秋の河口でのチヌ釣り ウキフカセによる楽しみ方

初秋はまだまだ水温が高く、本命の動きはまだまだ夏気分。反面エサ盗みは元気いっぱいで、チヌフカセ釣りをなかなか楽しめない釣り人もいるだろう。

そんな時期におすすめなのが河口だ。

川の水が流れ込むため、比較的水温が低く、汽水域が苦手な小魚を回避することもできる。

メイタクラスの数釣りも楽しめて、ときにはセイゴやハゼ、ウナギなど美味しいゲストが飛び出してくる。秋は河口で決まりだ!

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河口はエサが豊富

河口近くの堤防

最初に、河口はいかにエサが多いかということをいっておこう。

主な理由は3つある。まず、流入する川の水に乗ってさまざまな小魚や小動物、プランクトンが下ってくる。

アユが多い川では、アユの稚魚を求めてスズキがかなり上流まで遡上することは広く知られている。

特に、雨が降ったあとは、ゴミと一緒に大量のエサが流れてくる。そのため、河口に住む魚達の活性は一斉に高くなる。古くから、ウナギは雨後によく釣れることが伝えられている。

チヌに関していえば、雨のあとは水が濁り、これが警戒心を抑えて非常に釣りやすくなる。

大雨後の増水&泥濁りはマイナス材料だが、それが治まってささ濁り程度になったときは絶好のチャンスと思ってよい。

干潟

河口にエサが多い理由の2番目は「潟」が多いことにある。

川の水はエサとともに上流から土砂も運んでくる。それらは流れが緩む河口で堆積する。大きな川の河口にできる三角州はその典型的なものといってよい。

この潟にはたくさんの小動物が住んでいる。その代表がムシ、カニ、エビ、貝で、これらはすべてチヌの大好物。

川の水が運ぶプランクトンが彼らのエサであることはいうまでもないだろう。河口から遠く離れた砂浜では、ここまで豊富な小動物を養うことはできない。

河口

そして、3番目が条件の多様性にある。この言葉は分かりにくいだろうから、少し説明してみる。

河口には、狭い範囲に淡水、汽水、海水という3種類の水がある。また、速い流れ、適度な流れ、止水もある。さらに、深場があって干潟があり、カケアガリもある。

そのようなさまざまな条件があり、それぞれを好むさまざまな生物が住んでいる。

外海に面した磯、または砂浜のような単一の条件と比べると、いかに多様かが分かるだろう。

ボラの群れ

とはいえ、河口で生息するにはそのための器官を備えていないと難しい。キスやアジ、グレも河口で釣れるとはいうものの、これらの魚が河口に接岸するのは満潮時に限られる。

真水と海水が入り混じった汽水は嫌う。潮が下げ始めると早々に外海へ退散する。

真水が混じっても平気な魚は、チヌやセイゴ、ボラ、ハゼ、コノシロなどの一部の魚種に限られる。いくらエサが多くても、大部分の海水魚にとって真水は大きな負担になるものらしい。

河口での釣りは流れの速さや潮位の影響を受ける

川はたくさんのエサを運んでくると前述した。とはいうものの、釣り場として見たとき、河口には川であるがゆえの特殊性がある。特に大きいのが、干満にともなう流れと潮位の変化による影響だ。

そのため、河口で釣る場合は干潮・満潮の時刻をしっかり把握し、それに応じて釣行する必要がある。
以下、河口の釣りと干満との関係を解説してみよう。

河口チヌフカセのコツ

川には川特有の流れがある。これは改めて説明する必要はないだろう。上流から下流に向かう川本来の流れだ。

しかし、河口では逆に流れることがある。上げ潮が動いている場合である。

この潮はいうまでもなく上流に向かう。すると、川本来の流れとぶつかるため、標準的に速度は緩くなる。この緩い流れは釣りやすい。

反面、下げ潮は潮位が下がる動きと川本来の流れが重なり、スピードは速い。これは釣りづらい。

どちらにしろ、川を上るか下るかの2つしかなく、流れの方向は非常に分かりやすい。

ただし、単純な流れではないことを知っておく必要がある。なぜなら、海水は重たく、淡水は軽いからだ。比重の異なる流れがぶつかると、軽い方は上に、重たい方は下に移動する。

