水温が上がれば浅場でエサを拾い、下がればまた深みに退避する。チヌはそんな行動を繰り返している。水温が安定しないそんな時期は地磯を狙ってみたい。堤防は往々にして海底がフラットで、変化に乏しい。その点、磯は変化に富んでいる。深みがあれば浅場もある。沈み瀬や大きな石もふんだんにある。ポイントが絞りやすいメリットが多いのだ。
地磯は堤防よりも釣りやすい

チヌのフカセ釣りを考えたとき、釣り場は大きく二つに分けられる。堤防と磯である。釣り人が多いのは圧倒的に堤防の方で、その理由としては足場がよく、アクセスがたやすいことが挙げられる。
その点、磯は、堤防に比べて足場はよくない。アクセスも面倒なところが多い。渡船に頼らなければいけないところも多く、自由度が低く経費もかかる。
ただし、歩いていける地磯に限れば、ある程度自由に行き帰りできるし、経費もかからない。
というわけで、地磯にスポットライトを当ててみた。堤防にはない、チヌ釣りファンにとって嬉しいメリットがあるからだ。

そのメリットとは、まずポイントがふんだんにあること。
堤防の場合はフラットな海底が広がり、変化といえば捨て石の切れ目程度しかない。沈み瀬などの類いはほとんどない。その点、地磯は豊富にあるし、潮は複雑な動きを見せるからマキエは溜まりやすい。
メリットの二番目は釣り人が少ないことにある。人気の高い堤防はサビキ釣り、投げ釣り、ルアー釣りを楽しむ人が多く、自分好みの釣り座をなかなか確保できない。だが、地磯なら、人気釣り場でない限り他の釣り人を見かけることは少なく、遅い時間に出かけても好きなところに釣り座を取ることができる。静かに、のんびりと一日を過ごすことも可能だ。

平均して地磯は釣り人が少ない。だから、釣り場に早く着く必要はなく、潮や自分の都合に合わせて遅い時間帯に出発しても、好みの釣座を確保しやすい。また、他の釣り人の仕掛けを気にすることもない。目の前に他人の仕掛けが流れてくると自分の仕掛けを巻き取ることができず、困るケースが往々にしてあるものだ。
沈み瀬が多く、ポイントが絞りやすいから釣りやすいというのが第一の地磯のメリットになる。
堤防の周囲はフラットな地形が多い。そのため、チヌを寄せようとすればマキエを溜めてポイントを作るという考え方をする必要がある。したがって、マキエはたくさん準備しなければならないし、寄せるのに時間がかかる。
なお、地磯といえども磯は磯。ルールやマナーが存在するのでそれらを守って釣行しよう。
地磯釣行心得 その一
磯靴&ライフジャケットは必ず着用する

手軽な地磯とはいえ、磯釣りであることに変わりはない。自分の身を守るためには磯靴とライフジャケットは必ず着用する。特に、足場が低いところでは磯ブーツが重宝する。また、岩に海藻が生えていることが多く、滑りを防止する意味でもスパイク底は欠かせない。
地磯釣行心得 その二
歩くことを考えて荷物はコンパクトにまとめる

長い距離を歩いたり、急傾斜を登り下りする地磯釣行では、荷物をできるだけコンパクトにするのは常識だ。「もしかすると必要になるかも」というグッズはどんどん切り捨てて、極力身軽になることを心がける。マキエが途中でなくなればさっさと引き上げよう。
地磯釣行心得 その三
波が高いときは、決して無理をせずに引き返す

沖磯なら危ないと判断すれば船長が渡船を出さない。だが、地磯では自分が判断しないといけない。波が高く危険だと判断すれば、無理をせずに引き返し、安全な釣り場に転戦しよう。潮が引いて波が治まる可能性があるときは、安全になるのを待つという選択肢もある。
地磯釣行心得 その四
潮汐表を確認して、干潮・満潮時刻を知っておく

足場が低い釣り場では満潮前後に釣りをすることはできない。ルートの途中が水没する場合も潮が引くのを待つ必要がある。干潮・満潮時刻をきっちりと把握して、必ず潮位が低い時間帯に竿出し、または往来する。できれば、潮位の高さも知っておきたい。
地磯釣行心得 その五
天気予報は必ずチェックし、風向きを予測する

気圧配置を頭に入れておくと、現在はこの方向から風が吹いているが、数時間後は風向きが変わる可能性があることなどが分かる。今は凪でも、これからシケ始めることが分かっていれば早い時点で釣行を中止できる。釣り場を変えることで安全な釣りができる場合もある。