寒グレ狙いの際、急な寒波の到来で一気にグレの活性が低くなるときがある。こういうときは、寄せるためのマキエを撒いてもエサ盗りすら見えず当然グレの姿も見えない。
いくらマキエをしてもグレが出てこないのなら、こちらからグレの口元までツケエを送り込むしかない。ここではどんなところが厳寒期の狙い目になるかを紹介し、その攻め方を解説してみたい。
まずは厳寒期の釣り場選びを考えてみよう

冬の寒グレシーズンになると、毎年のことながら長崎県の男女群島が話題に上る。かつてのような爆釣シーンに遭遇することは減ったものの、最大・最高のグレ釣りパラダイスであることに変わりはない。
これほど男女群島でグレがよく釣れるのは、訪れる釣り人が少なく釣り荒れしていないのと、潮を含めた地形に恵まれているのに加えて、対馬暖流の影響で真冬でも水温がそれほど下がらないという事実がある。これが、厳寒期の釣り場選びの第一といってよい。つまり、釣りやすいところを選べばよい。
極端な例として男女群島を挙げたが、厳寒期ほど近郊の手軽な磯では釣るのが難しい。少々遠征して、水温があまり下がらず、グレが濃い釣り場まで走った方が賢明だ。
釣り場選びの第二として、風裏という条件がある。皆さんご存じのように、冬季は大陸性高気圧が張り出して北西の季節風が吹きすさぶ。波が高ければ当然渡船は出ない。波がなくても風が強ければ非常に釣りづらい。
食い渋ったグレになんとかして口を使ってもらおうとあの手この手でアプローチしたいところへ、強い風が吹きつければ台なしになりかねない。渡船が動いて出漁できれば、釣り場としてのランクは多少低くても、風をシャットアウトできる磯に上がりたい。
A級釣り場とは得てして潮通しがよいものだが、先に触れたように水温が下がったときは内海のゆっくりと潮が流れるところが狙い目になる。そんな磯で風が当たらなければ絶好のポイントといえる。第三が水深になる。水温が下がればとにかく深い釣り場を選びたいところだが、深すぎると釣りづらくなる。
本来、グレはあまり深いところにはいない。20m前後の水深でアタることはめったにない。食ったとすればマダイやブダイ、フエフキダイなどが中心だ。それに海の中にはさまざまな流れがある。深ければ深いほど複雑になり、何層もの流れがあっちへ行ったりこっちに流れたりする。とにかく釣りづらいのだ。

ベテランの話を総合すると、たとえ厳寒期であっても5〜10mというのが釣りやすい水深になる。海底が見えるか見えないかくらいという目安で表現した名手もいる。グレの口元にエサを送り込むように釣りたいところだが、現実の問題としてそれは不可能だ。実際にそんなことをすれば一発で根掛かりしてしまう。正しくは、グレのすみかの近くを流し、気まぐれでふらふらと出てきたときパクッと食ってくれることを願うというわけだ。
グレのすみかとは海底、沈み瀬、磯際というのが定番で、その近くを流す以上、ウキ下は深くなる。20〜30mもあると非常に釣りづらい。マキエとの同調も難しい。それが5〜10mならずっと釣りやすくなる。それでグレが食わないのなら問題にならないが、十分食ってくるし実績も高い。あえて釣りづらい深場を探るよりも、手頃な水深で勝負をかけた方が釣果は確実だ。
条件は厳しいが、ポイントを絞りやすい磯際