分かりやすく説明すればこうなる。最干潮では河口には真水が流れ込んでいる。そして、潮が満ち込んでくるにつれて海水がじわじわと押し寄せてくる。

この時点で真水と海水がぶつかる。すると、塩分を含んで重たい海水は下に潜り込み、軽い真水は浮き上がる。その結果、底層は上流に、上層は下流に向かうという二枚潮が発生する。

潮位が高くなるにつれて、この真水と海水がぶつかる地点は上流に移動する。二枚潮になるところも変わっていく。

自分が現在釣っている地点は二枚潮かそうでないかをしっかり見極めなければならないということだ。

魚は上げ潮時に上流へ向かう

河口チヌフカセのコツ

チヌやセイゴ、ハゼは汽水域に住む魚ではあるけれど、本来は海水魚である。

汽水でも気にしないと考えた方がよい。したがって、潮が引いて河口に真水しかない状態では、大半の魚が海に下ってしまっている。

そして、上げ潮が動き始め、潮位が高くなるにつれてエサの多い河口に集まってくる。さらには上流に向かう。

エサを追い求めて上流に向かった魚達は、今度は潮が引くと共に海に下ってくる。大雨が降ってよほど増水しない限り、河口を好む魚族は毎日これを繰り返す。

つまり、河口はすみ家ではないということだ。単なるエサ場と考えてよい。

ここで疑問が生ずる。チヌはいつ移動するのか?移動するとき、チヌは一斉に行動するのか?

残念ながら、これに明確に答えることはできない。場所や状況によってバラバラだからだ。この時期に河口でエサを追うチヌは中・小型が中心で、彼らは往々にして群れで行動する。

したがって、一斉に移動するパターンが多いとはいえ、必ずしもそうとは限らない。

移動するタイミングにしても同様で、上げ三分から七分に上り始めることが多いものの、早ばやと遡上する個体もいる。逆に、遅れて移動する魚もいる。

とにかく、チヌという魚は意外性が強い。厄介な存在なのである。

潮位が高いと群れは分散する

河口チヌフカセのコツ

例外はあるにしろ、河口は総じて水深が浅い。前述したように、川の水が上流から土砂を運び、それが堆積するためだ。

といって、潮が引いても川の流れが途絶えることはない。細いながらも真水が下る流れは残り、これを流心(流芯)と呼ぶ。潟に比べてこの部分は深く、潮位がある程度下がると魚はここに集まってくる。

魚が集まるとポイントが絞られ、釣りやすくなる。図の上は満潮前後の状態を表しているが、実際にチヌがこれだけたくさんいるわけではない。そこにいる可能性があることを示しているだけだ。

