釣りを始めたばかりのころは、どんな小さな魚でも釣れるだけで嬉しいもの。しかし自分の腕が上がり、釣れるサイズが大きくなってくると、小さな獲物では満足いかなくなります。例外もありますがグレ狙いに限らず多くの釣りに当てはまることです。
グレ釣りでは長寸40㎝、重量1キロ(㎏)が一つの壁として考えられています。この壁は、ただ釣行を繰り返すだけでは越えることは難しい難所です。

情報を集めてその時期に応じた釣り場を選び、仕掛けやエサを選定して組み立て、魚にエサを届ける工夫、バラさずに釣り上げる技を手に入れなければなりません。すべてのピースが噛み合わなければパズルの完成=キロ級を釣り上げるのは難しいですが、逆にいえばピースがすべて揃って噛み合えば釣れる確率はグンと上がります。
一つひとつのピースを見つめ直し、パズルの完成を目指しましょう。
口太と尾長キロ級の生態
波止や近場の磯で釣れるグレのほとんどが口太グレ(メジナ)です。一方で主に沖磯の潮通しの良い場所に生息しているのが尾長グレ(グレメジナ)。口太より尾長の方が大きくなるため、手っ取り早くキロ級を狙うなら尾長狙いが近道といえます。しかしながら大型の尾長は手軽に行ける磯で簡単に狙える魚ではありません。それなりの場所でそれなりの準備が必要です。
キロ級を獲るための結論として「離島へ行け」と書くとこの記事が終わってしまうので、ここでは口太のキロ級を近場の磯や波止から狙う方法を中心に解説します。
大型は外海に多い

大型のグレは外洋に面した荒磯を好み、内湾の穏やかな海域には少ないです。本当にキロ級・キロオーバーを狙うなら、港内よりも港外、波止よりも磯、内海より外海など、大型がアタる確率がより高い釣り場へ行くべきです。いきなり身も蓋もない話ですが、実際そういう生態だから仕方がありません。
警戒心がハンパない

グレが1キロを超えるまで成長するのに8〜10年かかるといわれています。それだけ長く生きているということは、他の魚から襲われたり、釣り人から釣り上げられていないということです。大型になればなるほど数々の学習をしていると思ってよいでしょう。もちろんたまたま生き延びている個体もいるかもしれませんが、それにしても本能が危険を回避していることは容易に想像できます。
そして彼らは、経験を踏まえて学習し、エサが目の前に落ちてきたとしても、簡単には食いつかなくなっています。要するに警戒しているのです。
それはツケエだけではなくマキエにも当てはまるから、マキエを投入してもバチャバチャと水面で乱舞するようなことはありません。つまり大型になると簡単には浅ダナに浮きにくくなるということです。

よく知られているように、グレは非常に臆病で、小さな違和感にも気づいてすぐに自分のすみかに逃げ帰ります。グレのすみかとはすなわち海底の岩陰や溝です。
経験が少なく警戒心の薄い小型のグレほど、食欲に負けて浅ダナへと誘い出されていきます。それを尻目に警戒のアンテナを張り巡らしながら自分のすみかの近くでおこぼれのマキエを食べているのが大型のグレです。結論として、キロ級が浅ダナでアタることは少ないです。よほど活性が高いときでもない限り、竿1本以上の深場で食うと考えて良いでしょう。
大型は高活性時に集中
前述したように大型になればなるほど警戒心が増し、簡単にはエサを食わず、浅ダナにはなかなか浮きにくいです。しかし、「簡単には」「浮きにくい」と書いているように、絶対に食わないわけでもないし浮いてこないわけでもありません。食欲に負けてついついエサを食べてしまう。それを同じグループのグレが一斉に始めると釣り人には「時合が来た!」と見えるわけです。
時合=警戒心を解いている(食欲が勝っている)時間帯であるため、大型が食ってくる可能性も高いということです。
では、どんな条件で時合が訪れるのか、それは、天候や時間、潮の動き、ベイトの動きなどが複合的に影響しているため、予想は難しいです。ただし、確率的に大きいのが、いわゆる朝まづめ、夕まづめのゴールデンタイムです。

他には潮変わりによって時合が訪れる可能性も高いです。それまで止まっていた潮が流れ始めた、激流がゆるい潮に変わった、流れる方向が変わったなど、いくつかのケースがあります。
潮の動きが変わるのは満潮時や干潮時の前後に多いが、実際はそれだけではありません。潮の流れというものは単純ではなく、常に変化しています。方向はもちろん、速くなったり遅くなったり、止まったり動いたりしているものです。
だからどうすればよいかというと、そういった時合が訪れそうな時間帯に仕掛けを海中に入れておくことです。
時合は長く続くかもしれないし一瞬かもしれない。ワンチャンスに掛けるしかないときに仕掛けを作っていたり、ラーメンの準備をしていてはキロ級は望めないでしょう。
マキエへの反応速度が違う

