場所に落とせばまた食ってくる可能性は高い。
根に潜られてしまった場合
カサゴはハリ掛かりすると根に入ろうとする性質を持っている。一旦入られてしまうと、根の中でエラやヒレを立てて全力で踏みとどまるため、引きずり出すのは困難である。
こんなときは2〜3分何も触らず時間を置いてから竿の角度を変えて引っ張ってみると案外取れることもある。

アタリが出ない
カサゴは貪欲で眼の前にエサが落ちてくればほぼ確実に食い付く。アタリが出ないということは、そこにカサゴがいない、もしくはカサゴがエサを見付けられていないことを意味する。
「同じ場所で3回探ったら移動する」などと自分でルールを決め、次々と違う場所を攻めていくのが効率的な狙い方だ。
タチウオの狙い方

場所によって大きく異なるが、7月から11月にかけて陸っぱりでタチウオが狙える。タチウオは夜行性が強く、夏の夜釣りの人気ターゲットである。
タックルと仕掛け

電気ウキを使ったウキフカセ釣りが基本。タックルは短めのルアーロッドでも構わないが、遠投することを考えると磯竿の方がやりやすい。
仕掛けは市販のタチウオ専用仕掛けがおすすめ。自作する場合はタチウオの鋭い歯に切られないようハリスにフロロカーボンラインの5号以上を使用する。
ハリス切れが多発するときはワイヤーハリスが有効だが、エサの動きが悪くなり食いも落ちるので、釣り始めはなるべく使用を控えよう。
超遅アワセが基本

釣り方はシンプル。仕掛けを海に放り込んだら、あとは群れが回遊してくるのを待つだけだ。アタリはウキに現れるが、アタリがあっても焦りは禁物。タチウオは遅アワセが大原則となる。
ウキがゆっくりと沈んだ場合、そのまま1〜2分、場合によっては5分くらい待って、竿を立てるようにゆっくりとアワセを入れる。
ウキが一気に沈んだときも、ゆっくり10秒くらい数えてからアワセを入れる。
ガツンと手元に力が伝わったらハリ掛かりした証拠だ。テンションを緩めずにゆっくりと巻いて手元に寄せてくる。歯が鋭いので取り込みには注意しよう。