その点、図の下(潮位が下がった状態)の流心には、比較的高い確率でチヌが潜んでいる。

これだけを見れば、満潮前後よりも潮位が低い方が釣りやすいと思うかもしれないが、実際はそれほど甘くはない。足場の問題がある。

下の図には竿出し地点を示す矢印が2か所しか記されていない。他では非常に難しいのだ。

干潟

ポイントである流心が遠く、遠投して食わせたとしても足下の干潟が露出すれば、その上を引きずってこなければならない。

これでは取り込めない。足下に水があってこそ可能なフカセ釣り(細仕掛けによる)なのである。

以上、流れと潮位は河口の釣りに大きな影響を与えていることを説明してきた。これを踏まえて、潮に関して釣行の際に注意してほしい点を挙げてみる。

●原則として上げ潮を釣る。下げ潮は速く、釣りづらい。とはいえ、流れ始めはそれほどでもないから、下げ潮が本格的に流れだすまでと考えてよい。
●河口は平均して水深がない。そのため、ある程度潮位が高くなってから竿を出すことになる。同じ理由で、浅くなれば釣りにならないから竿を納めざるを得ない。「ある程度」というのは釣り場や釣り座によって異なる。流心に近くてより長く釣りができる釣り座は人気が高く、釣り人が集中する場合が多い。
●朝夕のまづめに食いが立つのは河口も同様だが、できれば大潮周りは避けた方がよい。流れが速いし、往々にして満潮前後は足場が波を被る。さらに、潮位が早く下がるため釣りタイムが短くなる

河口ではマキエをしなくてもチヌがやって来る?

マキエして魚を寄せ、そこに足止めさせてツケエを食わせる。通常、チヌ釣りはそういう考え方をする。

しかし、河口ではその考え方を少し変えなければならない。何しろ、釣りができる時間がそれほどないのだ。

ある程度潮位が高くなって、それから下げ潮が本格的に流れ始めるまでの時間というものは、一般的には4時間前後と思ってよい。5時間も取れれば長い方だろう。

根気よくマキエで寄せるほどの余裕はない。

その代わり、チヌの方から近づいてきてくれる。寄せて食わせるのではなくて、やって来るのを待って食わせるのだ。待ち伏せすると言い換えてもよい。

そういう意味からすれば、マキエは必要ないかもしれない。自然のエサを求めて魚の方から近づいてくるのだから。

河口
伊万里川河口の伊万里津大橋下流付近。

実際にマキエを使わない釣り場がある。一つの例として伊万里川を紹介しよう。ここは川幅がそれほど広くなく、潮が引けば干潟が露出する。したがって、流心も狭い。

そんなところでも魚影は濃く、潮が満ち始めるとチヌは早々に川を上り始める。

この伊万里川の例でいうと最干潮から上げ三分の間、ムシエサを付けて流すだけで十分食ってくる。タイミングが良ければ下げ潮の間はずっとアタリが続くことも。

遠賀川河口
福岡県の一級河川・遠賀川河口、西祇園橋付近。西川との合流点の下流にあたる。

ただし、どの河川でもこの例に当てはまる訳では無い。伊万里川より規模の大きい遠賀川の例をいえば、待っていてもチヌは来るが、自分の釣りやすいエリアで足止めするためにもマキエは必要だ。

前述したとおり潮位が高くなると魚は広く拡散する。

回遊ルートはある程度決まっているだろうが、チヌはエサを求めて浅場から深場まで広く散る。それをまとめて攻めやすくするのがマキエの役目ということになる。

流れの中で沈めるのだから、当然、マキエの比重は大きくする。

マキエの量はそれほど多くは必要ない。釣る時間が短いのと、エサ盗りが少ないからだ。

各釣り場によって違いはあるだろうが、河口でジャマになるエサ盗りはフグ、小アジがメインと思ってよい。アジが上がってくるのは満潮前後だけだし、フグを交わすのはそれほど難しくはない。

速い流れと二枚潮攻略

河口でチヌ釣りをするときに知っておきたいさまざまな条件を挙げてきた。それを踏まえて、ここでは実際にどんな釣り方をすればいいかを紹介しておこう。

とはいっても、先ほども例に挙げた伊万里川の例だと、上げ始めを釣るので問題はほとんどない。ムシエサを付けてウキ下30cmで流すだけなのだ。

流心が狭いから仕掛けを流す範囲も限定されている。マキエも使わない。したがって、ここからはある程度の水深があり、流れもそこそこに速いケースでの攻略法を解説してみよう。

半遊動では仕掛けを重たくする

河口チヌフカセのコツ

水深があって流れが速いという2つの条件を見る限り、磯や堤防の急潮を釣る場合と同じではないかという声が上がるかもしれない。だが、大まかなところでは似ているものの、小さな相違点がある。