釣り開始時、マキエを撒き始めてすぐに集まってくるのは小型のグレを含め、小さくて泳ぎが速い魚たちです。彼らは警戒心が弱く、また数が多いからグズグズしていると食べ損なう可能性が高いです。そこで、エサを発見すると即座に反応します。
対して、前述したようにキロ級ともなると警戒心が強く、エサの存在を知ってもすぐには飛びつきません。海底付近でおこぼれを口にしながら、小魚が食べる様子を観察して安全だと判断したところで、おもむろに近づいてきます。そのため、マキエを打ち始めてそれがキロ級に効果を発揮するようになるまでには30分程度のタイムラグが生じます。つまり、マキエを開始して30分ほど経過したころに大型がアタる可能性が高くなるということです。
マキエに対する反応は大型ほど遅いというのは、実はもう一つ意味があります。ツケエと合わせるために撒いたマキエに対して、すぐ集まるのは小型が多く。大型は少し遅れてやってきます。
マキエを先打ちしてそれに仕掛けを合わせようとした場合、大型に狙いを絞るなら仕掛け投入のタイミングを遅らせないといけないことになります。早くマキエとツケエを合わせると、すぐに反応する小型の餌食となってしまうのです。このとき、大型がマキエに向かってくるコース上に仕掛けを沈めることが理想です。
ツケエの好みが異なる(かもしれない)

状況に対応するため、ツケエを複数用意する人が増えてきましたが、グレ釣りでは加工オキアミやマキエ用のオキアミ生のどちらか1本で通すという人もいます。
グレの食性がチヌほど多様ではないというのがその理由の一つですが、最近は加工オキアミも加工方法のバリエーションが増えており、ムキミやサシアミなども加えればグレが好むツケエを複数種準備することは可能です。
小型はあまり食べないですが、大型は好んで食べるというツケエが実際にあるのかというと、現状では明確な答えはありません。ただ、条件次第では、これを使うと大型が連続して食ってきたという報告があります。

しかし残念ながらそのエサは固定しておらず、状況によって変わっています。さらに、それが本当の意味のツケエの違いによるものなのか、それとも沈下速度、あるいは流れ方が変わったから大型の好みに合ったのかどうかも分かりません。
ただ、釣り人として、少しでも可能性があるのならぜひ試してみるべきでしょう。当たり前のことですが、魚の気持ちは人間にはまったく分かりません。いろいろ試してみて、食ったらそれが正解というのが釣りの世界です。
そもそも、グレはオキアミしか食べないというわけではありません。ゴカイやフナムシ、それにパン粉や海苔なども食います。ツケエを数種類準備するのは、大型狙いのみならずグレのご機嫌を判断する上で大いに役に立つはずです。
確実に穫れる仕掛けで望む
自分が強気になれる仕掛けとタックルで臨む。これが最低条件です。そうでなければ、たとえ大型がヒットしたとしても取り込むことは叶わないです。つまり、ハリに掛かれば必ず獲れる自信のある仕掛けを使うということです。
中でも特に気を配りたいのがラインの太さです。
念願のキロオーバーらしき手応えの魚を深場で掛けたとします。細いラインで挑んでいた場合、バラしたくないからラインを出すことになります。そうすると、もしそこに根があればラインを出せば出すほどブレイクの確率が上がることは想像に難くありません。
通常1.7号を使っているならそれを2号に、2号を使っているなら2.5号になどとキロ級に対応するためにサイズをワンランク上げます。当然ロッドやリールもそれに対応するものが必要です。
キロオーバー初心者には半遊動仕掛けがおすすめ

全遊動や全層、沈め釣りはグレが潜むタナを探れるし他にもさまざまなメリットがあります。しかしタナの正確な把握とマキエとの同調が難しいです。これからキロ級を目指そうというビギナーにとってはなおさらです。
タナを把握してマキエとツケエの同調をしっかり図るためにはウキ下を固定できる半遊動仕掛けが一番です。
遠投&深場狙い
前述したように警戒心の強い大型はより深い海底付近でこちらの様子を伺っています。足元からドン深の釣り場もありますが、通常はカケアガリ状になり、沖に行くほど深くなるパターンが多いです。そのため、遠投して深場に潜むキロ級を狙うことになります。そのためには当然遠投できるマキエ作り、それを投げられるヒシャク、遠投できる自重を持ったウキなども必要です。
マキエワークで小型やエサ盗りを回避する