ポイントを絞りやすく、マキエと同調させやすいという理由で、食い渋ったときのポイントの筆頭に挙げられるのが磯際だ。ただし、条件が限られる。足元から深くないといけないし、ゆったりした潮が流れ、それは横に、または当て潮でなければならない。波があってもダメだし、風も望ましくない。よほど恵まれない限り、冬季にこれだけの条件が揃うのは難しい。そういう前提で進めることを断っておく。
さて、ポイントとしての条件は説明した。磯際の攻め方を紹介しよう。磯際には特徴がある。波が寄せてくると磯に跳ね返り、仕掛けを沖に押し出そうとする。波がなくてもハリスやツケエは沖に出ていこうとする。そのため、仕掛けやツケエを磯際にとどめるための作業が欠かせない。まずはそこから始めよう。
一般に、仕掛けを投入する際は沖にツケエ、手前にウキが落ちるように操作する。そうすれば着水の時点でハリスを張ることができるからだ。しかし、磯際を釣る場合、それではまずい。ツケエが磯際に落ち着いてくれないのだ。
それを避けるためには、真上から仕掛けをゆっくり垂らす。そうすれば、風がない限り全体は真下に沈んでいく。そして、仕掛けが馴染んだら道糸を張ってウキを磯際に引き付ける。横に流れる分には送ってもよい。だが、沖に出ようとする動きは厳として阻む。
マキエは先打ちでも後打ちでも構わないが、慣れないうちは先打ちして、その中をツケエが沈んでいくように操作する。あまり拡散せず、比較的早く沈むマキエが使いやすい。
この釣り方をするときはガン玉のサイズと位置が重要になる。サイズはウキの負荷を超えるものを選択するが、沈め釣りの定石として沈む速度はオキアミ、またはマキエのそれに合わせる。早すぎても遅すぎてもいけない。

海の中をイメージしてみよう。先にマキエが沈んでいき、そのあとからツケエが追いかけていく。マキエのオキアミは潮にもまれ、流れつつ沈んでいく。ツケエも同じ動きをするのを理想とする。
ところが、それを妨害するものがある。ガン玉だ。ツケエに自由に動いてもらおうとすれば、ガン玉の位置はツケエから遠ければ遠いほどよい。しかし、ツケエから遠いと今度はツケエが磯際から離れやすくなる。磯際に固定しようとすればガン玉はツケエに近い方がよいのだ。
最終的にガン玉の位置を決めるのは妥協点であり、数㎝刻みで移動させ、どこでグレがヒットするかを探らなければならない。最低でも3回は同じ位置で流し、それでアタリがなければ少しずらしてまた流す。その繰り返しで妥協点を探る。
沈み瀬の近くにツケエをとどめ、アタリを待つ

磯際と並んで沈み瀬も厳寒期の大きなポイントになる。グレの一大すみかであるから、それも当然だ。しかし、他の時期と違って、水温が下がったときはシビアに攻める必要がある。そのためには沈み瀬の位置を正確に知らなければならない。5〜10mの水深ならその位置が明確に分かるだろう。海底が見えないほどの深場ではそれは難しい。
では、シビアに攻めるとはどういうことだろう?
他の時期なら、沈み瀬の近くをなんとなく流せば食ってくる可能性はある。ツケエが沈み瀬の上を流れてもグレは浮上して食う。だが、寒いときはそうはいかない。先ほど、気まぐれでフラフラと出てきたときパクッと食ってくれることを願うと書いた。その気まぐれなグレにより高い確率で食わせるには、沈み瀬に近い位置でツケエを止めることでそれが可能になる。
自然に任せるとツケエは流れに乗って通り過ぎる。ツケエが沈み瀬の近くを滞在する時間は短い。だが、ツケエをとどめるとその時間は何倍にも増える。沈み瀬に向かう潮を探し、釣座を決める。いうまでもなく、潮はゆっくりと流れていることが前提だ。
利点は、マキエとの同調に気を遣う必要がないことにある。沈み瀬に向かう潮に乗せればマキエは沈み瀬の手前、および沈み瀬の向こう側に溜まる。マキエはある程度重たい方が望ましい。また、撒きすぎもよくない。ツケエはマキエが溜まったところに流し込み、そこで止める。流すのを止めるのだ。
ガン玉が小さいと仕掛けが浮き上がる可能性があるから、ツケエが沈み瀬の際にとどまるだけのサイズを選択する必要がある。といって、重たいと根掛かりしてしまう。この妥協点も状況に応じて変わってくる。

海溝の場合は海底を釣ると考えればよい。ツケエが海底スレスレを流れるようにウキ下を設定し、黒く見える部分をこするように流す。この釣り方の場合、ガン玉のサイズは、ある程度重たければそれほど神経質になる必要はない。
根掛かりしないように注意するだけだ。マキエは底に溜まるようにやはり重たいものを使うが、固まりではなく拡散させた方がよいだろう。アタリは総じて小さい。沈み瀬を釣るときも同様で、ウキが一瞬だけフワリと沈んだり、少し沈んでそのままだったりと、とにかく一気に入ることはない。
小さいアタリでも察知できるように集中力を切らさないことだ。