グレ釣りの魅力はダイナミックで豪快なやり取りと、繊細で緻密な仕掛けでターゲットに挑む知恵比べにある。磯釣り師は非日常の世界で我を忘れて潮風に身をゆだね夢の大物を追う。
磯釣りは安全第一

初めて磯釣りにチャレンジするのであれば装備を揃え安全第一を心がけよう。
渡船に乗り込むときからライフジャケットは必ず着用しなければならない。忘れてならないのは、万が一落水したときライフジャケットが脱げないよう股紐を必ず通しておくこと。
磯に立つなら磯靴は必須だ。靴底はフェルトスパイクがオールラウンドで滑りにくい。
その他、夏場は脱水からくる熱中症予防のため、クーラーには氷を入れ十分な水分や食糧を持参する。不測の事態に備えてロープも用意しておきたい。
逆に冬場は防寒対策を万全に行いたいが、動きが取れないほど着るのは危険なので、発熱素材などを着用して、できるだけ動きやすくしておきたい。
突然潮が足元まで上がってくることもあるので、仕掛けやマキエを作っているときでも海に背を向けないようにし、すぐに使わない荷物はできるだけ高い位置にまとめて置き足元を広く取る。
そして船長の判断はよく聞くこと。上がりたい瀬に乗れなかったり、晴天であってもウネリや風の強さが酷くなる前に回収されることもあるが、ここはプロの判断に素直に従うのが磯釣りの基本である。
タックル

グレ釣りで使う竿は口太狙いなら1.2号もしくは1.5号。尾長が釣れる釣り場では1.5号以上、離島なら2号以上が必要となる。
竿の調子は仕掛けを振り込みやすいのは張りのある先調子、魚とのやり取りを楽しむなら竿が大きく曲がる胴調子だが、二つの利点を両立させたものも発売されている。
リールは2500~3000番でレバーブレーキ付きが便利だ。道糸は口太狙いなら1.7~2号を150m、ハリスは1.5~2.5号。50㎝台の尾長が狙えるなら道糸は4~6号。
ハリスは3~6号を準備しておく。ハリは口太なら4~6号、尾長なら7~9号があれば状況に応じて対応できる。
グレは潮を釣れ

グレ釣りは潮が動かないと始まらない。潮下へ向かってプランクトンなどのエサが流れてくると魚の視線は潮上へ向かい捕食態勢に入る。
潮の流れに向かう習性を走流性という。当然潮が動き出せば魚の活性が上がる。
マキエワークの基本

6月の梅雨グレシーズンは活性も良いため釣りやすい。しかし、スズメダイやアジなどがわんさか群れていてグレにエサが届く前にエサ盗りの餌食になってしまう。
だがこれらのエサ盗りをグレから遠ざける方法がある。それが次に述べるマキエワークだ。
まずは本命のグレを食わせるポイントにいるエサ盗りに向けてマキエを打ち注意を引く、さらに足元にマキエを打ち足元へ集める。
ここから先ほど述べた走流性を利用して磯際沿いの潮上へとマキエを入れ潮上へと注意を逸らす。
このようにエサ盗りを本命から遠ざけるマキエワークを遠近分離法と呼び、本命に対して一発のマキエ、エサ盗りに対してその9倍の量を打つことが重要だ。
本命ポイントとエサ盗りをできるだけ確実に分離することが重要で、中途半端なところにマキエを打ちこぼさないよう注意する。この一連のマキエワークがグレ釣り成功のカギを握っている。
高水温期のマキエ

次にマキエについて見ていこう。集魚材とオキアミを混ぜる際の注意点だが、エサ盗りが多い場合はオキアミをザックリ刻んでまんべんなく攪拌する。
どのカップにもオキアミが含まれているので反応が良く、誘導する際にも効果を発揮する。マキエヒシャクのカップはSまたはSSサイズを選ぼう。
マキエは一回の量よりも回数を多く打つことが大事だからだ。水温が高いとグレは浮きやすくなるのでマキエはパン粉が配合された比重の小さいものを使う。
タナに合わせるカウント法

浮いてくるとはいえ初めのうちは正確なタナは分からない。そこでタナは2ヒロまでと想定しマキエを先打ちして仕掛けを投入する。
ハリスが潮になじんでウキストッパーがウキから離れるまでの時間をカウントする。ガン玉を打っていない仕掛けでも40秒もすれば2ヒロの水深にツケエが到達するはずだ。
仕掛けを回収してツケエが残っていれば、もう少し流す時間を長くする。逆にエサが取られていれば、ウキ下を浅くする。
このようにグレが食うタナを計るのに2ヒロ40秒という仮説を立て、状況を見極めながら現実のタナに合わせていく。
マキエよりも仕掛けの方が速く沈むので、先にマキエを打ち、数秒後に仕掛けを投入する。仕掛け投入のタイミングは5秒後、8秒後と試していくと食うタナでツケエとマキエが合うようになる。
刻一刻と変化する潮

タナが合ってきたらグレのアタリが出てくる。アワセが決まったら釣ったグレのどの部分にハリが刺さっているかを見てみよう。
唇にハリ掛かりするのが理想的で、飲まれていた場合は仕掛けがなじむ前に食っていた、つまり、実際のタナはもっと浅いことが伺える。
マキエが効いてくるにつれ浮きやすくなるのでウキ下を10㎝単位で短くしていく。
活性が高まるとウキが一気に消し込むようなアタリ方が増える。こういう場合は唇に刺さることが多くなる。
逆に潮が緩んだり冷たい潮が流れ込んできたりすると活性が下がりタナが深くなる。エサを吸い込んで横移動しているとウキがモゾモゾするだけで消し込まない。
警戒心の強いグレは違和感を覚えると即座にエサを吐き出してしまう。唇にハリ掛かりさせることは難しくなるのでハリのサイズを落とす、あるいは細軸の軽いハリを使い、あえて飲ませるとよい。
ただし、尾長狙いの場合はハリのサイズを落とすのはNGだ。感度の良いウキを使い、ウキは浮かせるか、固定してアタリが小さくても掛けアワセで唇にハリを刺すイメージで挑み続けよう。
狙うポイント

グレを釣るには潮を釣れと言うのは正解だが、具体的にその潮とは何か?
海を見ると潮が変化しているところは表面が周囲と違うヨレや波立つところがある。
それを潮目というが、その潮目の下には沈み瀬や地形の変化があり、湧昇流や潮と潮がぶつかるポイントになっていることが多い。
その潮目に引かれていく潮を見つけて、その流れに仕掛けを入れるのが正解への近道といえるだろう。
次に仕掛けを吸い込む潮があれば攻めてみる。
この二つの潮は仕掛けが乗りやすくツケエ先行の形を取りやすいからだ。

磯際に潮がぶつかり白波が生じる場所も見逃さないようにしよう。このサラシのおかげでグレの警戒心は薄れる。ただしサラシはマキエを沖へと払い出していくのでサラシの先端を狙う。
勢い良く流れる大きな潮の中を100m以上流すのが本流釣りだ。尾長釣りではこの本流を狙うこともある。本流を狙う場合も引かれ潮から仕掛けを入れていき、なじませて合流させるとよい。
本流に仕掛けが入れば張りを持たせながらラインを送り込んでいく。速い潮にはエサ盗りはいない。遊泳力のある大型魚がエサをくわえて疾走すると一気にラインが引き込まれる。
これが本流釣りの醍醐味だ。不動の人気を誇るグレ釣りはやはり、やってみると言葉にならないほど面白い。是非一度、磯に立ってこの感動を体験してほしい。