遠投するしないに関わらずマキエとツケエをどこで同調させてどこで本命に食わせるかというのは頭の中でイメージしておかなくてはなりません。それを実際に行動に移して微調整を繰り返していくのがセオリーです。
いくら深場でも、そこにマキエを打って寄ってくるのは小型や中型が中心であり、何の手立てもしなければ普通に小型と中型がハリ掛かりします。
そこでエサ盗りや小〜中型グレを避けて本命のキロ級を獲る方法を考えなくてはなりません。
上層で同調するとエサ盗りや小グレが先に食ってしまうので、重めの仕掛けで素早く狙いのタナに沈めて、そこでマキエと同調させるようにします。
本命用とエサ盗り用でマキエを打ち分け、分断を図るのがセオリーですが、打っているうちにどうしても本命用にも集まってきます。それを防ぐためには、本命用とエサ盗り用のマキエの間に第2のエサ盗り用マキエを打ち、シールドとしての役割を務めてもらいます。
順番としては、まずエサ盗り用、次に仕掛けを沖に投入、ウキを囲むように本命用マキエを投入します。本命用にエサ盗りや小型が集まるようであればその手前に第2のエサ盗り用を打ちます。
走っても道糸を送らない
どんな魚でもいいから、まともに引っ張り合ってハリスが切れたり竿が折れたりした経験のある釣り人はいますか? ハリスに傷が入っていた、魚に根に潜り込まれたなどというのは論外で、竿、道糸、ハリスが万全の態勢で臨み、強度を十分発揮したうえでの話です。
大物と遭遇する機会が格段に少なくなっている現在、そういう体験はなかなか味わえなくなっているという現実を割り引いたとしても、竿が折れた、ハリスが飛んだという経験のある釣り人は非常に少ないでしょう。例えば1号の竿に1.5号のハリスを使い、それに50㎝オーバーのグレがヒットして本気で引っ張り合ったとしたら、竿が根元から曲がって弾性を失い、グレの力がハリスの強度を上回って切れる可能性があります。しかし、そのとき、1.5〜1.75号の竿だったらハリスは切れなかったかもしれません。

性能が素晴らしく進歩した現在の竿、道糸、ハリスは、釣り人が想像する以上の強さを保持しています。それでいてグレの大型をバラすのは、その原因の大半を釣り人自らが作っているといってもよいでしょう。体験したことのない引きに遭遇すると腰が引けて前かがみになり、竿も前倒し状態になります。これでは竿の弾力を生かすことはできません。その挙げ句、タックルバランスのメリットを発揮することなくハリスを切られてしまいます。たとえどんな大物でも上体を反らし、竿尻が魚に向くまで竿を立てる。これがキロ級の取り込みの第一歩になります。
ポンピングは避ける

ポンピングとは、竿を起こしながら魚を寄せ、倒しながら道糸を巻き取ってまた竿を起こす動きのこと。これを繰り返すことで魚を足元まで引き寄せることができます。まったく意識せずにすべてこの方法で巻き取っている人も多いだでしょう。
しかし、これが通用するのは小〜中型クラスまで。キロ級ぐらいまではギリギリ大丈夫ですが、それ以上が来たときにバラしてしまう恐れがあるから今のうちにクセを付けておきましょう。
ハリに掛かったグレは、異常を感じると岩の隙間や穴の中に逃げ込もうとします。その力は大型になればなるほど強く、少しでもラインのテンションがゆるめばとにかく手近な岩に貼りつこうと動き出します。そんなときにポンピングで寄せていると、起こした竿を倒すとき、いくら早くリールを巻いたとしても魚が岩に貼りつく隙ができます。そして、一旦貼りつくとヒレやウロコをいっぱいに広げてビクともしません。
食わせたら竿を立てたままでリールを巻きます。それがキロ級ないし大型を取り込む基本になります。
記念すべき1尾は確実に

取り込みを成功させるにはそれなりに準備が必要です。水面近くまで浮かせて暴れないようにタモに誘います。これは全く同じですが、小型とキロオーバーでは抵抗する力が異なります。初めての場合はその力にとまどって最後の最後でバラしてしまうこともあります。
記念の1尾を台無しにしないためにも取り込む位置を事前に決めて心の準備をしておきましょう。