チヌを釣るとき、磯・堤防では主にワイやヨレ、潮溜まり(速い潮が緩むところ)を攻める。チヌは流れが緩いところを好むという原則に従ってのことだ。

しかし、河口ではそのような潮の変化は少ない。大半の場合、速い流れを釣らなければならない。正攻法というべきか、とにかく正面から向き合わなければならない。

したがって、原則として仕掛けは重くする。

目安としては、流れが速いときは5B程度。ウキからオモリ(または水中ウキ)までをほぼタテ糸にしてタナを確保し、ハリスはフカせる。

そして、ツケエが浮き上がらないようにウキ下を水深より深く取り、ハリスを底に這わせる。得てして河口は障害物が少なく、底を這わせても根掛かりすることは少ない。

河口

流れが速ければ、強制的にツケエを底に落ち着かせるためにガン玉を使ってもいいだろう。チヌが浮いていると感じれば、ガン玉を外したり上にずらしたりしてもよい。

マキエは原則として底に効かせる。前述したように、釣りやすいところに溜めてチヌを寄せ、そこで食わせるためだ。先に仕掛けを投入し、その上からマキエを被せるというやり方はしない。

その意味では、釣り始める前にマキエを野球のボール大にして、溜めたいところへ5、6個放り込んでおくという手も使える。

また、仕掛けの打ち返しとマキエの投入はリズムを伴ったものであり、それを崩すとマキエ打ちがおろそかになりがちだ。

対策としては仕掛け投入、次いでマキエ投入というパターン(逆でも構わない)がいいのだろうが、このとき仕掛けの投入点をしっかり考えておく必要がある。

マキエが溜まっているエリアを流れるとき、仕掛けはすでに馴染んでおり、ツケエは底を這っていなければならないのである。

もちろん、チヌがたまたま浮いていれば、ツケエは中層を流れていても食ってくる可能性はある。しかし、マキエを底に効かせている以上、しっかりと底を攻めた方が釣果につながる可能性は高い。

そのためには、仕掛けが馴染む時間を計算して、潮上何mに投入すればいいかを考えなくてはならない。流れが速ければかなり潮上に投入する場合もあるだろう。

全層沈めで二枚潮対策

河口チヌフカセのコツ

二枚潮の対策として、初・中級者の皆さんはぜひ「全層沈め」を試してほしい全層沈めとは水平ウキを沈める釣り方を指す。

ある釣り師の例を挙げよう。

河口で自分より右側に釣り人がいたとする。その釣り人の仕掛けは上層を流れる川の水に乗っかって左に流れている。だが、釣れていない様子だ。

そこで下層の流れに乗せられるように全層沈め仕掛けを使うと、読み通り仕掛けは真逆に流れ、チヌがヒットした。

ただその例なら半遊動仕掛けで水中ウキを使った場合も二枚潮対策ができるのではないかと考える人もいるだろう。

もちろんそれでも可能だが、アタリウキよりも大きな水中ウキを使わなければ効果は見込めない。アタリウキの方が大きければ結局は上潮に乗ってしまうのだ。

河口チヌフカセのコツ

全層沈めのメリットは他にもある。

二枚潮になりやすいのは上げ始めで、上げ潮が本格化するとそれは解消され、上層、下層とも上流に向かうようになる。

このとき、釣りやすくなったと安心してはいけない。実は、また新たな問題が生じているのだ。

流れというものは、大半の場合、上層が速く、下層はそれに比べて遅い。河口も例外ではない。

すると、速い上潮にラインが乗って先行し、ウキから下は遅れてやって来る。つまり、ラインがウキを引っ張る形になる。

すると、半遊動ではタナを確保することが難しくなる。通常の全層釣法でも同様だ。

しかし、全層沈めなら、足場が高いと難しいが、ラインをすべて沈めてしまうことができる。つまり、速い上潮の影響を最小限に抑えることが可能なのである。

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