
猪熊博之
いぐまひろゆき
グレ・チヌのフカセ釣りで次々と新しいスタイルを確立してきた磯釣り界のトーナメンター。主な戦績は第30回G杯争奪全日本がま磯(グレ)選手権優勝、第15回、第16回、第19回釣研WFG優勝、など。がまかつフィールドテスター、釣研インストラクター、東レ・モノフィラメントインストラクター、マルキユーインストラクターとして活躍中。大分県津久見市の瀬渡し船アイジーマリン船長。

私のホームグラウンド、大分県に代表される東九州エリアの磯と長崎県に代表される西九州エリアの磯では、グレの動き方が違い、有効な釣り方にも大きな違いが見られます。
このような現象が生じてしまう原因は各エリアの釣り場事情の違い。地域ごとの特性を知って攻略するのもグレ釣りの奥深さです。
今回は一例として九州の磯事情を紹介させていただきます。
東九州の磯釣り事情

大分県一帯の磯は、湾内の磯と沖磯を合わせると、釣り人の収容能力が高く、緩やかな流れの釣り場から、本流が当たる速い流れの釣り場までさまざまなシチュエーションでの釣りを可能とさせてくれる飽きない釣り場であります。
そのためこの一帯のA級ポイントと呼ばれる磯には、場所取りなどを含めると、日中釣り・夜釣りを問わず、極端に言えば24時間、釣り人がいて絶えずマキエを入れ続けています。
そのような状況の中、磯場にいるグレは常に飽食の状態にあるため、マキエには反応しますが、ツケエを一気に食い込みません。
口にしたエサに異変を感じたり、違和感を覚えたら吐き出すといった具合で、いわゆる食い渋っている状態だと言えます。

また、釣り人が撒いたマキエには反応し、浮いてきたグレを視認できるのですが、ツケエだけは食わないといったこともよくあります。
そういう環境の中、東九州エリアのグレは、マキエの帯の中にツケエが入って同調していないと上手に釣ることができないように感じています。
マキエから少し外してツケエを入れて、下層で同調させるように釣ったり、ハリの近くにガン玉を打って仕掛けのなじみを良くしたりして釣ると、ツケエがマキエと違った動きをするため、結果的にグレに嫌われて、極端に食いが悪くなるのが東九州エリアのグレの特徴ともいえます。

そのため、なるべくハリとツケエの重さのみで探れる範囲のタナは、極力ガン玉などを使用せずに釣るのがコツ。
ハリとツケエの重さのみで探れない深いタナを狙う場合はガン玉を使用せざるを得ないのですが、状況に応じてウキをマイナス側の浮力のものにチェンジしたり、ガン玉をなるべくハリから離れた位置となる直結部、もしくはフカセからまん棒の直下に打つなどして仕掛けに手を加えるようにします。
また、ツケエの落とし方(なじませ方)に関しては、ウキを支点に弧を描かせるのではなく、フリーフォールで上から下に向かって軌跡を描かせて、マキエと同じ動きを演出することで釣果に結びつきます。
西九州の磯釣り事情

西九州エリアの磯ではマキエに反応するグレは、概ね小型が上層、下層もしくは沖側に良型といった配置となるイメージで、基本的にはウキを支点に沖側から下層へツケエを沈下させ、小型のグレをかわしながら、効率良く型の良いグレを食わせていく釣り方が有効だと思っています。
また、マキエから少し外したところにツケエを入れて、下層で同調させるように釣ることで型が大きくなったり、数が釣れたりしますので、意識的にマキエの沖側に飛んだこぼれエサにツケエを合わせて同調させます。

そのような釣り方を効率良く実践するためには、ウキ止めを装着した半遊動仕掛けをベースに、ガン玉を打った仕掛けが有効となるのではないでしょうか。
また、有効なツケエも西九州エリアの磯と東磯では多少違ってきます。中でも代表例はオキアミのボイル。西九州エリアの磯ではボイルが効果的ですが、東九州エリアの磯では、あまり効果がありません。
もちろんエサ盗りの状況にもよりますが、東九州エリアの磯では、硬くて目立つツケエは食いが良くない傾向なのです。
自分のホームグラウンドで、さまざまな経験を積んで、一から学んできたグレ釣りは自らの礎となるもの。
ところが通い慣れた釣り場では上手く対応できるのに、他のエリアでは思うような釣果に恵まれないということは、実によくある話です。

私がいつも思うことは、万能の仕掛けはないということ。仕掛けがあってグレをイメージするのではなく、グレのイメージがあって有効な仕掛けに繋がります。
そこにいるグレの動きに合わせて対応できる柔軟な思考に加えて、正解に辿り着くまでには経験値が必要だと感じます。そのため結局、釣りに行くことになるのです。